じわじわと
別れはいつも、じわじわと近付いてくる。ラグーザの大学でも、都内の音大でもそうだった。

今年4月から教えていた音大を去ることが決定した日の大学からの風景。蒸し暑さの残る東京の空は、白くくすみ、どこか判然としない心の内を見ているようだった。
ああ、終わってしまった。また別れの時が来るのか。でもこれが我が人生というものなのか。

西洋音楽史の授業は80人近い履修者がいて、出席簿を使って出欠を取らなければならなかった。最初はどうなるかと思ったけれど、第一回目の授業の時に、後方に座っている男子学生の中でとても声のいい人がいて、「あ、君いい声ね。出席を取るのを手伝ってくれる?」と頼んだら、授業後「先生、良かったら来週もオレ、やりますよ」と言ってくれて、以来毎週、出席係を担当してくれた。本当に心強かった。
フローベルガーのリチェルカーレの授業も思い出深い。この音大では伝統的にピアノ科の学生一人を指名してこの作品を弾かせていたそうだけれど、私のクラスには管楽器専攻生が多かったので、ファゴットの学生をリーダーにして管楽四重奏を組んでもらった。フルート、フルート、クラリネット、ファゴットの編成で奏されたリチェルカーレは、柔らかい音色で懐かしい情感が溢れていた。
「主題の入りの時に、一歩前に出て吹いてくれる?」と聞いたら、「え~!できな~い!」、「先生ー、吹くだけで精一杯です~!」と叫んでいたけれど、十分できたと思うな。(上掲写真:リチェルカーレ演奏中の4人)

このクラスの最終授業の時、学生たちから温かい拍手をもらった。妊娠が分かり、後期の授業が途中で降板になることを伝えた時も「エエーーーーッ!!」と80人一斉に驚きの声を上げ、その後拍手が起こった。恥ずかしく、嬉しく、顔が真っ赤になった。
大教室の前方でいつも熱心に授業を聞いてくれた女子学生から寄せ書きをもらい、そこには「先生、大好きです」という言葉が。読み返すたびに「私も大好き!」とイタリア式にギュッとハグしてほっぺにチューしたい気分になる。
「最後の授業でもうるさくてスミマセンでした。」と挨拶に来た男子学生君たち。本当は感受性豊かに感じているのに、真面目に発言するのが恥ずかしかったのでしょう?
嵐のように過ぎ去ったこの半年。音楽史が池のようなものだとすると、今までは水面を泳ぐアメンボのようだった私が、今は鯉となって水の奥まで泳ぎ、生えている藻を食べたりしながら音楽を楽しんでいる。つわりや重い身体で辛かったけれど、学生と対話し、音楽から得たものは大きかった。
一生忘れ得ない時間をありがとう。別れの時はじわじわとやって来て、その瞬間は既に去ったけれど、別れは存在していなかったようにも感じている。もしかしたらそれは、君たちが教えることの楽しさを教えてくれて、シチリアでまだ見ぬ学生たちに教えたいという気持を芽生えさせてくれたからではないかな。
今はそんな新たな希望がじわじわと湧いて来ている。
学生の皆さん:レポートの採点、もうしばらく待っていて下さい。それとクリスマスの集中講義、しっかり聞くように!

ああ、終わってしまった。また別れの時が来るのか。でもこれが我が人生というものなのか。

フローベルガーのリチェルカーレの授業も思い出深い。この音大では伝統的にピアノ科の学生一人を指名してこの作品を弾かせていたそうだけれど、私のクラスには管楽器専攻生が多かったので、ファゴットの学生をリーダーにして管楽四重奏を組んでもらった。フルート、フルート、クラリネット、ファゴットの編成で奏されたリチェルカーレは、柔らかい音色で懐かしい情感が溢れていた。
「主題の入りの時に、一歩前に出て吹いてくれる?」と聞いたら、「え~!できな~い!」、「先生ー、吹くだけで精一杯です~!」と叫んでいたけれど、十分できたと思うな。(上掲写真:リチェルカーレ演奏中の4人)

