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ラグーザの暖房事情

 ラグーザの長い冬が始まった。これから本格的な春の声を聴くまで、植物も人間も息を潜め、体力の温存期間に入っていく。生命力が爆発する夏に向けて、生きとし生ける物が経ねばならぬ一年のリズムである。

ラグーザの暖房事情_f0133814_732778.jpg 今年は寒さの訪れがいつになく早い。数日前に最低気温が3度にまで下がり、霰(あられ)も降った。
 その叩きつける勢いでバジリコの葉は破れ、ジャスミンは引きちぎられ、多肉植物の表面には傷が残った。
 雪になるかと心配したが、大雨と落雷、最後には晴天と目まぐるしく天気が変わった。
 そしてどんな時にも、ただ寒い。寒かった。
 
ラグーザの暖房事情_f0133814_7403042.jpgラグーザの暖房事情_f0133814_7405251.jpg
 翌日は正午でキッチンが11.6度。吐く息が白い。冷蔵庫並みの寒さだ。フリースは既に10月から、今はタイツに厚編みの靴下を重ね、裏が起毛のズボンをはき、上は4枚重ね着している。まだ11月なのに、普段の1~2月の重装備。
 パソコンや机に向かっていると、寒さで集中できなくなる。そんな時は作業を中断して南側の窓に椅子を置き、日光浴をする。太陽の光は凄い。ただ浴びるだけで、じわじわと温まってくるのだから。でも夜はどうにもならない。そろそろ暖房が必要か、と考える。が、ちょっと面倒なのだ、これが。

ラグーザの暖房事情_f0133814_7292940.jpgラグーザの暖房事情_f0133814_7281584.jpg 我が家の暖房の中枢はテラスの一角にある。この金の扉(銀の棒にも注目)を開けると、中に巨大なガソリン・タンクラジエーターがあり、ガソリンの燃焼熱で室内の暖房器具に湯を送り込むというシステム。
 ラグーザでは一般的なガスオーリオ式というものだが、ガソリンの購入と注入が大変なのだ。

ラグーザの暖房事情_f0133814_729570.jpgラグーザの暖房事情_f0133814_7294551.jpg まずはガソリン会社に注入日の電話予約をする。我が家は細い一方通行の道に面しているので、ガソリン車は人の往来の少ない早朝7時にやって来る。
 長いホースを地上から4階(イタリア式の3階)までロープで引き上げ、写真左のボルトを開け、そこから注入するのだ。高所の作業なので、予約した日が雨だと延期になる。
 ガソリンの残量を測るには、銀の棒(写真上の上:金の扉に立てかけた)をボルトの奥までしっかり差し込み、取り出す。棒の先何cmがオイルで濡れているかで残量を読むのだ。こんな原始的な方法をどこの家でもやっている。
 スイッチの確認も目と耳に頼る。ガソリンを燃やすと、ゴーッという音とともに煙が出るので、この音と煙を確認してから家に入る。不完全燃焼が起きては恐ろしい。いや、キッチン横にガソリンが300リットルもあること自体が恐ろしい。

ラグーザの暖房事情_f0133814_942343.jpg さて、こうしてガソリンを燃やすと、家の中ではこのテルモシフォーネtermosifoneに湯が通って来る。触れられないほど熱いのならいいが、触れられてしまう程度の熱さ。これが各部屋にあり、2時間付けて16~17度が精一杯だ。
 しかし人間の身体は幸せなことに、2、3度上がるだけで暖かくなったと感じるものなのだ。真冬の室内10度を体験すると、今日は12度もある!などと言うようにさえなる。我々にとっては15度息が白くならない暖かい家。十分幸せなのである。
 ナポリの親戚の家で、18度しかないから暖房をつけよう、という声を聞いたときに、我々がいかにストイックな暮らしをしているかを笑った。真冬はここに二人で張り付いて、我慢大会を実施している。
 

