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Cavolo vecchio

 ラグーザ生活5年目になるのに、未挑戦の地元野菜はまだまだ結構ある。前から気になっていたcavolo vecchio(カーヴォロ・ヴェッキオ)と、lassini(ラッスィニ)と、sanapo(サーナポ)、の違いを八百屋で聞き、3種の中で最も甘いというカーヴォロ・ヴェッキオを買ってみた。

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 ずっしり1キロで2.5ユーロ。緑と紫の小さなカブの花の部分なのだそう。だから、Cavolo vecchio古いカブ=育ち過ぎたカブの部分、という意味なのかな。

 八百屋のご夫妻とお客さんのお爺さんの猛烈なジェスチャー付き説明によると、3つの地元野菜は
 苦い順に:サーナポ→ ラッスィニ→ カーヴォロ・ヴェッキオで、
 調理法は:サーナポとラッスィニは茹でた後、水をぎゅ~っと搾るのに対し、カーヴォロ・ヴェッキオはささっと軽く切るだけ。
 どれも、オリーヴオイル、塩少々、にんにく一片(お好み)であえて食べるとのこと。

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 さて、冷蔵庫に入れておいたのに一日でつぼみが次々に開いてしまう!きれいでもったいない。

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 こちらは地元野菜全般に適用される下準備の方法。パキっと自然に折れるところで折って、後は捨てる。
 1回目は全部使ってみたけれど、本当にスジスジしていて、どうにも咀嚼できず。地元の人々の言うことはきちんと聞くものです。

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 ブロッコリーの甘さとどこかほんのり苦味があるような味は、ぜひともイカのフリットと食べたかったのに、魚屋さんにイカがないという遺憾な状況により、マリネしたサバとアジのオーブン焼き。
 翌日は、手打ちパスタと一緒に。地元野菜を買うと、一度は必ずこの手で行っているような。

 蛇足ながら、八百屋で会計を済ませて、帰ろうとした時のこと。
 あなたの旦那さん、ラグーザ人?いいえ、ナポリ人ですけど。じゃぁ、ナポリにも似たような野菜があるでしょ、ほら、何て言うんだっけ・・・、ほら・・・。えっと、フリ、フロ・・・、フリホニャエッリみたいなやつですね!ああ、そうよ!そうそう、フロnnnnnnエッリ、それそれ。
 という、外人同士の会話で盛り上がって帰宅しましたとさ。正しくは、フリアリエッリFriarielliだそうな。

似た野菜って多いですからね~。     


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by hyblaheraia | 2009-03-22 08:48 | 変わった野菜と果物 | Comments(10)

ラグーザ伝統フォカッチャ作り -折りたたみ型-

 3キロ分のセモリナ粉と6種類の具で、8人分のフォカッチャ作り。前半は半月型の包み式フォカッチャを準備し、後半は折りたたみ式3種に取り掛かる。
 生地をヴェールのように薄く薄く伸ばし、直径50センチくらいまで広げるのは、素朴な棒と板のみ。

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 ラグーザ弁でウ・ラザンニャトゥーレu lasagnatureとウ・スカンナトゥーレu scannature。
 伸ばした生地にまずはたっぷりオリーヴ・オイルを塗り、折りたたみ式3種にいざ!


サルサ salsa di pomo d'oro(トマトソース、ラグーザDOPのチーズ、バジリコ)
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生地にサルサをまんべんなく塗り、削りラグーザDOPチーズを散らす。
両端を少し折り、縦長い形を作る。
再びサルサを塗り、チーズを散らし、手前からたたむ。
2/3ほど繰り返したたんだら、反対側から1回折りたたみ、
最後はサルサでのり付けする。

これでもかと言うほどサルサを塗ってたたむので、ずっしり重い!


リコッタ&サルシッチャ ricotta e salsiccia(地元リコッタとフェンネル、唐辛子入りソーセージ)
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薄く伸ばした生地に具を塗り、サルサと同じ要領でたたむ。
けれども、こちらはより細くスマートな形に。最後も3等分にして、小さく仕上げる。

リコッタ&プレッツェーモロ ricotta e prezzemolo(生卵であえたリコッタとイタリアンパセリ)
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薄く伸ばした生地に具を塗り、サルシッチャと同じ要領で細くたたむ。
けれどもこちらは、最後に2等分。
具によって微妙な違いがあるのは、食感や具材が含む水分を考慮してのこと。奥が深いなぁ。


 そして、出来上がりは、上品に小さく切り分けて、盛り付けるがパーティー風。でもいくら小さく切っても、すごい食べ応えのドーン、ボーン、バーン!

