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ナポリの火災 続編 -余波と出火原因-

 ナポリの実家の裏山、カマルドリCamaldoliは依然として燃え続けていた。後ろ髪を引かれる思いでナポリ湾へと向かう。シチリア行きの船は午後7時出港だ。

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 ちょうど湾沿いの道を走っている時に、化け物イナゴの吸水場面に出くわした。

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 あの吸水棒からわずか45秒で9000リットルの水を一気に吸い上げるのだそう。さすが化け物だ(本当の名前は、EricsonエリクソンS64)。
 巨大なヘリが目の前に突如現れ、物凄い水しぶきを上げて再び飛んで行くのは、


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 有名な卵城Castello uovoが海を臨み、ヴェズーヴィオが眼前にそびえる場所。良く知るいつもの場所だが、何かがおかしい。見渡してみると、


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 ヴェズーヴィオの麓でも火災が起きていた(右の山の下方、船の赤い鉄骨あたり)!
 西からも、東からも煙が流れ込み、ナポリ湾全体にヴェールがかかり始めた。あまりの煙に耐えかねてキャビンで一休みし、


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 18時頃、甲板に出てみると、ヴェズーヴィオはさらに靄の向こうへ追いやられ、

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 普段なら良く見えるソレント半島も、深い黄昏の中にいた。


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 サン・マルティーノ修道院の丘は、漠然とした黒い塊と化している。いつもは建物の一つ一つが個性を持って浮き上がっているのに。

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 カマルドリの山と、ナポリ湾をひっきりなしに往復する消火ヘリが、船からも良く見えた。

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 音の聞こえない、小さな点の、

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 懸命な飛翔から、

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 無性に切ない何かが

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 突き上がって来るのは、

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 この紅さのせいだろうか。


  
 火災前、カマルドリは緑に囲まれた美しい山だった。
 ナポリ湾が一望でき、遠くにヴェズーヴィオが見える山頂には、聖ブリジダ会の修道女が20人ほど隠遁生活を送っていた。(山頂の黄色い建物が修道会)

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 今回の火災についてレプッブリカ(ナポリ版)を読み、愕然とした。
 これは既に4回目の火事で、カモッラと呼ばれるナポリのマフィアが、ここに5つ星の豪華ホテルを建設するために、修道会を立ち退かせようと嫌がらせをしたのだそうだ。

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 そんな映画のような凶暴な話がナポリでは頻繁に起きている。

 35000年前、この辺り一帯の噴火によってできたカマルドリCamaldoliの山。緑が戻り、太古の息吹を吹き返すのは、いつのことだろうか。


追伸:
イタリアでは一見自然火災に見えても、人為であることが多いのだそうです。その理由は、
1:森林が焼ければ、そこに木を植える必要が生じ、植樹業者が儲かる。
2:森林が焼ければ、緑化保護指定区域が外れ、リゾート開発が可能になる。

故意に火を付け、ひと儲けしようとする悪行は、毎年夏になるとイタリア全土で報じられています。信じられないことばかりです。
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by hyblaheraia | 2009-08-22 23:45 | ナポリの実家 | Comments(22)

ナポリの山火事

 カマルドリから大きな煙が出ている!家は大丈夫?!買い物中のルカから電話がかかってきた。窓の外を見てみると、

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 白い煙が空高く上がり、住宅街のすぐ裏まで火が近づいていた。ちらちらと紐のような黒い灰も降っている。

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 風にあおられ、炎は次第に大きくなり、バリバリッ、メリメリッ、バチバチッ、不気味な音を立てながら松の木を燃え倒していく。

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 30分ほどして、消火ヘリが飛んできた。機体に赤い水袋を下げて、ナポリ湾の海水を汲み取り、最も燃えている場所の真上から、ピンポイントで水を落とす。そんな作業を5分置きに繰り返しているが、焼け石に水という感じだ。


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 テレビ塔の左側へとじわじわ燃え広がり、山の裏側からは黒煙が昇る。再び大きな炎が上がったのだ。

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 消火ヘリは、山の尾根ぎりぎりに飛びながら(写真:左際の物体)、黒煙の中でホーバリングして最も危険な場所へ水を落とそうとしている。命がけの消火作業だ。


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 1時間後、お腹に響くような爆音とともに巨大な赤いヘリが飛んできた。長い足のような吸水筒と、複眼のような大きな窓を持ち、化け物のイナゴのよう。

