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一日の終わりの空に捧ぐ

 一日の終わりが西の空の彼方に吸い込まれる時刻に、無音で展開される空と雲の色の劇的な変化。黄色から橙色へ変わり、絹のような輝きを放ったと思うと、今度は赤みを帯びてきて、色の濃さを強めながら夜の空に染まり溶けていく。その時間を憧れと驚嘆と自戒の念を持って何度見送ったことだろう。明日は、太陽が眠りに着く僅かな時間にこの歌を捧げ、刻々と変わる空の色に音を聴いてみようと思う。


ヘンリー・パーセル(1659-1695)作曲
《今や太陽はその光を覆い隠し》 グラウンドに基づく夕べの讃歌 
Now that the sun hath veiled his light (An Evening Hymn on a Ground)

Now that the sun hath veiled his light 今や太陽はその光を覆い隠し
And bid the world goodnight; 世界におやすみを告げている
To the soft bed my body I dispose, 柔らかい寝床へ私は横たわろう
But where shall my soul repose? でも私の魂はどこで休むのだろう
Dear, dear God, even in Thy arms, 親愛なる神よ、あなたの腕の中より他に
And can there be any so sweet security! かくも甘美な安らぎがあるだろうか
Then to thy rest, O my soul! ああわが魂よ、ならば(魂の)安らぎのために
And singing, praise the mercy 歌いつつ、神の慈悲を讃えよ
That prolongs thy days. そうすれば(魂の)安らぎの日々が続いていくだろう

Hallelujah! ハレルヤ


::: ::: :::

 大変久しぶりですが、「音の絵」シリーズ第11弾です!
 17世紀イギリスの作曲家、ヘンリー・パーセルの歌を、夕刻のラグーザの空の移り変わりとともにお届けします。夕陽に向かって整列して行われるストウルヌス(ムジホシ・ムクドリ)の夕方の集会、さらに月の遠さと近さがもたらす町並みの表情の変化は、夕刻から夜へと変わるラグーザの空に欠かせない存在です。

 ソファ#ミ、ファ#ミレ、ミレド、レドシ、ドレレ、ソ~と繰り返されるバス(固執低音)の安心感、その上で伸びやかに歌われる旋律の純粋な美しさ。それらが心を穏やかな方向へ連れて行き、焦りや不安で忘れていた「喜びを感じる心」を思い出させてくれるような気がします。
 「癒しの音楽」という言い方は、聴くだけで癒されるという受動的なイメージがあって好きではないけれど、音楽が心を癒すということは、実は、忘れていた何かを感じさせること、なのかもしれないと思わせる作品です。

 日本の地震津波被害、原発の憂慮すべき状況、我が家上空を飛ぶリビアへ向かう空軍機の不気味な音、そして我々の今後一年の行方。それらの不安のせいか、最近は悪夢で夜中に目覚め、首筋の汗に髪の毛がびったりと張り付き、心臓がばくばく鳴っていることがしばしば。
 この歌詞の簡素は、宗教的な意味合いを超えて、日常に感謝し毎日を誠実に生きよというメッセージを万人に伝えているのではないでしょうか。


追伸:歌詞を訳す際に、Thy(大文字)とthy(小文字)を区別しました。thy=古英語で「汝、そなた」を、大文字は神、小文字はmy soul 魂にしています。thyを全て「神」としてしまうと、歌詞のレトリックが読めず、曖昧な感じになってしまうので、この解釈で訳しました。一次史料で大文字、小文字の区別があるかどうか・・・。
 感想などぜひ教えてください。いつもの通りソフトの限界で、音楽と映像のタイミングが合っていない所があるのですが、大目に見てください。次回の作品はもう決まっているので、早く作りたい!
 
by hyblaheraia | 2011-04-03 07:51 | 音の絵:写真と音楽のコラボ


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


by hyblaheraia

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2013年11月、共著出版



2009年4月、共著出版



1999年3月、共著出版


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