ラグーザの暖房事情_f0133814_7411329.jpg 今年はまだガソリンを買っていないので、暖房も点けていない。
 寒い夜は、ルカがこんなものを作ってくれる。りんごを細く切り、シナモン、クローブ、生姜、蜂蜜で煮込んだもの。身体が芯から暖まる。

ラグーザの暖房事情_f0133814_7413527.jpg それでも寝る時は足が寒い。とうとう湯たんぽも先週から登場した。電気あんかを日本から持ってきているが、変圧器を通すと電気を大いに消費すると聞いたのでやめてしまった。我が家の湯沸かし器は電気式なので、電気代を押さえる努力は惜しまないのだ。
 最近は、昼の勉強にも湯たんぽを抱えている。

 こんな暮らしをしていると、リモコン一つでヒーターを点けていた日本の生活が今では罪深いものに感じてしまう。電気もガスも、湯も水も、エネルギーと人との関係がここでは全く違う。
 電気は二人がいる部屋だけ、湯沸かし器は就寝前に点け、翌朝シャワーを浴びたら消す。水は一日一定量、タンクへの給水式なので無駄使いは絶対にしない。都市ガスは通っていないのでボンベを買って大事に使う。だから日本から来客があると、とにかく電気を消しまくり、水を無駄にしないよう力説している。
 それでも家族が来た時は、電気代が普段の約1.5倍になり、水が底を突いた日もあった。そんな「シチリアの山奥で、最小限の水と最小限のエネルギーで暮らしている」娘夫婦を、両親は驚きつつも感心していた。

 家に籠もりがちの冬、いかにエネルギーを無駄にせず生活するかが、我々デスクワーク夫婦の課題である。寒さ解消方法としてはりんご煮、湯たんぽ以外に、CDを聴きながら歌う、それでもダメなら音楽に合わせて激しく踊る、という自己発電を行う。
 ただ、クリーンなエネルギーであるはずなのに、踊ると埃がたってクリーンではなくなるのが難点ではある・・・か・・・。

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# by hyblaheraia | 2007-11-20 12:11 | 生活

手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-

 それは繰り返しの魔力なのかもしれない。どんなに美味しいものでも毎日食べると飽きが来る。それでも食べ続けていると飽きが慣れに変わる。それでもなおかつ食べ続けると、慣れは癖になる。そんな過程を我々は身体で感じていた。
手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0531285.jpg
 先日の揚げ菓子祭りの最中、あれだけ食べ続けたにもかかわらず、なぜかまた食べたくなってしまったのである、この油っぽい菓子を。そして、ああ遂に、作ってしまった。何となく和な雰囲気に出来上がったので、ラグーザ模様の箸を添えて。

手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_031193.jpg 実はバールへ買いにいったのだが、揚げ菓子はもう作られていなかった。祭りのための菓子だからだそうだ。ああ残念、と言いながらも我々は巨大なプロフィッテロールを見つけ、迷わず2つ買う。

 レジでバールのおじさんは揚げ菓子の作り方を懇切丁寧に教えてくれた。パン屋のシニョーラにも、簡単だから自分で作りなさい、と言われた。確かに、売られていないのなら作るしかない。自分で作って美味しく食べよう。働かざるもの食うべからず!ちょっと違うが、そんな感じに盛り上がっていた。

手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0315035.jpg おじさんに言われた材料と分量は以下の通り。

小麦粉 500g
砂糖  25g
油(コーン油かオリーヴ・オイル)  25g
ビール酵母 1/2
レーズン  100g(前日にリキュールに漬けて柔らかく戻しておく)
フィノキェット(フェンネルシード)  10g
塩 一つまみ