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 この日は、さらに嬉しい悲鳴が続く。リタのお母さん手作りのラグーザ伝統菓子、パンニュッカータとフリッテッレが待機する。

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左:パンニュッカータ 上に飴がけしたビスコッティとローストアーモンドがレモンの葉に乗ってきらきらと。
右:フリッテッレ レーズンとフェンネルシードが入った揚げドーナツはしっとりむっちり。


 ラグーザの味を満喫したフォカッチャ・パーティー。この記事を書きながら、5年前のあの言葉を思い出していた。
 君は正しい所に落ちてきたね。Sei caduta al posto giusto.
 彼らの隣に住んでいなければ、ラグーザ生活はどんなに平凡だっただろう。


異文化の理解は胃文化!な~んて。     
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by hyblaheraia | 2008-12-03 00:49 | 料理 | Comments(4)

ドン・ナゾーネの愛に学ぶ

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 ずっとベッドの下で眠っていた地元のワイナリー、アヴィデ社の名品、トレ・カラーティ
 3カラットを意味するその名は、3粒のカッルーバ(イナゴマメ)がダイヤ1カラットと同じ重さであることに由来する。長い夏の眠りから目覚め、輝きを放つ瞬間を今かと待つ。

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 そのお伴をするのは、地元の名士、ドン・ナゾーネ(大鼻氏)。名誉な役目を少々緊張気味に待つ。
 しらばくすると辺りが騒がしくなってきた。そろそろ記者会見の時間だろうか。行ってみると、そこには


f0133814_22223747.jpgf0133814_22225712.jpg おお、ドン・ナゾーネ!トマトキシード(タキシード)に身をまとい、何と威厳ある姿だろう。
 
 ドン・ナゾーネ!こちらを向いてください!パシッ、カシャッ!
 フラッシュの嵐に応える我らのドン。

 一人の記者が近付き、マイクを向ける。ラグーザの生活は最近どうですか?
 うむ。ベッリッスゥムじゃ。
 おお~!bellissimo(素晴らしい)のラグーザ訛りに感嘆の声が上がる。するとその時・・・

f0133814_222431.jpgf0133814_22242130.jpg なに?これはネーロ・ダーヴォラじゃな。
 さすがは我らのドン!鋭い嗅覚で地元の味を嗅ぎ分ける。

 グラスにゆるりと注ぎ、一口含み、沈黙の一時。そして、
 うむ。ベッリスゥムじゃ。

 おお~~!ドン・ナゾーネ、Viva万歳~~!

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 なんて二人でワーワー言いながら遊び、なかなか夕食の準備が進まない。そしてテラスにバジリコを取りに行ったルカが叫ぶ。すごいよ~!早く早く!!
 夏の満月はオレンジ色の光を湛えてあの丘からゆっくりと姿を見せる。しばし見とれ、夕食の準備を忘れている二人。

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 いやいや、やらねば。慌ててパスタを整形する私。今日は迷いなくカウザネッドゥcausaneddu。小さく切ったパスタを親指の先で潰して、転がし、潰して、転がし。

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 ルカはソース担当。パスタ・アッラ・ノルマの主役はドン・ナゾーネと隠し味のネーロ・ダーヴォラ、地元の塩漬けケッパー、黒オリーヴ。茹であがったぷりんぷりん、つるんつるんのパスタを入れて、豪快にあえる。

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 仕上げに卓上でリコッタ・サラータを削る。
 今日のワイン、トレ・カラーティの素晴らしさに負けず劣らず、このノルマは歴史に残る味だった。もうこれ以上は何も足せず、引けない、絶妙のバランス!ドン・ナゾーネの愛も深く伝わってきた。
 
 そして不思議なことに、手打ちパスタはたくさん食べても胃にもたれず、良いワインは1本開けても変に身体に残らない。安心な材料で、時間をかけて作られたものは本当に身体に優しいのだろう。
 たまには手間暇かけて、良い物を、良いワインとともに食べるのはいいな。



毎日ワインとビールが1本ずつ必要なので大変です・・・。      

管理人より一言:
コメントを拝見するたび思っていたのですが、すみませ~ん、みなさん、サイトを間違えていませんか~~?!?!
23/8/08

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by hyblaheraia | 2008-08-19 23:49 | 料理 | Comments(22)

一家に一台

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 ウ・スカンナトゥーレu scannatureとウ・ラザーニャトゥーレu lasagnature。
 ラグーザ弁でこの板と棒をそう呼ぶ。名物フォカッチャトマジーノ、少し手の込んだウ・スフォッドゥも復活祭料理のインパナータ・ダニェッドゥも、普段のパスタならカウザネッドゥラヴィオリも、そしてもちろん日々の家庭パンも全てこの柔らかな板の上でこねられる。
 地元伝統料理に欠かせない一家に一台のアイテムなのである。


