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選挙の後

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 イタリア総選挙が終わり、結果は右派の勝利。
 それに関して思っていることを書くと大変なことになるので、今朝の食料品店でのひとコマを。


 店に入ると女性客二人と店のシニョーラが選挙結果について話していた。
ベルルスコーニ(右派)は嫌だわ。
選挙に勝ったから、お祝いで1ヵ月、税金無し(senza tasse)にするんですって!
フン、まったく。何を言っているのかしら。

 かなりコテコテなラグーザ弁だったけれど、この「税金無し」に私のコメカミがぴりりっと反応した。

 「税金を納めなくていいんですか?!イタリア人はそうでも、私は収入の30パーセントも税金を払わなければならないんですよ。なのに選挙権がないんですから!」
 と言ってみた。
 女性客は外国人の私がそんなこと言うとは思わなかったようで、ちょっとびっくりした顔。そして黙っていた。パンなどを買って店を出る。
 しかし、お店のシニョーラは・・・

 「誰だって税金をちゃんと納めないといけないのよ。外国人だってね。他の国に行ったら、その国のルールを守らなければだめ。アメリカにはいろんな国の人が住んでいるけれど、そこに住み続けるために法律を守っているでしょう。
 それに比べて(この国では)、エクストラ・コムニターリ(EU圏外の人)はイタリア人の仕事を奪い、税金は納めない、仕事は違法。まったくどうなっているのかしら!」
 
 途中まで、そうですね、と肯きながら聞いていたが、最後は異議あり。
 (このEU圏外の人、という言い方が私は嫌い。なぜ外国人stranieriと言えないのだろう。)

 「私も外国人ですが、イタリア人の夫がいるのに滞在許可証がなかなか下りない。やっとできたと思ったら10ヶ月後にはもう無効。そしてまたやり直し。こんなことを既に4年もやっているんです。
 本当は5年間有効の許可証がもらえるはずなのに、彼らの記入ミスがあり、税務書類も何もかも訂正をしなければならなくて、それをするのにまた1年、訂正できてからやっと住民登録、そしてようやく5年有効の許可証申請ができる・・・。」
 
 呆れた!のポーズで、
 「役所の仕事はいい加減だからね。それはしょうがないわ。いつまでもこのゲーム(gioco)をしないといけないのね。ああ、残念だけど我慢よ、我慢(purtroppo, pazienza, pazienza)!」
 このなげやりな嘆きは、ラグーザ人の会話に必ず出てくる。

 「私は夫がイタリア人だし、住む家もあるし、仕事も少しだけれどあるからいいんです。これが内戦から逃れてきた人々に起きたらどうなると思いますか?法的に書類を申請しても受理されるのに1年近くかかったら、その間、生きるために仕事も必要、家も必要、子供だっている・・・。だから不法労働に就く人が後を絶たないのだと思うんです。
 役所がもっと早く仕事をすればいいんですよ!誠実にこの国で生きて行こうとする人だってたくさんいるんですから。」
 
 本当はここで移民局でのことを言いたかったけれど、長くなるので。シニョーラは、

 「そうねぇ。役所の仕事ぶりは悪いからねぇ。」
 と気の毒そうに私を見ていた。そしてついでだから聞いてみた。

 「それにしてもシチリアではどうして右派が勝つんですか?南イタリアの貧しい地域ほど左派に投票すべきだと思うのですが。」
 すると・・・

 「左派は何もできなかったからよ。イタリアは何も良くなっていないでしょ。むしろ悪い方向に向かっているじゃない。だからみんな諦めて右派に投票するのよ。」

 そう言っているシニョーラは左派だが、なんか違う気がしたのでまた言ってみた。

 「でもシニョーラ、政治状況はすぐには変わりませんよ。我慢して待たないと。物事を変えていくのに、少なくとも5年くらいは必要じゃないですか?」
 すると、
 「ああそう。時間が要る・・・。そうねぇ・・・。」
 
 ここで新しい客が入ってきたので、プチ政治談義は終わり。
 帰りながらつくづく思った。こんな平凡な日常のひとコマに、今のシチリアの問題が凝縮されていたな、と。
 ああ、我慢、我慢。


追伸:イタリアの政治は大きく右派、左派に分かれます。なので国民の政治意識も両派に分かれます。私の見る限り右派は、富裕層の越権、特権階級の保護、移民排斥、税金納入義務への無関心、マフィアとの関連、ファシズム的思想、政治家の問題発言あり、と驚くことばかりです。まともな政治が戻るのはいつのことか・・・。
 今回の選挙について詳しくまとめているfumieveさんの記事もご参考にどうぞ。


我慢・・・!。
by hyblaheraia | 2008-04-16 10:04 | 政治・社会


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


by hyblaheraia

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2013年11月、共著出版



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1999年3月、共著出版


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