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オリーヴの塩漬け

 初めは出来た商品を買っていたが、自分で作るようになったものがいくつかある。自宅で乾燥させ手揉みする野生オレガノ、筒とフレッシュ・リコッタを買って自分で詰めるカンノーリ、生地から作って揚げるラグーザ伝統のフリッテッレ(揚げ菓子)、テラスで育てたバジリコを刻んだバジルソース、ラグーザ製サヴォイアルディを使ったルカ風テラミス、冬に隔日で焼く朝食用パウンド・ケーキ。
 全てに共通しているのは、安く美味しく、たくさん食べたいという気持ちだった。そして今日もまた、自分で作る○○シリーズに新顔が増えた。

オリーヴの塩漬け_f0133814_3565332.jpg それはオリーヴの塩漬け。シチリア南東部の丘陵地帯、イブレオ高原産monti iblei産のオリーヴは、小ぶりで実が引き締まり、青々とした風味が特徴である。これを使ったキアラモンテ・グルフィChiaramonte Gulfiのオリーヴ・オイルは名だたるコンテストで金賞を受賞する名品揃い。
 そのオリーヴを塩もみし、にんにく、唐辛子、セロリ、フィノッキェット(フェンネルシード)、イタリアン・パセリなどと共にオイル漬けにした特産品がある。無類のオリーヴ好きの私としては、小腹が空いた時にチビチビつまみ、至高の幸せを味わう一品だ。
 あのオリーヴが常に家にあったら・・・。
 八百屋の店先で売られる収穫直後の生オリーヴ1.5kgに、遂に手が出てしまった。
 店のシニョーラは、塩水に漬けて朝夕水を取り替えたら3~4日で出来上がると言った。そこにオリーヴオイル、にんにく、唐辛子をかけて食べたらmm~!ミントも入れると最高よ!聞いた瞬間、制御不能に。

オリーヴの塩漬け_f0133814_358196.jpgオリーヴの塩漬け_f0133814_40183.jpg
 オリーヴの葉や砂などが混入しているので、まずは洗ってごみを取り除く。その後重曹bicarbonatoを入れた水に10分ほど漬け置く。こうするとガスが発生し、表面の細かな埃もきれいに取れる。ここの野菜は泥だらけなので、我々はいつもこうして洗う。
 きれいに洗えたら、表面のきれいなものと汚いものに選別する。手前はきれいなもの。

オリーヴの塩漬け_f0133814_41499.jpg しかし見れば見るほど、汚さにも種類がある。初めての作業で良く分からないので、汚いオリーヴ標本を作ってみた。左から1、2、3・・・と番号を付けると:
 2、5、7は表面が黒く傷んでいたが、ナイフで削ると中は白くきれいだった。これは使える。
 一方、1、3、4、6は虫食いの小さな黒い穴が開いており、どんなに削っても中まで虫の通った黒い道があった。こういうものは種の中に虫がいたりするので、きれいな部分だけ削ぎとってあとは捨てる。ルカは前に、種に入った虫を見つけてこのオリーヴを買いたがらなくなった。食品の混入物にはちょっと神経質なA型。対する私は、胃液で溶けるから大丈夫!と適当なB型。

オリーヴの塩漬け_f0133814_412846.jpgオリーヴの塩漬け_f0133814_421130.jpg
 時折、標本を見ながら汚さ基準を確認しつつ、傷んだ黒い部分は削り取る。虫食いもできるだけ取り除こうとしたが、一度もぐりこむと中まで進出するようで捨てるしかない。虫だってこんな美味しいオリーブ、一口でなんて止められないのだろう。
 それでも虫食いで捨てたのは20粒のみ(写真右)。本当にきれいなオリーヴだった。手前は優良オリーヴ、奥はやや難あり。
オリーヴの塩漬け_f0133814_43445.jpgオリーヴの塩漬け_f0133814_4124056.jpg
 さて、きれいになったオリーヴを今度は押し潰さねばならない。八百屋のおじさんは、野菜の入った木の柵で叩き潰して見せてくれた。確かに指や手で潰せるような代物ではない。瓶の底で潰すつもりだったが、とてもとても。金槌を取り出し、そのままでは硬すぎるので、布とビニールで巻いてみた。てるてる坊主に似た、オリーぶるぶる坊主。
 テーブルでガンガンやるわけにはいかないので、床に薄いクッションとビニールを敷き、そこで試す。が、ツルン!コロン!ピョーン!だめだめ、作業にならない。
 使い捨ての皿を置き、その端のくぼみに固定させてコン、コン!と潰す。おお、これだ!この方法だ。こうして作業のコツを得ていくのも楽しい。

オリーヴの塩漬け_f0133814_494886.jpg 割ると中身はこんなに白い。青りんごのうっすらとした若い苦さを思わせるフルーティーな香りが漂う。皿の上にはオリーヴのミルクが点々と。絞りたての果汁がこんな乳白色だったとは驚きだ。そして美しいエメラルド・グリーンの果実。
 ああ、こうして一粒一粒きれいにし、丹精込めて潰す作業に心が満ち足りていく。商品を買って完成された味を楽しむのもいいが、やって見なければ一生知ることはなかった作る喜びに、しばし酔いしれた。

オリーヴの塩漬け_f0133814_4103231.jpg 最後は、潰したオリーヴを塩水に浸す。塩の量は人によってまちまちだが、とりあえず舐めて塩っぽいと思うくらいの量にしてみた。様子を見て加減しよう。
 ちなみに容器はガラスと陶器。ステンレスだと変色しそうだし、プラスティックでは匂いが移りそうな気がしたので。手前ガラスが優良オリーヴ、奥の陶器は難アリ君たち。
 どんな味に変化して行くのだろう。これから毎朝、毎晩、水を取替えるのが楽しみだ。

 いつも行く小さな食材店で業務用の巨大なオリーヴの瓶を見つめ、これをまるごと買ったらおいくらですか?とシニョーラに聞き、そんなに好きなの?と笑われた。
 あのオリーヴが常に家にあれば・・・。その夢は膨らみ、少しずつ現実になりつつある。

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by hyblaheraia | 2007-11-24 09:42 | 料理


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