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 水袋の小さなヘリはメダカのようにスイスイと住宅街をぬいながら消火に当たり、化け物イナゴは山の頂上付近と裏側の炎と戦い始めた。
 空中で二機が接触しないか、固唾を飲んで見守る。

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 それにしても化け物イナゴのパイロットは凄腕だ。山の左側(ナポリ湾)から猛スピードで飛んできて、頂上近くで急速に速度を落とし、大きく左に旋回してこの態勢に入り、テレビ塔近くで機体を斜めに倒して水を噴射させる。そしてふわっと浮かび上がり、ナポリ湾へと飛んでいく。神業のように思えた。


 午後1時を過ぎ、山の両左右側ともに住宅街間近まで煙と炎が迫ってきた。

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 ヘリが足りない、このままでは日没までに消火できないのでは、と不安がよぎり始めた頃、

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 途切れのない滑らかな飛行音とともに、カナデーアが颯爽と現れた!
 カナデーアだ!!なぜかイタリア人は皆、この消火飛行機のことを知っている。シチリアでも大規模な自然火災の度に大空を舞っている。頼むぞ、黄金の鷲!!


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 しかしながら午後2時、もはや実家の目と鼻の先まで火が回ってきた。数時間前から近所は煙に巻かれ、家の中にいても頭や目や喉が痛い。住民のバケツリレーで消せるものなら・・・。今はただ、消火ヘリに望みを託すしかない。


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 水袋メダカは煙の中へと果敢に入って行く。


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 黄金の鷲は、大きな羽で燃える山肌を撫でるように飛んで行く。

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 化け物イナゴは山のくぼみに巨体を潜り込ませ、住宅街を低空で行き来する。

 午後5時、もうシチリアへの出発の時間。消火ヘリ3機、飛行機1機が飛び交う煙まみれの住宅街を後にし、ナポリの船着き場へ。その道中、およびカターニア行きの船から見た光景がまた凄かった。出火原因についての噂も、次回へ。

 つづく・・・。
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by hyblaheraia | 2009-08-20 20:25 | ナポリの実家 | Comments(14)

神殿の谷が民営化?!

 アグリジェントのなだらかな海岸線を一望する丘に「神殿の谷Valle dei templi」がある。
 「人間が作った都市で最も美しい」とピンダロスが讃えたその場所には、コンコルディア神殿(写真上)、ヘラ神殿、ヘラクレス神殿(写真下)などが四季折々の風景に溶け込み、雄大な歴史の息吹を背負って聳えている。

f0133814_61165.jpg 訪れる観光客は年間70万人以上、世界遺産にも登録されたシチリアを代表する文化遺産である。
 その神殿の谷を震撼させるニュースがイタリア全国に走った。
 神殿の谷を民営化する、というものである。

 シチリアでの観光収入を増大させるために、「観光地を完全パック化pacchetto completoにし、信頼できる民間企業に30年間リース・経営させる。
 シチリアの文化財経営を担当するアンティノーロ州議会議員の発案に、各界で異論が飛び交っている。

 現在のところ、神殿の谷と、シラクーザのギリシア古代劇場が検討されているが、タオルミーナの古代劇場、セリヌンテの神殿、パラティーナ聖堂も民営化リストに挙げられている。

 まったく信じられない。これらの世界遺産をシチリア州が放棄するとは。日本で東大寺と金閣寺が民間企業にリースされるような話だ。あまりに拙い発想に情けなくなる。そもそも世界遺産に管理基準は存在しないのだろうか。

 驚きの発言はさらに続く。世界遺産を経営するに当たり、民間企業は
 「道路や宿泊施設の整備など(を行うと良い)。神の谷の場合はパレルモ~アグリジェント間の国道整備や、ヘリポートの設置を民間企業に依頼しても良いだろう」、と。

 日々の鉄道も水道網もなく、病院施設の閉鎖を余儀なくされているシチリアにヘリポートなど何の必要があるのか。
 結局、公共事業の発注と、政治資金の確保が政治の最大の関心事なのだ。今回はそれに世界遺産さえも利用しようとしている。

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 「恐ろしいことだ」
 シチリアの民主党Pd議員たちがそう声を上げているのはせめてもの救いだった。

 古代から「地中海の宝石」と謳われたシチリア。
 その輝きを未来に伝えるためには、一人一人の意識が問われている。


ああ、なんでこうなんだろう、シチリアって・・・。
 


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by hyblaheraia | 2008-07-05 09:48 | 政治・社会 | Comments(17)

イタリアで最も住みにくい町?!