 それを求めて近所の農業用品店へ出掛けた。ここは日曜大工、金物、台所用品、バス用品、日用雑貨、さらに地元のお爺さん用のタスコ(コッポラ帽)など何でも揃う不思議な店だ。いつも品物を見るのが楽しくてたまらない。
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女性用室内履き(冬用)、女性用普段靴、お爺さん用普段靴、蚊避けカーテン、食器。
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ビニールホース、しめ縄、巨大バケツ(大量の塩漬けや堆肥用)。
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シチリア伝統ドローンワーク用の枠、ウ・スカンナトゥーリ、用途不明の金属棒、排水溝詰まり用のゴム。
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シャワーカーテンのレール、巨大ろうと、ビニール紐3色、ウ・ラザーニャトゥーレ、特大フォーク(大鍋用)、麺棒、それらの下にアイロン台と折りたたみ椅子。

 ウ・スカンナトゥーレは大中小3つのサイズがある。中と小は横幅が同じだが縦の長さが違ったので、作業のし易さを考えて中サイズを選んだ。26ユーロなり。

f0133814_649146.jpg 包装はこの通りシンプルで店のロゴ入り袋などはない。おじさんの読んだ新聞や雑誌でくるむだけ。ちなみにこれはシチリア新聞ラグーザ版。正統派ラグーザ人ですな。

 帰りはルカが板を担ぎ、私が棒を持って町一番の大通りを下っていく。ただでさえ目立つ我々なのに、地元伝統の台所道具などもっているものだから、道端で遊んでいるお爺さんたちの熱い視線を、背中にビッシビシ突き刺さるほど感じた。

 こうして我が家にも一台。家族が増えたような気分で、何を作ろうかと毎日楽しく考えている。
 お爺さんお婆さんになっても、これでパスタを打っているだろうな。いつものように、ああじゃないこうじゃないと二人ピリピリしながら。

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by hyblaheraia | 2008-02-23 08:11 | 料理 | Comments(4)

ホコリ頭を叩いてみれば

 散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする。
 ホコリ頭を叩いてみれば、テラス工事の音がする。
 ああ、文明開化とはほど遠い生活。もうゲホゲホでゴザイマス。床も、テーブルも、棚も、本も、ソファーも、自分も、粉だらけ。
f0133814_23363980.jpg 只今、テラス工事の真っ最中。
 長年の使用でタイルの目地にヒビや割れ目が入り、知らない間に、そこから雨水が浸透していた。さらに悪いことに、その水はテラス真下の寝室の屋根にまで浸み込み、天井にカビが発生してしまったのである。

 タイルの下地が乾くまでテラスには出られないので、この扉の中にある暖房のスイッチを入れられない状態。スイッチだけONにしておけばいいのに~、という声が聞こえてきそうだが、オイル漏れの問題が未解決のため、暖房をON,OFFするたびに、オイルタンクの元栓も開け閉めしなければならないのだ。
 ああ、厄介なことだらけ。そして一段と寒い今日この頃。

 工事にはいつものドンドリーナおじさん(勝手に命名)が来てくれた。ラグーザ弁が強くて、ルカとの会話は同じことを2~3回言わないと分かり合えないほど。でも、なぜか私とは意志の疎通が以外とスムーズ。不思議な現象発生中。

f0133814_2343625.jpgf0133814_23432684.jpg工事1日目
 テラスは4階、しかもキッチンの隣なので、作業場は自ずとキッチンとなる。
 セメントの粉やら塊が散乱し、タイルの山も。これを運び込んだドンドリーナおじさんは、無口な人なのにきついねー、ここの階段は、ともらした。あ、やっぱり。

f0133814_2345331.jpgf0133814_23511947.jpg工事2日目
 タイルの下地となるセメントと、タイルを切るアンティークな道具。紙の裁断機と同じ原理だった。
 笑顔を湛えるKerakoll氏だが、あたなを笑顔で迎えたくはないのデス。
f0133814_23533385.jpgf0133814_235494.jpgタイルを並べ始めたところ。
 ゾゾ~~、なんだか墓地みたい・・・。
 この十字型の小道具はその名もクロチェットcrocetto、小十字架。これでタイルを垂直に保つ。ちょっと不気味だけど。
f0133814_23553694.jpgf0133814_022039.jpgそしてタイルを切るチェンソー!これが極めつけだった。
 大騒音と大粉塵を撒き散らし、もはや我が家は石切り場のよう。
 一応、キッチンですが・・・。

f0133814_025797.jpg そして工事中、我が家はこうなる。工事が早く終わるかどうかは、天気次第。
 マストレッラmastrella訂正 マエストラーレmaestraleが吹けば、早く乾くんだけどね。とおじさん。
 え、何ですかマストレッラって?とルカ。
 北から来る強風だよ。冷たくて乾いているやつさ。
 あ~、いわゆる冬将軍か!と、一人納得していた私。

