ジェラティーナ -農民の知恵の味-
夕方の買い物帰り、爽やかな酸味と少し甘いような肉汁の匂いを風が運んできた。少し先の肉屋から光が漏れている。
覗いてみると立ち込める蒸気の向こうで、青いエプロン、長靴、ゴム手袋姿のシニョーラが様々な形の肉片と戦っていた。聞くとジェラティーナgelatinaを作っていると言う。大理石の肉さばき台は、茹で上がったばかりの肉塊で一杯になっている。後ろには四角いアルミのオーブン皿が山積みに、その横には巨大な銀の鍋が無造作に捨ててある。こうして作るのか。初めて見た。繊細な味なのに体力勝負の仕事だ。
これから冷蔵庫で固め、明日には店頭に並ぶから。そう言われ、翌日早速買いに行った。
ジェラティーナはラグーザ県一帯の地元の味。その昔、豚肉の良質な部分が貴族の食べ物だった頃、貧しい農民たちは残った豚の頭や耳、足などを集め、臭みを消す調理法を考え付いた。それが今でも郷土料理として人々に愛されているのだ。
ジェラティーナの作り方はシンプルだが少々手間がかかる。
まず、豚の頭、耳、足を軽く焼いて12時間水に漬け、血を抜く。それらを良く洗い、大鍋に4対1の割合の水と酢にレモンのスライス、塩を入れて2時間半煮込んだら、肉を布の上に取り出し、硬く筒状に巻いて冷蔵庫で冷やす。鍋の湯で汁は捨てず荒熱を取り、上澄み油のゼラチン部分をすくって一度軽く火を通す。肉が冷え固まったら2cmに薄切りし、容器に並べ、ゼラチンを流し込んで冷蔵庫で冷やす。これが固まったら、もう一度上にゼラチンをかけ、唐辛子を散らして再び冷やす。完全に固まったら出来上がり。


この出来立てのジェラティーナに、昨日買ったばかりのカルチョーフィcarciofi(アーティチョーク)のソテーを添えよう。ワインはネーロ・ダーヴォラNero d'Avola、パンはセモリナ粉100%のパニョッタpagnotta。地元の味三昧のランチ、考えただけでうひひである。

カルチョーフィの可食部分は少ない。
茎と葉は捨て、柔らかい部分が出てくるまで花びらを剥がし続け、頭先は切り落とす。するとロゼッタのような姿に。
どこまで剥くのか、その加減が難しいところ。

ボールに水とレモンを入れ、剥いたカルチョーフィを入れる。
こうすると黒く変色しない。ちょっと大きすぎたので切り直した。
ああ、この黄緑、薄黄色、赤紫が溶け合う美しさ。

下準備が出来たらフライパンにオリーヴ・オイル、にんにく一片、唐辛子を入れて軽く熱し、カルチョーフィを投入。ここで塩も一振り。
何となくしんなりしてきたら、水を少し足し、蓋をして蒸し焼きする。全体が柔らかくなるまで、水を加えて火を通し続ける。


