酔っ払った桃のワイン

 ピェルスィキと、ノーチェ・ピェルスィキ。ラグーザ弁で桃とネクタリンのことをこう呼ぶ。イタリア語だとペスカ pescaとノーチェ・ペスカ nocepesca。同じイタリアでも発音はこうまで違う。

f0133814_207522.jpg 写真の手前、皮に産毛があって少し白みがかっているのが桃、奥に見えるのがネクタリンで皮に赤味と艶がある。
 見た目と同様、味も少々違う。桃は日本の高価な白桃のようなものではなく、果実はかなり黄色い。スーパーで売られている黄桃の缶詰(シロップ漬け)と似ているが、こちらの場合その甘さは天然もの。皮を剥いてかじっただけで缶詰と同じような甘いジュースがこぼれ出す。
 ネクタリンはさらに甘味が濃く、酸味も少々ある。皮が薄いのでそのまま食べることもでき、繊維質な桃よりも舌触りがさらっとしている。また桃の痛みは早いが、ネクタリンはかなり長持ちし、いつまでも実が硬い。だが不思議なことに、いくら食感がゴリゴリしていても味は既に熟しきった甘みを一杯に含んでいる。昨夜食べたネクタリンは、りんごの紅玉ほどの硬さだったが、とろみのある力強い甘さに病み付きになった。

f0133814_22481759.jpg この2つの果物が出てくる夏、我が家の定番ドリンクと言えばこれ。
 桃とネクタリンを小さく切り、シチリアの赤ワイン、ネーロ・ダーヴォラに入れて冷やしたもの。スペイン語ではサングリアだろうが、我々は桃ワインと呼ぶ。
 ラグーザでは、およそ1.8ユーロ~2.3ユーロ以内でかなり満足なネーロ・ダーヴォラが買える。ワインを容器に移して、皮を剥いた桃たちを溢れるほど入れるのはルカの担当。イタリア人は小さなナイフ1つでまな板がなくても、何でも器用に切ったり剥いたりする。それを感心しながら見つめ、芯についた果実を流し台でジュルジュル吸うのが私の役目。ヒヒ。
 パスタやラヴィオリ、生ハムとサラダ、アランチーニ、フォカッチャなど何にでも良く合うこのワインは、実は、食事中に2つの楽しみ方がある。

f0133814_22484569.jpg まず、グラスにワインを注ぎ、スプーンで桃を2、3切れ入れる。食事中ワインは飲むが、桃は食べずに残しておく。ワインが減ったらまたグラスに注ぎ、桃も数切れ足す。食事中これを繰り返し、最後にいよいよ桃をいただく。なぜならこれは、歴としたデザートだからだ。
 ワインに溺れていた桃たちは赤黒い色に染まっている。皮を剥いた直後のフレッシュさはなく、少しへたってもいる。が、それを口に含むと、ショワー・・・!おお、何ということだ。強いワインで名高いネーロ・ダーヴォラに、この可憐な桃たちが対等に戦っているではないか。濃いブドウ味の後に続く甘酸っぱさ、そして舌を刺激するこのショワー・・・!。どこかで体験した覚えがある・・・。

 そうだ、あれだ!ラグーザには地元のチーズとソーセージをネーロ・ダーヴォラ漬けにしたものがある。チーズはラグーザDOPのカーチョ・カヴァッロcacio cavallo(ラグーザ弁でコーザ・カヴァッドュcosa cavaddu)、ソーセージは豚挽肉にフェンネル・シードと唐辛子、黒胡椒を入れたものを使う。それらは「酔っ払ったチーズcacio cavallo ubriacato」、「酔っ払ったソーセージsalsiccia ubriacata」と言われる。食べると舌をぴりりと刺すあの味は、まさに桃ワインのショワー・・・!と同じだ。つまり、これも「酔っ払った桃pesca ubriacata」ということか。
 そう言えば、ジャッキー・チェンの映画で《酔拳》というのがあったが、それに例えるなら我が家の桃ワインは「酔桃(すいとう)」だな。ワインを飲んでほろ酔い、酔桃を食べてさらに酔い、桃たちも酔い、みんなで酔う。ああ、この酔いの競演、亦楽しからずや。
 
 ところで、桃を剥きすぎて容器に入りきらない場合は、冷凍して次回また使うことができる。凍った桃は氷代わりになるのでワインがぐんと冷え、最後には桃のワイン風味シャーベットがデザートとしていただけるのだ。こんなに美味しくて一石二鳥なワインの楽しみ方、ボルドーの高級ワインではできないだろう。イッシシ。
 シチリアの庶民ワインに万歳!

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by hyblaheraia | 2007-07-12 23:51 | 料理


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


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