 やっぱりルカよりドンドリーナおじさんの言うことが分かるみたい。
 ホコリ頭を叩いてみれば、ラグーザ弁が聞こえてくるかな。

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by hyblaheraia | 2008-01-26 01:28 | 伝統・技術 | Comments(8)

心に映るもの

 心が違うとこうも違って見えるものだろうか。大学入学を祝って祖母が歌舞伎座に連れて行ってくれたのは16年前のこと。これから音楽を専門に勉強するのだから日本と西洋の文化の違いを知っておいて欲しい、という粋な誘いにより、一等席で《義経千本桜》などを鑑賞した。

f0133814_1412893.jpg しかしあの時は、実は少々退屈していた。台詞に肯きながら目を輝かす祖母の横で、昼食休憩の時間を今か今かと待ちながら。
 それがどうだろう。自らの意思で赴いた今回は、歌舞伎の世界に徹頭徹尾興奮し、拍手喝采ととともに思わず黄色い声が出そうになった。
 歌舞伎はまさにエンターテインメント、大衆芸能、ただ感情のままに素直に楽しんで良いものなのだろう。艶やかな舞台と軽やかな動きに魅了され、心臓を突くような音響効果にハラハラさせられた。
 張りつめた空気の中で幽玄の世界が開かれる能とは対極にある世界だった。

f0133814_1421111.jpg 今回は一幕見《紅葉狩》を鑑賞した。年末とあって、一幕見の入口には長蛇の列。呑気にチケット発売15分前に行ったら、立ち見になってしまった。
 それでも4階は舞台までそう遠くはない。花道が見えないのが残念だったが、オーチャード・ホールの最上階でオペラを観るよりずっと近い。お弁当の匂いが強烈に立ち込めているのも、なんだか親しみが感じられる。
 隣の年配女性とおしゃべりしたり、上演中度々オペラグラスを貸していただいたり、一人で出かけたのに想像以上にエキサイトし、立ち見席を後にする時、ああ楽しかった!と思わず歓声を漏らした。

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 遊園地で遊んだ子供のように興奮して帰宅すると、北海道の友人から新鮮なホタテウニタラコが届いていた。このウニ船が3艘、さらにこの巨大ホタテ5つ入りの皿が5皿!、天然のタラコがどっさり。ホタテもウニもタラコもラグーザにはない。久し振りに見るその姿に心底見とれ、写真を撮っていたら父に、何しているんだ!遊んでないで早く!と怒られた。まぁまぁ、いいじゃないか、これも美味しく食する行動の一つ。
f0133814_1501570.jpg 焙り用にホタテの貝も入っていて、日本酒を注いで焙った。
 日本酒とホタテのエキスがぐつぐつと煮え、潮の香りが漂う。ぷりぷりの食感に透き通った海の味。ああ、こんな味をラグーザ人にも教えてあげたい。
 キースト・エ・ブオーノ!Chisto e' buono!(これは美味しい!)と言うに違いない。

f0133814_1515194.jpg 取れたて新鮮なので刺身ももちろん。貝好きの私にこの生ホタテと紐はたまらなかった。海の優しい味と貝のとろけるような甘さ、コリコリ感。肝は再び日本酒を注いで焙るとムチムチに。
 ルカも魚介好き、このホタテにはうなる。90歳と92歳の祖母たちもニコニコ。母も弟も絶賛。そして焙りから刺身の下ろしまで誰よりも興奮した父。
 食べ終わると親指も高速スピードで回っていた。

 歌舞伎に興奮し、海の幸を堪能し、今日一日の出来事の余韻に浸りつつ思った。曇った鏡に何も映らないように、心も磨いておかなければ、様々なものが心に留まることはないのだろう。歌舞伎の面白さが心に映るのに16年かかってしまったが、それでも通り過ぎた美を拾ってきたような気がして嬉しかった。
 だから、ラグーザの学生たちに今は伝わらないことがあってもいいだろう。彼らの心の鏡の準備ができたら、きっと振り返る時が来るはずだから。ラグーザの自然とともに、それまで何年でも静かに待っていたい。そしていつか、日本文化を通して互いの心を映し合いたい。

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by hyblaheraia | 2007-12-31 07:50 | 一時帰国 | Comments(0)