 この4分の1量で作り始める。手前にある小さな四角いものがビール酵母。

手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0401662.jpg手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0444116.jpg フィノキェットfinocchiettoは野生のものじゃないとだめだよ。おじさんは口を酸っぱくして何度も言っていた。
 ラグーザではこれをソーセージ、サラミ、鰯のパスタ、クッキー、パンなどに入れてよく使う。八百屋などで量り売りしてくれるので、瓶に入れて保管しておけば長持ちする。セロリのような爽やかな青さに、ほんのりとした甘みがある不思議な味。昔はどちらかと言うと嫌いな味だったが、4年ここに住むうちに、フィノキェットなしのソーセージなんて考えられないほどになった。慣れというのは癖になるのだ、本当に。


手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0322373.jpg手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0325761.jpg
 さて、ビール酵母をぬるま湯で溶かし、小麦粉に混ぜる。全体に混ざったら、さらにぬるま湯を少しずつ足し、ドロドロの状態を作る。それに埃が入らないよう蓋をして2倍に膨らむまで2時間ほど置いておく。家中が酵母の匂いに包まれ、ワクワクしてくる。
手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0333443.jpg手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0465180.jpg
 室内が寒かったので、3時間以上してようやく、ぷつぷつと泡が出てきた。2倍にはなっていないが、まぁ良いことに。ここに水気を切ったレーズンとフィノキェットを入れて混ぜる。
 ああ、あの匂いだ。習慣になったあの味が、もうすぐ再現される期待に胸が躍る。
手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0472880.jpg手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0484911.jpg
 油を用意し、後は天ぷらと同じ要領。生地を少し垂らして、シュッ!という音と共に上がって来るまで油が熱くなったら、軽く一さじ流し込む。生地がスプーンにくっ付いているので、指で剥がし取るように。バールのおじさんのジェスチャーを思い出しつつ。
手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0492750.jpg手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_0501861.jpg
 4分の1量で作ったのにこんなに出来てしまった。これを何日間食べ続けるのだろう。そんな心配を他所に、ルカの魔の手が忍び寄る。揚げたてアツアツを頬張り、気付くと随分パレットに隙間が空いている。目を離した隙に、今度は砂糖をまぶしてキッチンペーパーに乗せて逃げるところだった。ちょっとー!何やってるの!!と追いかけ、一緒に食べてしまったり。
 以外と早くなくなりそうだな。もう明日にはないかも。

手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-_f0133814_3115165.jpg もう少し小麦粉が多い方が好みだったが、最初にしてはまずまずの出来か。
 思わずVサインが出てしまうような。あ、フリッテッロ君もイェーイ!

 思ったより簡単、材料費も安く(3ユーロくらい)、手作り菓子の楽しさと温もりが詰まったラグーザ伝統のフリッテッレ。今度は、これのおつまみヴァージョンをやろう、刻みエビ、刻み海苔を入れて!と、既に盛り上がっている。
 我々の揚げ菓子祭り、ラグーザ新市街にて年中開催!。

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お知らせ:2007年11月19日(月)、1:00~12:00頃、システムメンテナンスのためエクサイト・ブログへのアクセスができなくなるそうです。
# by hyblaheraia | 2007-11-18 03:58 | 菓子

過去と現在を繋ぐもの -gratitudine(感謝)-

 百という快い響きとともに、遠く各地から温かい言葉が届いた。持ち得る全ての感情でその一つ一つを抱擁し、感謝を伝えたい。高い空を見上げながら、きっと100歳の誕生日を迎える日も、こんな気持ちになるのかもしれない、と考えていた。
過去と現在を繋ぐもの -gratitudine(感謝)-_f0133814_384885.jpg
 冷たい風が吹くこの日、空にはすじ雲が幾重にも伸びていた。この逸る気持ちを届けてくれるだろうか。

過去と現在を繋ぐもの -gratitudine(感謝)-_f0133814_37253.jpg エッチェ・オーモ教会Chiesa di Ecce Homoの周りでも、すじ雲が冷風に巻かれていた。氷の薄い膜が張ったかのように、普段とは違った凛とした表情を見せる風景。雪女を思わせる他言無用の美しさ。人に話せば、命を奪いにくるか姿を眩ます美女を、我々はただ遠くから見つめるしかない。
 上空の風はよほど強いのだろう。薄い白線は見る見るうちに姿を変え、北風に乗って教会の背後から迫り来た。
 ああ、この流転する空。もはや冬なのだ。これから雲観察の季節になる。