大教室の前方でいつも熱心に授業を聞いてくれた女子学生から寄せ書きをもらい、そこには「先生、大好きです」という言葉が。読み返すたびに「私も大好き!」とイタリア式にギュッとハグしてほっぺにチューしたい気分になる。
「最後の授業でもうるさくてスミマセンでした。」と挨拶に来た男子学生君たち。本当は感受性豊かに感じているのに、真面目に発言するのが恥ずかしかったのでしょう?
嵐のように過ぎ去ったこの半年。音楽史が池のようなものだとすると、今までは水面を泳ぐアメンボのようだった私が、今は鯉となって水の奥まで泳ぎ、生えている藻を食べたりしながら音楽を楽しんでいる。つわりや重い身体で辛かったけれど、学生と対話し、音楽から得たものは大きかった。
一生忘れ得ない時間をありがとう。別れの時はじわじわとやって来て、その瞬間は既に去ったけれど、別れは存在していなかったようにも感じている。もしかしたらそれは、君たちが教えることの楽しさを教えてくれて、シチリアでまだ見ぬ学生たちに教えたいという気持を芽生えさせてくれたからではないかな。
今はそんな新たな希望がじわじわと湧いて来ている。
学生の皆さん:レポートの採点、もうしばらく待っていて下さい。それとクリスマスの集中講義、しっかり聞くように!
by hyblaheraia
| 2012-11-21 01:26
| 大学・研究

シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。
by hyblaheraia
| S | M | T | W | T | F | S |
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | |
| 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 |
| 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 |
| 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 |
| 28 | 29 | 30 | 31 |
掲示板
24 Mag. 2019
迷惑コメント対策で承認制にしております。
自己紹介に代えて

ご連絡等はコメント欄にお願いいたします
::::: ::::: :::::

2013年11月、共著出版

2009年4月、共著出版

1999年3月、共著出版

カテゴリ
全体自然
生活
歴史
祭り
伝統・技術
料理
菓子
変わった野菜と果物
野鳥・昆虫・動物
大学・研究
政治・社会
音の絵:写真と音楽のコラボ
シチリア他の町
イタリア他の町
ナポリの実家
一時帰国
ブログ・・・周年とゲーム
未分類
タグ
星・月・空・雲(60)事件(50)
挑戦(46)
日々の料理(42)
イブラ(41)
研究(38)
テラス(36)
家族(35)
音楽(35)
テレビ・雑誌・ネット(34)
日々のお菓子(31)
旅行(27)
歴史・考古学(22)
カターニア大学ラグーザ校(21)
教会(20)
ラグーザ弁(15)
バス・鉄道・タクシー(14)
自家製食材(11)
海・ビーチ(11)
ストゥルヌス(メルロ)(11)
暑さ・寒さ(10)
お店いろいろ(10)
チンチャレッラ(10)
水問題(9)
環境破壊(8)
SOSシリーズ(8)
地元のお爺さんたち(8)
野菜で遊ぶ(8)
クイズ(7)
テッラコッタ・シチリア陶器(6)
カルデッリーノ(6)
シチリア伝統馬車(5)
モンティ・イブレイ(4)
母の悩み(3)
サッカー(2)
アマツバメ(2)
ブログパーツ
- このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することを禁じます。
以前の記事
2019年 05月2018年 02月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 05月
more...
画像一覧
ブログジャンル
検索
記事ランキング
ライフログ
お気に入りブログ
生きる詩gyuのバルセロナ便り ...
ルーマニアへ行こう! L...
写真でイスラーム
エミリアからの便り
アフガニスタン/パキスタ...
イスラムアート紀行
夫婦でバードウォッチング
La Vita Tosc...
パリ近郊のカントリーライフ
トルコ~スパイシーライフ♪
now and then
Vivere in To...
シチリア時間Blog
フィレンツェ田舎生活便り2
ふりつもる線
ぐらっぱ亭の遊々素適
ヴェネツィア ときどき ...
石のコトバ
ボローニャに暮らす
フランスと日本の衣食住
cippalippaの冒...
スペインのかけら
Berlin Bohem...
VINO! VINO! ...
::: au fil d...
sizannet
イタリア料理スローフード生活
ペルー と ワタシ と ...
しの的エッセンinドイツ
PoroとHirviのとおり道
料理サロン La cuc...
カッラーラ日記 大理石の...
イタリアの台所から
オルガニスト愛のイタリア...
Animal Skin ...
しのび足
道草ギャラリー
白と黒で
ちまもの読書日和
andante-desse
il paese - p...
やせっぽちソプラノのキッチン
坂を降りれば
A Year of Me...
お義母さんはシチリア人
Espresso!えすぷ...
シチリア時間BLOG 2
London Scene
hatanomutsum...
小鳥と船
Cucina , sof...
ローマ、ヴェネツィア と...
やせっぽちソプラノのキッチン2