ああシチリアや

 なぜだろう。我々がラグーザを発つ時は決まって晴天。雨や雷ならここから逃れたいという気にもなるが、こんな景色を見たら出発を一日延ばせば良かったと思わずにはいられない。後ろ髪を引かれる思いで、輝く里を後にするのが常なのだ。

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 真っ青な絵の具を塗ったような空に、骨の髄までじわじわと暖める太陽。その温もりに背中を押されながら、隣町コーミソComiso、ヴィットーリアVittoria、ジェーラGelaが広がる絶景を前に、直ぐに帰ってくると大地に約束する。

f0133814_246677.jpg 東を向くと、二つの山から成るモンテ・ラーチMonte Raciが、いつものようにムーロ・ア・セッコmuro a seccoの模様を輝かせている。そのふくよかな形から、ラグーザ弁でイ・ミンネi minne乳房」と呼ばれるそうだ。
 母なる大地の柔らかな胸に抱かれる想いで、そう名付けられたのだろう。なんという自然への憧憬と眼差しだろう。
 尾根の向こうに白く広がる町はキアラモンテ・グルフィChiaramonte Gulfi。遥か彼方には雪化粧のエトナ山Etnaが優しく微笑む。

 ああシチリアや、シチリアや、シチリアや。

f0133814_2464366.jpg カターニア空港に着いてチェックインを済ませると、次にすべき事は腹ごしらえだ。機内食が物足りなくて、そばつゆまで飲んだことも、隣席のサッカー関係者からポテトチップスを頂いたこともある。
 きっと気圧が低くなると胃が膨張する家系なのだろう。弟も同じ症状を持つ。
 エコノミークラス機内食不足症候群。そう名付けようか。
 空港のバールに行き、時間がなかったので野菜のグリルを頼んだ。ズッキーニ、ナス、キノコとパン、炭酸水で手早く食事。まぁこれで、ちょっとは不安が解消された。

f0133814_2465871.jpg 夕方5時半。ボーディングの時の空は、深いオレンジ色から薄青紫へと染まっていた。
 ああ、今は乗りたくない。この夕陽とともに夜に沈み、明日をシチリアで迎えたい。
 そんな気持ちにさせる空に別れを告げ、まだ日本へ発つことを実感できずにミラノへ飛ぶ。

f0133814_2472260.jpgf0133814_2473711.jpg ミラノから成田への機内食。
 ルカは事前に魚ベースの特別食を頼んでいた。ビール、白ワインと軽快に飲みながら心踊るその時を待つ。が、エコノミーの機内食がステキなわけがない。写真を撮るほどでもない。ただ、エビの大きさだけは比較しておきたかった。
 ルカのはぷりぷり、私のはミニミニ。レモンがグレープフルーツにに見えるほど。

 成田に到着すると、エコノミークラス機内食不足症候群の症状がぶり返してきた。稲荷寿司3つとお茶を買ってリムジンバスに乗り込んだ。大都市、東京の夜景を見ながら稲荷寿司をつつく。そして思わず一言。
 人がいない所にも電気が付いてるねぇ・・・。ルカは噴出していた。

 食欲も、電気の使い方も、私はすっかりシチリア式になっている。腹時計が夜中3時(イタリア時間午後7時)に鳴り、空腹に苛立ちお茶漬けをすする。無駄な電気を消しまくり、階段くらいつけなさい!と怒られる。寒い家に慣れすぎて、暖房の効いた家では気分が悪くなり、窓を開けては嫌がられる。
 なんだか早くもホームシックになりかけているみたい。

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by hyblaheraia | 2007-12-14 04:15 | 自然 | Comments(5)

タスコ -シチリア男性の象徴-

 ドゥオーモ広場に何をする訳でもなく集まる男たち。くたびれた背広と革靴、手には杖、頭には皆同じような帽子。立ち話する者もあれば、ベンチに座り潤んだ目でじっと鳩を追う者もいる。
f0133814_713927.jpg そんな映画のワンシーンに出てきそうなシチリアの老人になくてはならないのが、コッポラ帽だ。ラグーザ弁ではこれをタスコtascoと呼ぶ。
 発音はタシュコ、定冠詞を付けてウ・タシュコu tascoがより正しい。
 今日はそのタスコを買いに、近所の農業・生活洋品店に行って来た。いろいろ種類があるので店のおじさんに聞いてみると、満面の笑みでハハハ、タスコかい?と嬉しそうに説明してくれた。
 この棚にあるのが伝統的なタスコ。トップにボタンが付いたキャスケット風のものも、所謂コッポラ帽もどちらもタスコなのだそうだ。しかし・・・