 すじ雲は正式には巻雲(けんうん)と呼ばれる。上空5000~13000mに現れ、小さな氷の粒でできているそうだ。国際気象機関が規定した10種の基本雲形のうち、これは最も高い所に現れる雲と分類される。空の高い所から順に層雲、層雲、層雲に大別すると、すじ雲(巻雲)とうろこ雲(巻積雲)、先日の天の輪を生じさせたうす雲(巻層雲)は、最も高い上層雲のグループに相当するのだそうだ。
 それだけ最近の雲は高い所にあるということだ。
過去と現在を繋ぐもの -gratitudine(感謝)-_f0133814_310288.jpg
 夕方には大鷲が北東の空に舞っていた。家々の向こうに見える丘の町、パラッツォーロ・アクレイデPalazzolo Acreideからゆったりと羽ばたいて来たかのように。
 先史時代からの住居跡にシークリ人が住み、紀元前664年のコリント系シラクーザ人によってアクライAkraiと名付けられたその一帯は、ローマ、ビザンチン、アラブ、ノルマンと度重なる侵略を受け、町の名前もバランスルBalansùl、プラチェオルムPlaceolumもしくはPalatioliパラティオーリ、そしてパラッツォーロPalazzoloと変わっていった。1862年に当時の名に本来の名が加わり、パラッツォーロ・アクレイデとなるに至る。
 シチリアの町にはどこにでもある複雑な歴史と町の名前の変遷。東の空一杯に羽ばたく大鷲の姿に、3000年に渡る歴史を思う。ここラグーザもかつてはヒブラ・ヘライアHybla Heraiaと呼ばれていたのだ。

過去と現在を繋ぐもの -gratitudine(感謝)-_f0133814_31245.jpg 10分後の空にあの雄々しい大鷲の姿はなかった。強風の中、翼が次第に捥ぎ取られていったのだ。
 しかし同じ空で一羽の無垢な鳩が、生命溢れる飛翔を見せる。
 過去と現在との出会いは、こうして日々、どこかで、人知れず起き、過去は現在へと連れ出されていくのだろう。

 モンテ・ラーチMonte Raciの景色に言葉にならない何かを感じていたのは、私とヒブラ・ヘライアとの知らぬ間の出会いがあったからだ。その出会いに感謝し、この歴史と空間に流れる美しき魂を伝えていこう。そしてその美しさに共感してくれる全ての人々に、感謝の気持ちを伝えていこう。
 
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# by hyblaheraia | 2007-11-16 08:02 | 自然

百のことばで綴るラグーザ -ブログ100回記念-

 4年前の11月初旬。大学赴任初の授業を終え、宿舎に戻る途中のルカは、興奮気味に携帯から日本に電話をかけきた。すごくきれいな町、でも階段だらけ!道に迷ったみたいだけれど尋ねる人もいない。この道かな、あ行き止まりだ!そんな声を聞きながら、ラグーザとは一体どんな所かと心配した。
百のことばで綴るラグーザ -ブログ100回記念-_f0133814_22493199.jpg が、まさに聞は一見に如かず。来て見ると一瞬にしてこの町の虜になった。何百件もの家々が渦巻状に寄せ合う中世の町並み、そこにバロックの華やかな教会がそびえ立ち、何百段もの階段が新市街へと続く。初冬だというのに青々と茂る椰子の木と燃えるような赤紫のブーゲンビリア、バルコニーの色採り採りの草花が、百花繚乱という言葉を思い出させた。辺りには野鳥の囀りと、一日に数百回も打ち鳴らされる教会の鐘が明るく響き、燦々と降り注ぐ太陽と青空が広がっていた。しかし数時間後には、百雷が一度に落ちるような激しい天候に見舞われることもあった。そんなラグーザの百様の息吹は、今も変わらず私の心に染み入ってくる。

