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ドンナフガータ城 -逃げた女の城?!-

 ドンナフガータ城 Il Castello di Donnafugata。
 それは、ラグーザ市からサンタ・クローチェ・カメリーナSanta Croce Camerinaへ向かって20キロ程走り続けた小高い丘の上にひっそりと佇んでいる。周囲にはカッルーボ(イナゴマメ)の木々とムーロ・ア・セッコ(セメント類を使わない石積みの壁)の丘陵地帯が広がり、ラグーザの典型的な風景の中に溶け込みつつ。

ドンナフガータ城 -逃げた女の城?!-_f0133814_2141474.jpg 「逃げた女donnafugata」を意味するその名は、10~11世紀頃、豊かな水が湧くこの地域にアラブ人が集落を作り、「健康の泉Ayn As Jafat」と名付けたことに由来する。
 それが地元の方言で「ロンナフアータRonnafuata」と呼ばれ、現在の「ドンナフガータ」に変化するに至った。
 848年から212年間続いたアラブ支配は、ラグーザの地名や人名、ならびに食文化にその痕跡をこうして色濃く残している。
 それにしてもラグーザ人の「空耳」は、なかなか想像力に富んでいる。


ドンナフガータ城 -逃げた女の城?!-_f0133814_23355471.jpgドンナフガータ城 -逃げた女の城?!-_f0133814_23362048.jpg 到着するとまず牛たちが出迎えてくれる。忘れ難い匂いとともに・・・。
 貴族の別荘に牛とハエ・・・、こういう所がラグーザ的かモ~。虫嫌いなテレーサは悲鳴をあげていたが。
 城正面の左右に続く素朴な長屋は、かつての馬小屋、牛舎、納屋、農民の住居。貧富の差は現代の我々には想像できないほどだっただろう。今はレストランやカフェ、エノテカなどが並んでいる。

ドンナフガータ城 -逃げた女の城?!-_f0133814_22503741.jpgドンナフガータ城 -逃げた女の城?!-_f0133814_22561449.jpg  中に入ると、ピエートラ・ペーチェPietra peceの階段が緩やかに続く。油田近くに堆積した石灰石にタールが触れてできたこの黒石はラグーザ特有のもので、教会や貴族の館の床、壁、階段、バルコニーの装飾などにふんだんに使われる。
 長いドレスを引きずりながら、淑女たちがゆっくりとここを上がって行った様子を想像しつつ・・・、我が家の急な階段とは違ってなんと登り易いこと!

ドンナフガータ城 -逃げた女の城?!-_f0133814_22595677.jpg 階段周りの優美なオイルランプや石膏像を見ながら中へ。城内は撮影禁止のため階段から中をちらっと一枚だけ。
 「青の間Sala azzurra」と呼ばれるこの部屋は、来客が城の主に目通りが適うまで待たされたところ。飲み込まれそうなほど大きな金箔の鏡の前で、身なりを整えて待ったのかな。写真にはないが、天窓から光が燦々と差し込んでいた。
 この他に、喫煙の間、御婦人の間、音楽の間、王女の間、客間、客室2、絵画の間、ビリアードの間、司教の寝室および間、鏡の間、男爵の間、紋章の間、丸部屋の間、公的昼食の間、など在りし日の貴族の生活が窺える美しい部屋を堪能。
 中でも特に、鏡の間にあった6本ペダル付きのピアノが私の心を惹いた。このペダルはどう使い分け、いったいどんな響きがするのだろう。金装飾のミューズがピアノの3本足を飾っていたのも忘れられない。いつか弾かせてもらえる日が来ますように・・・。

ドンナフガータ城 -逃げた女の城?!-_f0133814_047843.jpg 城内から見える広大な庭園を見ながら、今日はここまで。
 明日は庭の散策のご報告。

 なおヴィスコンティの映画《山猫》でサリーナ公爵の館であるドンナフガータ城は、原作者のランペドゥーサが実在するこの城からイマジネーションを受けて名付けたたもので、ここで撮影は行われていない。

人気blogランキングに参加中 逃げた女の城・・・。
by hyblaheraia | 2007-08-19 00:55 | 歴史


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


by hyblaheraia

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2013年11月、共著出版



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