f0133814_7235334.jpgf0133814_7241062.jpg右はベレー帽で
berretto。
f0133814_7243013.jpgf0133814_724523.jpgこれは帽子で
cappello。


f0133814_7252074.jpg プレゼント用なので、やはり伝統的なタスコにした。選んだのはこの2点。一目見て色が気に入ったキャスケット風は、ブルーとイエローの柔らかな風合いのチェック柄。もう一つはいかにもオーソドックスなコッポラ風でグレーの千鳥格子柄。
f0133814_730177.jpgf0133814_7302133.jpg 前部分のボタンで高さが調整でき、後ろも思った以上に深い。寒い日に広場で時間をゆったりと過ごすにはこれくらい頭を隠さないとだめなのだろう。なかなか合理的に、しかもお洒落にできているな。これを被ってマフラーを巻いたら、気分はシチリア熟年男性。

f0133814_7262931.jpg こんな粋な感じになるだろうか。
 シチリア最南端の岬、ポルトパーロのカンタストーリエ、歴史歌いcantastorie、ジュゼッペ・ペトラリトGiuseppe Petralito (1882-1980)。
 夏に旅行した時にアンティーク・ショップで彼の本を見つけた。農民の生活、祭り、戦争などの弾き語りの台本が、ポルトパーロ弁の用語解説とともに載せられている。厳しい自然と労働、貧しい生活、そこで使われた彼らの言葉。シチリア各地の方言と生活を知るときには、いつも深い尊敬の念が満ちてくる。
 歴史歌いにはやはりこのタスコがなくてはならない。シチリアの男の象徴なのだ。

f0133814_8501066.jpg シチリアへの尊敬を込めて日本へのお土産にした2つのタスコ。果たして日本人に似合うのだろうか。
 鎌倉彫の面に被せてみたが、ちょっと怖いか・・・。

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by hyblaheraia | 2007-11-28 09:01 | 伝統・技術 | Comments(14)

手作りカスタニャッチョのトルタ

 石の町では数ブロック入ると聞こえる音が変わる。パンを買いに歩いていると、向こうの角から行商の八百屋、ラッファエーレの声が聞こえてきた。ああ、来ていたのか。前は家中の窓が閉まっていても彼のハイ・テノールが聞こえたものだった。わずか80mほどの距離の引っ越しで、今では野鳥たちのさえずりが我が家を取り巻く音と変わった。
 もう少し大きな声で歌わないと、鳥の声に負けてますよ。なんて言いながら、旧近所のシニョーラたちとラッファエーレをいじめるのも買い物マナーの一つ。

f0133814_357915.jpg この日、彼は栗(castagne)を持ってきた。今しか出会えない季節の味覚に魅せられ、どうやって食べたら良いか何のアイディアもないまま、半キロ(mezzo chilo)も買ってしまった。彼の野菜の売り方は個数、あるいはキロ単位なのでドーンと買うのが流儀というもの。
 さて、夕方になるとおやつが欲しくなる我々は、この栗を使ってドルチェを作ろうと決起する。カスタニャッチョ(castagnaccio)にしようよ!というルカの喜びに満ちた声と、何よりもその爛々と輝く目に完全に折れてしまった。栗の粉を使ったケーキ、美味しいのは知っているが、生の栗を粉にすることから始めるノデスカ、ルカ先生。どうなることやら。ちょっと不安に・・・。

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 栗の皮を剥くために、まずは茹でるか一日水に漬けてから、というのが日本人の常識だが、ルカはいきなり小さなナイフで剥き始める。ええ、茹でないと剥けないでしょ!そんなことないよ簡単に剥けるよ。うっそー、あ、ほんとだ。と常識をあっけなく覆され、しこしこと皮剥きに励む。
 今度はこれを柔らかくなるまで茹で、完全に冷ましたら渋皮を取り、ボールに入れて粉になるまで潰す。ポテトマッシャーがなかったので、未使用の大事なすりこ木を差し出す。いいねーペルフェット(perfetto、パーフェクト)だよ!大和芋用なんだけどな。

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 私が栗を潰している間、ルカは卵3つの黄身を適当な料の砂糖とすり混ぜている。今度はちらし寿司用に日本から持ってきた木杓子が犠牲に・・・。
 あまりに力任せに混ぜるのを見ていられず、交代。空気を含ませながら、全体に白っぽくなるまでゆっくりすり混ぜないと!お菓子作りに熱中していた時期があるので偉そうに。
 栗の粉係に代わったルカは、目を離した隙に大量のココアを投入。うわっ、そんなに入れたらケーキがパサパサになるじゃない!いいから僕にやらせて!、カカオは水分を全部吸収しちゃうんだから!ともめあいに。その間、すりこ木はゆっくりと茶色く染まっていく・・・。