 昨日の全国ニュースで衝撃的な事実が伝えられた。毎年、都市のエコシステムを調査している団体レガンビエンテ(環境協会Legambiente)は2008年度の調査をまとめ、イタリアで最も住みやすい町はベッルーノBelluno(ヴェネト州)、最も住みにくい町はラグーザという結果を提出した。
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 寝耳に水、青天の霹靂、なんとでも言おう。私の愛するこの美しいラグーザが、最も住みにくいとは何たることだ。早速、レプッブリカ紙のサイトで、記事とデータを参照した。

 同紙によると、イタリア全国の県庁所在地となる103の町を対象に、
1.交通手段の信頼性
2.住民一人当たりの緑地面積
3.水道システムの有効性
4.大気の質
5.自転車による走行可能距離
6.生活用水の水質
7.エコ・エネルギーの普及度
8.ゴミの管理システム
9.ゴミ分別の実態
などを中心に、都市生活に関する125の調査項目が用意され、125,000以上に登る統計データが収集されたという。
 このうちラグーザでは、ゴミの分別は全体の3%に留まり、水道網から26%の漏水が確認され、市民の緑地面積は5平方メートルにも満たなかったそうだ。昨年の100位から103位へと最下位に陥ったラグーザは、各メディアでこうした最悪の結果を見せ付けられたのである。

f0133814_8393662.jpg 確かに9項目のうち、1の交通手段は1時間に1本の路線バスに悩まされているし(午後8時最終)、3の水道も大いに問題がある。坂だらけの町のため、5の自転車など使えるような環境ではない。が、かと言って住みにくい訳では決してない。いや、坂の多さこそが、この町を美しくしているのではないか。
 2の緑地面積もそうだ。石灰岩の上に建設された町のため、市内にもちろん緑は少ないが、周囲には野生の大地が広がっている。これはどう解釈されたのだろうか。大自然に囲まれた町だから、もちろん空気もきれいだ。多くの野鳥がやって来るのもそのためである。
 と、最下位という結果をどうしても承服できず、このような調査基準は、果たして有効なのかと考えていた。

 しかしながら、市の水道網から漏水していた事実は、こうして明るみになって幸いだった。この機会がなければ、市の水道課は事実を隠蔽していたかもしれない。ゴミの分別が守られていない現状も、自分さえ良ければ、という行動が市民社会において、いかに無知であるかを知らしめている。エコ・システムの導入は、シチリア全体の問題とも関わっているだろうが、全国的な視線を浴び、市民の意識が高まれば少しずつ政治も動いていくだろう。

f0133814_829183.jpg この結果に対してラグーザ市長は、国営放送地方ニュースで次のようにコメントした。
 サン・ジョヴァンニ大聖堂広場を車両通行禁止にし(余計なサービス)、ローマ通りVia Romaも毎週日曜は歩行者天国になる(前からそう)。市内にも地下駐車場や多数の駐車場を建設中で(超迷惑)、住み良い環境作りに邁進している(嘘ばっかり)、と。
 全く筋違いではないか。去年100位だった結果を真摯に受け止め、この粗末な交通手段や深刻な水問題、ゴミの分別意識を改善するよう、何か努力したのか。彼が意気揚々と述べた駐車場開発には、市長選の際の黒い絡みが見え隠れしている。
 現市長の当選以来、ラグーザでは異常な建設ラッシュとなり、のどかな牧草風景があちらこちらで失われつつある。住みにくい町とは、まさにこのことではなかったか。
(写真:駅前広場を封鎖する巨大な地下駐車場工事)

f0133814_846172.jpg ちなみに、86位~最低103位の間に、エンナ86、パレルモ89、カターニア94、トラーパニ96、アグリジェント97、シラクーザ98、カルタニセッタ99、ラグーザ103が位置している。
 周知の通り、全てシチリアの町である。この島がいかに通常の都市環境から取り残されているかを物語っている。唯一メッシーナが56位と健闘した。

 参考までに、シエナ6、ヴェネツィア11、ピサ12、フィレンツェ17、ボローニャ23、モデナ29、アレッツォ40、カーリアリ52、ローマ55、ミラノ58、トリーノ74、ナポリ91位であった。
 この結果をどう受け止めるべきだろうか。