 その後ここに住み始め、まず美食文化に百パーセントはまってしまった。何百キロカロリーあるかもしれないカンノーリをはじめに、カッサータ、フォカッチャ、サルシッチャ、アランチーニ、チーズやサラミ、ラヴィオリ、揚げ菓子、伝統菓子の数々、とどれも大百貫になりそうなものばかり。そしてワインだ。シチリアの血であるネーロ・ダーヴォラと、その涙であるインゾーリアは疲れた身体にも健康なそれにも良く沁み渡る。まさに酒は百薬の長である。
 地元の力強い野菜にも驚かされた。色濃く大振りの百生りの野菜たち、冬のミネストローネを彩る百穀、どんな季節にも切れることのない百花の宋(主要な果物)。それを持ってくる行商のラッファエーレの歌声は、何百万ものファンを持った亡きパヴァロッティにも聴かせたかったほどだ。次第に消え行く行商の歌声に、百感の思いを寄せるのは私だけではないだろう。

百のことばで綴るラグーザ -ブログ100回記念-_f0133814_0585042.jpg さらに雄大な自然に感服の毎日である。夜空を仰ぎながら、何百もの輝きの中に人工衛星を追い、流れ星や天の輪に出会い、遠くの雷光を見つめる時間は無になる自分を知る。雲の形と動き、空色の移り変わり、丘の植物にことのほか季節感を強く感じる今日この頃。自然の百態を愛でつつ、一年のリズムを肌で感じている。
 豊かな自然には野鳥も虫たちも共存する。見たこともない虫に刺されて百憂の思いだった日もあった。カルデッリーニやチンチャレッラ、メルロたちの子育てを興奮気味に観察し、雨の日はカタツムリを数えるのも、子供の頃の自然との戯れが原点なのだろう。三つ子の魂まで、あるいは雀まで踊りを忘れず、とは良く言ったものだ。ちなみに、盆踊りも私を熱狂させるアイテムの一つである。そしてラグーザの祭りもまた然りである。

百のことばで綴るラグーザ -ブログ100回記念-_f0133814_115090.jpg 彩色豊かなシチリアの伝統荷馬車を引く百万馬力の馬たち。百卉(ひゃっき、様々な草花)で彩られる聖人像の御輿。地元伝統料理と菓子の屋が並び、町全体がカラットの宝石のように輝く。こうした喜びの雰囲気が百代にわたって百黎(多くの民)の魂を熱くしてきたのだろう。
 ラグーザの美しい自然と伝統文化が、未来永劫続いていくことを願い、百害あって一利なしの公共工事と石油採掘には一市民として断固戦って行きたいと思うのだ。

 今年は野鳥、流れ星、人工衛星だけでなくUFOでも随分興奮した。シチリアの町、カロニーアで起きる謎の現象、そして百鬼夜行する謎の物体は、百里之命(一国の政治や政令)によって科学的な調査が行われ、宇宙人騒動が巻き起こった。百家争鳴(多くの学者が自由に論争すること)の結果だからもはや受け止めるしかない。ラグーザにUFOが来たら…、宇宙人にインタビューして原稿と写真を放送局に高い値で売りつけ、百万長者になれるだろうか。
 そう言えば、江戸時代に流行した「妖怪カルタ」を先日、授業でやって大いに盛り上がった。百人一首が手元になかったので、「耳なし芳一」を語って恐怖を募らせた後、スリル満点に遊んだ。最終回は「日本人と迷信」というリーディングの後に、実際に手相もやった。中という程ではなかったが、ある男子学生に彼女がいないことをピタリ言い当てたとき、これはイケると思った。老後は歳までイブラで手相占いでもしてみるか。