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 栗の粉も卵の黄身もなめらかになり、2つを合わせる場面。一度に入れないで、3回に分けて少しずつよ!ス・コ・シ・ズ・ツ!お菓子にも、お菓子作りにもうるさい私。でも基本に忠実にやれば、お菓子は失敗しないというもの。よしよし、と見ていたら大さじ2くらいのブランデーをドバッと。あーあ、ちょっとずつ、ってできないのかなぁ・・・。

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 次に卵の白身3つでメレンゲを作り、さっきの生地に混ぜる作業に進む。ルカのメレンゲは泡立て方が足りず、べちゃっとしている。もっとしっかり泡立てなきゃ、角が立つまで!
 ボールを取り上げ理想的なメレンゲを作ってみせる。ほら、角が立っているでしょ。悔し顔のルカは、今度はそれを生地に混ぜる。でもぐちゃぐちゃと。だめだめ、ヘラを縦にして生地を切るように、メレンゲを織り込むように!
 何かに挑戦するときは、こうしていつもピリピリしてしまう二人。でも生地を型に流し込む時は、共同作業。慎重に流し込み、生地に指を入れて味見したりして笑顔が戻る。

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 表面に松の実を散らす段階。ルカは一粒一粒、虫食いがないかチェックする。こういうところは丁寧なのね、と感心して見ていると、突如、どばっ!えぇーっ、なんて事を!松の実でかわいく模様を付けたかったのに・・・。

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 まぁ、何はともあれ、ここまで無事作業が進み、オーブンに入れられた。やれやれ。200度で45分、その間に散らかったキッチンを片付け、テラスに出て二人で月を見上げた。
 眩しいほど白く輝く半月と、その周りを駆け巡るように変化していく高い雲。さっきまでの意地の張り合いも忘れ、光と影の交替に見入っていた。年を取るまで毎日、毎晩、こういう時間を大切にしていきたい。そう思いながら、風に運ばれる甘い香りを嗅いでいた。

f0133814_5493022.jpg キッチンに戻ると焼き具合が思いの他早かったので、160度に温度を下げ、合計45分で完成となった。家中が栗とカカオの甘く香ばしい香りに包まれ、明日の朝、濃いミルクティーと食べるのが待ち遠しかった。
 こんな素朴な「松の実散らし」も、まぁよしとしよう。


f0133814_5433823.jpg さて翌朝、キッチンに行くと既に4分の1がなくなっていた。よほど美味しかったのだろう。
 ミルクティーを用意し、どれどれ、と一口。ふんわりとした生地に、栗のまろやかさとカカオの濃くが溶け合い、優しい味のケーキに仕上がっていた。想像以上の出来。ちょっと手を加えたら売物にもなるんじゃないか、と満足気に食べていたら私も4分の1を平らげていた。
 そこへ嬉しそうな顔のルカが現れる。
 これにブランデーのシロップをかけて、パンナ(生クリーム)を付けて食べたら美味しいよ!心躍る提案に即肯く私。こうして我々のドルチェは、日に日にグレードアップ、いやグラッソ(脂肪分)・アップしていくのである。

 ドルチェを作って美味しくできた度に二人で言う。ラッファエーレのように行商で売ったらどうだろう。ドルチェを一杯に乗せたリアカーを引いて、ラグーザ弁で「アッルーヴァ、ウ・カスタニャッチュ~、マンチャマンチャ~!(カスタニャッチョが来たよ、お食べお食べ)」と叫び歌いながら。
 我々の老後は明るい。

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by hyblaheraia | 2007-11-02 08:48 | 菓子 | Comments(21)

行商の叫び声

 ウ・ポモローリ、チプッドゥ、ピーラ、プーマ~~!ア・メランツァーナ、イククッツィ、ピエルスィキ~~~~!!(U pomorori, cipuddu, pira, puma! A melanzana, icucuzzi, piersichi!)
f0133814_6284299.jpg ラグーザ弁でトマト、玉葱、洋梨、りんご!ナス、ズッキーニ、桃!と叫んでいるのは、私の贔屓(ひいき)にする行商の八百屋、ラッファエーレ(Sig. Raffaele Mezzasalma)だ。
 3大テノール顔負けのリリコ・スピントで、今日仕入れた旬の野菜と果物を叫び歌いながら、毎週火、木、金、土の朝11時半頃に我が家の近くを軽トラックで移動する。
 愛車は緑色の幌のついた軽トラック。そこに人参、ズッキーニ、ナス、ピーマン、玉葱、インゲン、赤インゲン(ボルロッティ)、地元の長ズッキーニ、ソース用トマト(丸形)、サラダ用トマト(細長)、りんご、桃、ネクタリン、すもも、白ぶどう、レモン、バナナ、塩、にんにく、上段にはイタリアンパセリ、テネルーム(地元の長ズッキーニの蔓)、サラダ菜、ロメイン・レタスなどが所狭しと積まれている。