 ああ、我が町よ。最下位であろうと、ラグーザに流れる美しき魂の全てを愛し続けよう。

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by hyblaheraia | 2007-10-17 08:49 | 政治・社会 | Comments(26)

黒い匂い

 ワイナリーからの帰り、コーミソからラグーザへ上がる山道で自然火災が2ヶ所で発生していた。今年はいったい何度自然火災に出会っただろうか。テレビニュースでも連日、大規模な山火事を報道している。
 なぜこれほど火災が起きるのか、原因は何なのか、運転中のジョヴァンニ氏に問い詰めるように聞いた。彼の話をまとめるとこうだ。

 シチリアの夏は極度の乾燥のため、植物が擦れ合う自然摩擦が原因で発火することがあると言われている。しかし自然摩擦による発火率は低く、主たる原因は人為的なものによる。

f0133814_2344595.jpg その一つが、草むらに捨てられたガラスの破片がレンズ効果を発することによる引火である。
 太陽光を虫眼鏡を通して紙に当てると熱で燃えるという、小学理科の実験と同じ原理だ。灼熱の太陽に何時間も焼かれる大地でこの原理が働けば、手の施しようのない事態になるのは明らかだ。
 火災原因の二つ目が煙草の投げ捨てである。道路に沿うように枯れ草が燃えた跡は、吸殻による引火であることを如実に物語っている。自然火災はこうして、人間の愚行と自然の力との不幸な組み合わせによって引き起こされてきた。

f0133814_2351868.jpg ところが近年、南イタリアでは人為的な理由にのみよる火災が頻発している。
 それも牧羊家や山林家が故意に火を付けるという手荒なものである。火災が生じると彼らに市から災害補助金が支給され、焼け野原になった牧草地は保護地域から外れる。するとそこにホテルや大型店舗を建設する許可が下り、以前とは桁違いの収入が得られるというのである。
 しかも山林家と植樹業者の結託により、山が燃えれば補助金が下り、業者は大規模な仕事を受注するという悪のサイクルが生まれ、数年置きに火災を起こしては利益を得ているのだ。牧羊家に関しても建設・資材業者など、開発に関わるあらゆる職種との癒着が囁かれている。シチリアの豊かな大地は、こうしてエゴイズムの巣窟と化している。

f0133814_23303378.jpg 自分の土地のみを焼き払い、厳しい生活環境が向上するのなら目を瞑ろう。だが、こんなやり方が的確にコントロールされてできるわけがない。自然の力を甘く見た独り善がりなこの方法で、多くの命が失われてきた。特に北アフリカからの季節風シロッコsciroccoが吹き荒れた今年は、火の手が一気に周り、多数の死者を出す大惨事が相次いだ。この悲惨な結果を彼らはどう償うことができるのだろうか。

 何世代にもわたって土地を守り、厳しい自然の中で家畜とともに生きてきた人々が、このような手荒な手段を思い付くとは俄かには信じ難い。背後にある黒い政治と巨大な組織の臭いを、地元の人間は嗅ぎ取っている。
 黒煙を高く上げて燃える光景を前に、怒りと空しさを覚えるのは私だけではない。「ラグーザ人の大きな恥だ」とジョヴァンニ氏はもらしていた。

人気blogランキングに参加中 どうしても伝えたかったのです!。
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by hyblaheraia | 2007-10-06 23:34 | 政治・社会 | Comments(11)

石油採掘から世界遺産を守る

 ミラノのドゥオーモの前で石油採掘調査が行われたら…。ヴェネツィアのサン・マルコ広場で石油が採掘されたら…。フィレンツェのサンタ・クローチェ教会広場で石油採掘が始まったら…。町の人々はどう反対するだろうか?

f0133814_10105889.jpg 『モンタルバーノ警部 Il commissario Montalbano』で世界的人気のシチリアの作家、アンドレーア・カミッレーリ(Andrea Camilleri)レップブリカ紙La Repubblicaに「ノート渓谷の保護 Il difesa di Val di Noto」を投稿し、こう呼びかけた。
 アメリカの石油会社パンサー・オイルPanther Oilが、世界遺産に登録されたシチリア南東部のノート渓谷一帯(ラグーザを含む)で石油発掘を行う。そのことに対する反対メッセージである。