ジェラティーナは材料の不気味さを忘れるほどさっぱりとして、東洋的な味を彷彿させる。チャーシューのような甘い肉の味に、少しコリッとする食感がたまに来て、それをレモンと酢の味がさっと包み込む。何となく湯で豚を酢醤油で食べるような感覚。そして唐辛子のピリリが舌を刺激し、ああもう一口と手が伸びる。
地元ではオレンジのサラダ(オリーヴ・オイルと塩をかけ、にんにくの芽で香り付けしたもの)と食べるのが一般的だが、どんなサラダとも良く合う。
そしてカルチョーフィとの相性も抜群だ。とんこつラーメンやタイラーメンに入れても最高に美味しかった。今度は細切りにして、手巻き寿司にもしてみようかとも思案中。東洋的な味だけにアイディアも広がる。
農民の厳しい生活から生まれた知恵の味。しかし日々の苦労を思わせないほどさっぱりとしている。ラグーザの空を流れる筋雲のように。
真の美味しさを知り、豊かな食文化を築いてきたのは、貴族ではなく彼らだったのだろう。
人気blogランキングに参加中 農民の知恵の味・・・!。
覗いてみると立ち込める蒸気の向こうで、青いエプロン、長靴、ゴム手袋姿のシニョーラが様々な形の肉片と戦っていた。聞くとジェラティーナgelatinaを作っていると言う。大理石の肉さばき台は、茹で上がったばかりの肉塊で一杯になっている。後ろには四角いアルミのオーブン皿が山積みに、その横には巨大な銀の鍋が無造作に捨ててある。こうして作るのか。初めて見た。繊細な味なのに体力勝負の仕事だ。
これから冷蔵庫で固め、明日には店頭に並ぶから。そう言われ、翌日早速買いに行った。ジェラティーナはラグーザ県一帯の地元の味。その昔、豚肉の良質な部分が貴族の食べ物だった頃、貧しい農民たちは残った豚の頭や耳、足などを集め、臭みを消す調理法を考え付いた。それが今でも郷土料理として人々に愛されているのだ。
ジェラティーナの作り方はシンプルだが少々手間がかかる。
まず、豚の頭、耳、足を軽く焼いて12時間水に漬け、血を抜く。それらを良く洗い、大鍋に4対1の割合の水と酢にレモンのスライス、塩を入れて2時間半煮込んだら、肉を布の上に取り出し、硬く筒状に巻いて冷蔵庫で冷やす。鍋の湯で汁は捨てず荒熱を取り、上澄み油のゼラチン部分をすくって一度軽く火を通す。肉が冷え固まったら2cmに薄切りし、容器に並べ、ゼラチンを流し込んで冷蔵庫で冷やす。これが固まったら、もう一度上にゼラチンをかけ、唐辛子を散らして再び冷やす。完全に固まったら出来上がり。


この出来立てのジェラティーナに、昨日買ったばかりのカルチョーフィcarciofi(アーティチョーク)のソテーを添えよう。ワインはネーロ・ダーヴォラNero d'Avola、パンはセモリナ粉100%のパニョッタpagnotta。地元の味三昧のランチ、考えただけでうひひである。

カルチョーフィの可食部分は少ない。茎と葉は捨て、柔らかい部分が出てくるまで花びらを剥がし続け、頭先は切り落とす。するとロゼッタのような姿に。
どこまで剥くのか、その加減が難しいところ。

ボールに水とレモンを入れ、剥いたカルチョーフィを入れる。こうすると黒く変色しない。ちょっと大きすぎたので切り直した。
ああ、この黄緑、薄黄色、赤紫が溶け合う美しさ。

下準備が出来たらフライパンにオリーヴ・オイル、にんにく一片、唐辛子を入れて軽く熱し、カルチョーフィを投入。ここで塩も一振り。何となくしんなりしてきたら、水を少し足し、蓋をして蒸し焼きする。全体が柔らかくなるまで、水を加えて火を通し続ける。


ジェラティーナは材料の不気味さを忘れるほどさっぱりとして、東洋的な味を彷彿させる。チャーシューのような甘い肉の味に、少しコリッとする食感がたまに来て、それをレモンと酢の味がさっと包み込む。何となく湯で豚を酢醤油で食べるような感覚。そして唐辛子のピリリが舌を刺激し、ああもう一口と手が伸びる。
地元ではオレンジのサラダ(オリーヴ・オイルと塩をかけ、にんにくの芽で香り付けしたもの)と食べるのが一般的だが、どんなサラダとも良く合う。
そしてカルチョーフィとの相性も抜群だ。とんこつラーメンやタイラーメンに入れても最高に美味しかった。今度は細切りにして、手巻き寿司にもしてみようかとも思案中。東洋的な味だけにアイディアも広がる。
農民の厳しい生活から生まれた知恵の味。しかし日々の苦労を思わせないほどさっぱりとしている。ラグーザの空を流れる筋雲のように。
真の美味しさを知り、豊かな食文化を築いてきたのは、貴族ではなく彼らだったのだろう。
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by hyblaheraia
| 2007-11-29 19:11
| 料理

シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。
by hyblaheraia
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2013年11月、共著出版

2009年4月、共著出版

1999年3月、共著出版

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