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 レタスやパセリ、バナナなどは1個単位で売られるが、その他は計りに乗せ、分銅を使ってキロ単位で売る。値段はいたって良心的。そして新鮮さが売りだ。特別な買い物をしない限り、大抵は2~3ユーロほどで済む。欲しい野菜はあらかじめ予約もできるので、私は6月にシチリアの野生オレガノoriganoを予約し、自宅で乾燥させ、手もみする。今年はまだ干したままだが、そろそろ始めよう。

 ラッファエーレの行商の叫び声は旋律的である。音楽学的に解釈するならば、モルデント(装飾音型)で始まり、2度音程を重ねながら5度上昇し最後に1オクターヴ一気に下降するというもの(ラ♯シドーシ、レ♭ード、ミ♭ーレ、ミ~ミ!)。2回目のフレーズは少々レチタティーヴォ的になり、最後に彼の声量が爆発する(ドドレ♭ード、レレミ♭ーレ、ミ~ミー!)。
 お祖父さんの代から3代に渡ってメッツァサルマ家はこの歌い方を守ってきた。一家のブランドとも言えるこのメロディーが聴こえると、どこからともなくシニョーラたちが財布を手に現れる。ラグーザ弁で和気藹々と買い物をしていると、時に「ラッフィエーッ!(南の訛り)人参とレタスをちょうだい~!」と叫ぶ声が降ってくる。見上げると、足の悪い老女がバルコニーから身を乗り出し注文している。「はい、ただ今!・・・・・・シニョーラ・トゥンミノ、2.5ユーロです!」と彼が言うなり、その金額の入った編み籠が紐でするすると下ろされ、そこに注文の野菜が入れられる。重い時は持ち上げられないので、ラッファエーレが玄関先に置いておくこともある。こういう買い物の仕方は、イタリアでももはや田舎でしか見られないそうだ。

f0133814_8181287.jpg 彼の心の行き届いた商売振りは見ていて本当に気持ちがいい。老人の買い物には必ず手を引いて玄関先まで送り届け、車椅子の老女が住む2階の家には、階段を上がって御用聞きをする。もちろん頼まれた品物を、再び2階まできちんと届ける。
 地元の老人たちは一代目の時からこの八百屋を贔屓にし、ラッファエーレを子供の時から知っている。だから一人暮らしでも安心して御用聞きを頼めるのである。こうした商人と客との家族のような付き合いは、行商文化ならではだろう。
(写真:野菜を家まで届けるラッファエーレ。当のお婆さん[右]はまだおしゃべりをしている。)

 シチリアでは行商をヴァンニャトゥーリvanniaturiと呼ぶ。八百屋ばかりでなく魚屋包丁研ぎ屋葬式の告知屋などもいたそうだ。この辺ではパン屋玉葱売り(春のみ)、ジャガイモとソラマメ売り(春のみ)、ホウキ売り絨毯売り洗剤売りなども通る。毎朝10時半に来るパン屋のおじさんは、もはや声が出ないのか、2度のクラクションで合図をするので少々残念でもある。
 行商人の間では、通り道と時間帯に関して商売のテリトリーが厳格に定められている。同業者がばったり出くわすことは絶対になく、突然、売る場所が変わるということもない。客の方は彼らの通る時間とルートを熟知しているので、それに合わせて午前中を過ごす。パン屋が来る時間には、玄関前で待つ老人もいる。こういう風景を見ていると、ラグーザの穏やかな生活には常に変わらぬ行商が不可欠だということを実感する。

 しかし最近は行商に陰りがさしかかり始めている。ラグーザ郊外に巨大なショッピング・モールが相次いで立てられ、今も建設ラッシュは止まらない。こうした大店舗の出現で、昔ながらの個人商店が打撃を受けるのは当然だが、それ以上に店を持たない行商人たちは次第に居場所を失っていくことになる。
 ラッファエーレの声が今日も石畳の静かな町並みに響いている。今は廃れ行くシチリア行商文化の最後の灯火にならないことを、心から願うばかりだ。
ラッファエーレの歌を聴いてみる♪(2007年春録音分)

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by hyblaheraia | 2007-07-19 09:13 | 伝統・技術 | Comments(6)


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


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