 この騒動はそもそも2004年、当時ならびに現州知事のクッファーロがパンサー社のシチリアにおける油田調査と発掘に合意した事に端を発する。同社はシチリア州との合意に基づき、数年の調査を経て油田を掘り当て、本格的な採掘を始めるところだった。しかしそこに住民、政治家、世論から待ったがかかったのである。
 反対は至極当然。想像してみて欲しい。世界遺産の美しい町に突如巨大な採掘ドリルが突き刺さり、騒音と振動で町を揺るがし、環境汚染で住民の健康と平穏な暮らしを脅かす光景を。信じ難いことだ。我々の住む土地がここと何の縁もない外資企業に乱暴に掘り起こされることに、なぜ、という言葉しか出て来ない。


f0133814_10351786.jpg 今日はレプッブリカ紙やシチリア放送ばかりでなく、全国放送でも大々的にノート渓谷での石油採掘が撤回されたと報じている。放送中、「パンサー社は世界遺産地区における石油採掘を撤回しました!」と州知事がパラッツォ・キージ(首相官邸)での記者会見で興奮気味に、まるで自分の手柄のように発表する場面が何度も流れた。
 しかしWWFは「喜ぶのは早いAttenzione ai facili entusiasmi」と警告を発している。同社が発掘を撤回したのは、746km2の発掘予定地のわずか10パーセントに過ぎないからだ。言い換えれば、世論の関心が高かったノートの居住地、ユネスコ世界遺産の認定場所、ノート旧市街、シチリア南東部の自然保護地区での発掘を辞退しただけであり、その他の地域では予定通り行われるという意味なのだ。いかにもアメリカ的な戦略だ。

 カミッレーリの記事の最後にはインターネット署名が付されており、現時点で74,000人分の署名が集まっている。もちろん我々も参加した。
 この地域での石油発掘は環境汚染と人体への被害、さらに歴史的文化的遺産の破壊をもたらすことになる。それをどれだけ多くの人が気付くかが問題だ。カミッレーリのメッセージは多くの人にそのことを理解させた。私の愛するラグーザが10年後も100年後も同じ輝きを放っているには、我々の意識が問われている。

人気blogランキングに参加中 ラグーザを守れ!

一口メモ:「ヴァル・ディ・ノートの後期バロック様式の町々(シチリア島南東部)」として2002年に次の8つの町が世界遺産に登録。カターニア、カルタジローネ、ミリテッロ・イン・ヴァル・ディ・カターニア、ノート、パラッツォーロ・アクレイデ、ラグーザ、モディカ、シクリ。
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by hyblaheraia | 2007-06-16 10:49 | 政治・社会 | Comments(5)

政治と穏やかな生活

 ラグーザに帰ってくると、以前は駅前広場に揺れる椰子の木々が我々を迎えた。天に向かって一直線に延びた幹、太陽光を反射させる艶やかな葉の緑、たわわに実るナツメヤシ、それをついばむ野鳥の声。ああシチリアに帰ってきた、といつも思わせたあの強烈な印象を忘れることはない。

f0133814_5583882.jpg 最近、ラグーザの新市街では自然を破壊する目に余る公共工事が行われている。
 裁判所付近の一般居住地の真下に掘られた深さ10メートル以上に及ぶ穴、国鉄ラグーザ駅前広場のロータリーに突如現れた巨大隕石落下のような穴、そしてサン・ジョヴァンニ広場(カッテドラーレ広場)の無残な瓦礫の山。これ以外に、中央郵便局の下に地下駐車場を建設する動きもある。
 公共の福祉に適った、意味のある工事ならいい。だが駅前にあった長距離バス・ターミナルは町外れに移動し利便性が完全に失われ、工事現場に隣接する公立病院は、病人を搬送する救急車が大きく迂回しなければ到着できない事態に陥っている。サン・ジョヴァンニ広場も、便利な通り抜け道路を潰して無駄に拡張しているに過ぎない。クレーン車がおもちゃのミニカーに見えるほど土地をえぐり、地盤が緩んで家々が倒壊する危険はどうなるのか。
 多くの市民がこの状況に不満を抱いている。巨額の資金を費やし、正常に機能していたものを破壊してまで作り直すのはなぜか。町の景観を壊し、安全で快適だった場所に、不便さと危険のリスクを負って大工事をする必要はどこにあるのかと。そしてこれが新市長の誕生と無関係ではないことを市民は良く理解している。

f0133814_1619624.jpg 前回の市長選挙で、中道左派連合、左翼民主党のポイドマーニ氏は、僅かの票差で中道右派、フォルツァ・イタリア党のディ・パスクァーレ氏に敗れた。その原因は無所属のアレッツォ氏が獲得した3000票にあったという見方がある。彼がいなければ票が割れずに左派のポイドマーニ氏が勝利し、工事業者との癒着が見える今のラグーザはなかっただろうと。だが本当の問題はそこではない。アレッツォ氏が3000人の期待を裏切り、気まぐれで政治活動を辞めたことに人々は一層失望しているのである。