百のことばで綴るラグーザ -ブログ100回記念-_f0133814_2243536.jpg そんなラグーザで、具体的な年の計(将来の長い間の計画)は持たず、その日その日を楽しく過ごしている。地球の百八十度裏側の家族は、ハラハラして見ていることはも承知だが、意外と何とかなるものなのだ。
 川海を学びて海に至る
 (百川学海而至于海)
 多くの川が絶えず海を目指して流れ、ついには海に注ぐように、人も努力し続ければ目的に達し得る、ということだそうだ。
 ルカも私も互いに研究を地道に続け、誠実に生きていけば、百禄(多くの幸福)の人生を送ることができるだろうか。百里を行く者は九十を半ばとす…、と言うなら今は何里くらいを歩いているのか。最近生命線が手の甲にまで進出しているので、三百歳の人生はまだ始まったばかりかもしれない。

 本ブログ回目の記事となる今回、「ということば」でラグーザ生活を綴ってみた。いったい何回、を使ったのかな。ヒャッヒャッヒャッ、クー

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# by hyblaheraia | 2007-11-13 21:19 | ブログ・・・周年とゲーム

揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-

 夫婦は似てくるとは良く言ったものだが、まさにその通りである。昨日我々は同じ店で、同じものを買って来てしまった。
揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_20415930.jpg 左は私、右はルカが買って来たもの。
 良く知る店なのに、おじさんはなぜ何も言ってくれなかったのだろう?量が足りなくて、旦那が買いに走らされたと思ったのだろうか。
 
揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_20423233.jpg 包みの中身は揚げ菓子、フリッテッレfrittelleである。小さい揚げドーナツのようなもので、この店では3種類作られている。
 干し葡萄とフィノケット(finochietto、フェンネルシード)入りの伝統的な味の他、リコッタ・チーズクレーマ・ビアンカと呼ばれるクリームを詰めたもの、の3種。チョコチップ入りを作る店もある。この時期、ラグーザ中の菓子店、パン屋ではこの揚げ菓子が必ず売られている。

揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_20413575.jpg というのも、11月8日からラグーザの新市街中心部では、揚げ菓子祭りSagra della frittellaが開かれているためだ。
 毎年、サン・マルティーノ(聖マルティヌス)を記念する11月11日に合わせて行われるこの祭りは、今年で9回目になる。新しいワインと揚げ菓子、チーズ、サラミ、蜂蜜などの地元物産のほか、多国籍な品々の屋台が並ぶ。
 サン・ジョヴァンニ広場の仮設舞台ではブラス・バンド演奏が行われ、子供用トランポリンなどもあり、ちょっとした盛り上がりを見せる。

 
揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_2053386.jpg 今年は、作りたてのリコッタ(ricotta calda、リコッタ・カルダ)の実演販売が行われると聞き、近所の友人と7時半頃行ってみた。雨がぱらつき強風にもかかわらず、リコッタ・カルダの屋台には人が集まり、賑わっている。

揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_20572516.jpg揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_20575134.jpg
 テントの中では巨大な鍋で400リットルのリコッタ・チーズが沸々と煮られていた。チーズを作る時に出来た乳清を再び煮て(ri・cotta、再び煮た、の意味)、分離して浮き上がってきたものをすくったのが、リコッタ・チーズなのだそうだ。脂肪分が少なく、ほのかな甘みとさっぱりとした味が特徴で、料理にも菓子にも使われるシチリアの代名詞的なチーズだ。
 こうして竹の長い棒で焦げ付かないようゆっくりかき混ぜる。昔は各家庭で木を燃やし銅鍋を使ってリコッタ・チーズを作ったそう。ガスでは一気に熱くなってしまうが、木は緩やかに温まり、銅の鍋は火の回りが一定で焦げ付きにくかった、とシニョーラたちが懐かしそうに話していた。こういう地元の人々の何気ない会話を聞くのも、祭りの醍醐味の一つだろう。

揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_20583381.jpg おじさんにあと30分はかかると言われ、他の屋台を見に行くことにした。残念なことに雨と強風で次々に店終いとなり、ここだけが開いていた。
 シチリアの蜂蜜がずらり。サートゥラと呼ばれるタイム、ユーカリ、オレンジ、ミッレ・フィオーリ(いろいろな花)、栗の花の蜂蜜の他に、苺味などもあり興味深かった。スプーンにすくって味見もさせてくれる。
 揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_20585983.jpg揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_20592376.jpg
 さらにナチュラル石鹸もローヤルゼリー、プロポリス、アロエ、オリーヴ、赤ワイン、といかにも身体に良さそうなものばかり。その中で目を引いたのが、ロバのミルクの石鹸。これはちょっと想像できない。ロバのおっとりした性格を受けて、精神安定作用がありそう。パッケージもかわいい。

揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_212065.jpg さて、これは屋台の食券。出来たてのリコッタ・チーズ、揚げ菓子、パン、赤ワイン一杯を紙盆に乗せたセットが4ユーロ。揚げ菓子を既に食べてきた我々は、揚げ菓子抜きで3ユーロのチケットを買った。
 ところが、おしゃべりしながらのんびりと待っていると、事件が起きた。突然ガスの火が止まり、プラスティックが溶けるような臭い匂いが立ち込めたのである。鍋の近くにいた人々は小走りで遠のき、小パニック状態。
 風にあおられた火がガスボンベのチューブを溶かしたのだ。強火でリコッタ・チーズを急いで作ろうとしたのが災いしたようだ。チューブの焦げた部分を切り落とし、再び煮沸開始。しばらく臭い匂いは充満していた。

揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_2134921.jpg 何はともあれ出来立てリコッタ・チーズを待つこと1時間半、ようやく完成。人々の熱い視線の中、リコッタ・セットを用意する若者も緊張気味。
 テーブル奥にある小さな樽は、ラグーザ弁ではカッラティエッドゥcarratiedduと言う。昔、各家庭ではテーブルに置いてワインを注いだそうだ。我が家にも同じものがあり、友人が来た時に使うと喜ばれる。

揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_2141153.jpg この紙盆に赤ワイン、ネーロ・ダーヴォラが一杯付いてセット完成。そんなに難しくないはずだが、慌ててなかなかセットが揃わない。あちらこちらから、2セットまだ?!、さっきから頼んでいるんだけど!と声が上がる。

揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_2143718.jpg 屋台の横に大きなテーブルが3つ用意され、そこで食べる人々もいたが、我々は家に持ち帰り。歩いて3分、家に着いてもまだリコッタは温かかった。
 その味はと言うと、まるでおぼろ豆腐。見た目ばかりでなくそのふわふわ感、そしてほんのり甘いような、ちょっと塩気があるようなミルクの味。
 3ユーロあればリコッタの小バスケットがまるまる一つ買えたわね、と友人の母上が漏らした一言を思い出し、地元の人もそう思うのかと安心した。確かにちょっと高い。が、お祭りだから目を瞑ろう。
揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-_f0133814_2161784.jpg リコッタの屋台の正面のバールのシニョーラが、揚げ菓子をプレゼントしてくれた。我が家にはまだたくさんあるので心の中で悲鳴を上げつつも有難くいただいて、今日の晩ご飯はワインと揚げ菓子になるだろう、とルカと予想した通りの展開になっていた。

 揚げ菓子祭りは、日曜日まで続く。そして我々のかぼちゃな日々とともに、揚げ菓子な日々もまだまだ続くのである。
 それなのに明日のかぼちゃ料理と、明日行く揚げ菓子の店を考えているのは、夫婦共々同じ。夫婦は似てくる、本当に。

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揚げ菓子で太りそう・・・!。

# by hyblaheraia | 2007-11-11 01:58 | 祭り


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


by hyblaheraia

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2013年11月、共著出版



2009年4月、共著出版



1999年3月、共著出版


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