 やはり政治に巨大事業ときまぐれは付き物なのだろうか。昨日の都知事に再当選した石原氏は2016年のオリンピック招致について3兆円の経済効果を謳い、自らの30代を振り返りながら「嫌なことばかりある東京で、若い人たちに一緒に大きな夢を見ようじゃないか、と提案した」のだそうだ。が、一個人の古き良き思い出以外に、巨額の費用を使う具体的な理由はないのか。呼びかけは有難いが、我々はもはやオリンピックで夢見る世代ではない。

f0133814_5594685.jpg 一連の工事の中、サン・ジョヴァンニ広場で戦時中の防空壕が発見された。ラグーザの歴史の知られざる一ページを語る重要な記録が得られたことは不幸中の幸いであったとも言えよう。しかし地元テレビで防空壕の説明をするアレッツォ氏を、彼に一票を投じた市民はどのような思いで見たのだろうか。
 環境保全は政治の重大な使命の一つである。政治の思惑や政治家のきまぐれによってラグーザの豊かな自然と穏やかな生活が破壊されることのないよう、祈るばかりである。


写真上:サン・ジョヴァンニ広場の工事
写真中:同広場 完成予定図
写真下:同広場で発見された防空壕

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by hyblaheraia | 2007-04-09 06:54 | 政治・社会 | Comments(4)

2007国連水の日 world water day -acqua e vita- 

 何か祭りだろうか。新市街の中心、リベルタ広場(Piazza Liberta`)付近を歩いていると、白いテント、はしゃぐ子供達、大道芸人、アフリカの民族衣装の若者、長いはしごを空高く押し上げた消防車が目に留まった。

f0133814_763459.jpg 楽しげな雰囲気に誘われて入ってみると、そこは
「2007世界水の日 -水と生活- 2007 World water day -acqua e vita-」
と銘打つイベント会場だった。
 各テントではラグーザの水源と自然環境のパネル展示、地元企業による水圧機やソーラーパネルなどの製品紹介が行われていた。そこでふと我々の目を引いたのが、「水道事業民営化に対する反対署名」のテント。


f0133814_823798.jpg イタリアの水道事業に対して、政界では最近、民営化の動きが高まっている。
 思い起こせば数週間前、パレルモでこの新案に対する大きなデモがあり、シチリア中の市長たちがその先頭に立って民営化反対を訴えていた。
 「水は全市民のもの」というスローガンの下、既に民営化されたヴィテルボ市とラティーノ市(共にラツィオ州)でのサービス低下と料金増加を例に、シチリアではこうした事業がマフィアの介入を招く危険性を説くものだった。


f0133814_9212021.jpg 確かに、ラグーザには町外れの小さな集落や、コントラーダcontradaと呼ばれる馬車一台ほどの幅の田舎道がまだ存在する。
 このような所で災害により水道工事が必要になった時、民間会社は自社の利益や損失を顧みず、迅速かつ十分なサービスを提供するのだろうか。水、電気、電話、ガスは生活上不可欠であり、基本的人権と同様に市民一人一人に保障されねばならない。いかなる場所であろうと、たった一人の住人の要請であろうと、である。
 また、水道事業民営化に伴う入札の問題も、どこまで透明に行われるのか我々市民は傍観するしかないだろう。マフィアとの繋がりが囁かれるシチリア州知事の下では、彼らの資金リサイクルに利用され、その活動の温床にならないとも限らない。一ラグーザ市民として民営化反対に我々は署名した。


 前国連事務総長のコフィー・アナンは、世界で5億人が適切な衛生設備を利用できていない状況を述べ、将来は水資源のための暴力的紛争も起こり得るというメッセージを残している。
 このイベントに無邪気に参加していた子供たちが将来この問題に目覚め、ラグーザの豊かな自然と潤沢な水資源を守るよう、そして太古の歴史の息づくこの町で平和な暮らしを受け伝えていくよう、心から望んだ朝だった。
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by hyblaheraia | 2007-03-25 09:13 | 政治・社会 | Comments(1)


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


by hyblaheraia

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