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疾走する時間と妙なる音

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 春の光を受けて一斉に咲き乱れる路傍の黄色。手を伸ばせばすぐ届く距離にあるのに、疾走する車からその姿形は見えず、色彩だけが視界に溢れ、慌ただしくこぼれていく。見ようとすればするほど、焦燥感と色の飽和に追い立てられるかのように。

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 対照的に、ほんの少し離れたところを伴走する石垣からは、なんという安堵感とゆったりとしたリズムの連なりを感じることか。春の風を浴びながら聴くのは、

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一つ一つの石が繰り出す小刻みな音と、その連続が作り出す自由なうねりと流れ。必死に追わずとも 見ているだけで何かを語りかけてくる。

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 途方もない忍耐と時間を費やして積まれてきたムーロ・ア・セッコ muro a secco (乾いた壁の意、セメント類を使わず、石をノミで刻み整え積んでいくラグーザ県の伝統技術)。この石垣の周囲で、いったいどれだけの草花が色付き、枯れていったことだろう。

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 けれども季節が巡りに巡り、百年以上の時が過ぎた今も、石垣の姿と役目は変わっていない。やや朽ちることはあっても、匠の腕とそれが生み出す安定した構造美、そういったものが、普遍なるもの、揺るぎないものを思い起こさせるのはそのためだろう。

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 疾走する時間の中で、日常の音しか拾っていなかった耳に、ムーロ・ア・セッコから聴こえてきた普遍の、妙なる音。それは日常の雑事とほんの隣り合わせのところにある。


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追伸:この力強く美しいムーロ・ア・セッコから聴こえてきた音楽については、できれば久しぶりの動画を作ってみようかと思っていますが、リディア中心に疾走する日々の時間の中で、どこまでできますか・・・。パソコンを新しくしたせいで、ソフトもいろいろ足りないし・・・。
 ああ、でも作りたい!今、身体の底から波打っている音楽があるこの喜びを、春のラグーザの絵とともに形にしたいのです。
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by hyblaheraia | 2015-03-28 10:38 | 生活 | Comments(4)

母の悩み -ヴァイオリンを習うには-

 1歳のお誕生日に友人からもらったカード。そのオーケストラの絵を見ながら楽器の名前を憶えたり、ネットで演奏を聴いたりして遊んでいたこともあり、violino, violino!ヴィオリーノ、ヴィオリーノ!と興味を示し始めたリディア。(牛乳やペットボトルのふた、マグネットなどの宝物とその入れ物)
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 いずれ習わせるべきか?と考えるも、ラグーザにはヴァイオリンの先生もいないし、楽器さえ売っていない。コンサートもなければ、子供のための音楽教室ももちろん存在せず。
 でも「鉄は熱いうちに打て」と言うのだから、何とかヴァイオリンに触れる機会を!とずっと思案していた。そこで帰国中に古い友人のヴァイオリニスト夫婦のお宅にお邪魔し、ヴァイオリンで遊ばせてもらうことに。

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 お宅に上がるなり、楽しそうな楽器のおもちゃがたくさんあって、子供たちはお昼ご飯も食べずにひとしきり遊ぶ。

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 さあさあ、みんなで一緒にヴァイオリンで遊びましょう!レッスン始まりは友人YちゃんのヴァイオリンとYuさんのピアノ伴奏で。そしてお歌はHちゃんの元気なお声で。
 30年近い仲の友人とそれぞれの子供たち。こんな風に音楽を奏でながら、心満ちた一時が送れるなんて!ああやっぱり友人のいる場所はいいな。東京最高!
 さてリディアは音楽に誘われてピアノに駆け寄ってきたけれど、実際のヴァイオリンの迫力にびっくりしたらしく、paura! 怖い!と玄関に逃げたり、椅子の下に隠れたり。そして分数ヴァイオリンを手渡そうとしたら・・・、

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助けを求めんばかりに、私にくっついてしまった。音を鳴らしてみせても、好きなように遊ぶように促してみてもだめ。

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 お友達のHちゃんは弾き方を真似しながら、楽しそうに鳴らしているというのに、リディはこの通り、ヴァイオリンを前に深くうなだれてしまう。
 まぁ仕方がない。そんなこともあるでしょう。タイミングが悪かったのかな。チョコレートをつまみながら母同士でおしゃべりし、楽しく時間が過ぎ、そろそろ帰る時間というところで、

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ヴァイオリンを担ぎウロウロし始めたリディア。

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 そして床にどっしりと座り込み、満足そうにヴァイオリンを叩いたり、擦ったり、持ち上げたり。お友達はもうコートを着て、帽子も手袋もして、帰り支度万全なのに、全然ヴァイオリンから動こうとしない!

 電車の時間もあるし、この日は雪だったので、最後は無理やりコートを着せておいとましたのだけれど、あの最後のほんの5分ほどのヴァイオリンと戯れた姿と好奇心に満ちた目が忘れられず、心が痛い母。
 きっと本当はヴァイオリンに興味があるはず。その気持ちを伸ばしてやるには、ここラグーザでいったいどうしたらいいのか。

 ああ、母の悩みは尽きない・・・。


::: ::: :::

子育てとともに悩みが増えたラグーザ生活。「母の悩み」シリーズとして、今後もいろいろ愚痴ります。皆様のアイディアやご意見をお待ちしております。


追伸:今のところ、分数ヴァイオリンは日本で買って、私も中古ヴァイオリンを買って友人宅でレッスンを受け(副科でチェロをかじった程度の弦楽器の知識しかない)、こちらでリディアに教えるという方法を考え中。でも音楽をやるならピアノも買わなきゃならないし。気が遠くなる・・・。
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by hyblaheraia | 2015-03-23 17:24 | 生活 | Comments(4)

春の雲

 3月のシチリアとはいえ、山間部のラグーザでは夜間の冷え込みはまだまだ厳しく、日中には雨が霰になることもしばしば。それでも太陽は確実に春に向かっていて、空も、雲もそれに呼応している。

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 空の青さに負けじと、丘の向こうからせり上がってくるこの雲の躍動感。

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 どこまで高く、天の彼方へ昇り、

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 どこまでも遠く、地平線を目指して進んでいく。じっと垂れ込めていた冬の空が動かずにはいられなくなる、春の根源的な力!そしてじわじわと自分にも浸透していくその力。

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 冷たく湿っていた谷間も柔らかな緑に覆われ、ほころび始めたアーモンドの花を大事そうに抱えている。イブラを春色に染め、天地が光と風に揺れる季節はもうすぐ。
 ああ、春の雲よ、そこかしこに沈殿するものを取り去り、新しい力で満たしておくれ!

:::   :::   :::

3月⒑日の今日、気づけばブログ開設8年目。これまでたくさんの励ましや楽しいコメントを下さりありがとうございました。これからもラグーザの美しさを追いつつ、楽しくブログを続けていきたいと思います!
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by hyblaheraia | 2015-03-11 05:47 | 自然 | Comments(6)

海へ Marina di Ragusa

 毎日のように大雨、強風、霰に見舞われ、ほとんど外出できず、身も心もすっかりジメジメしていた2月末のある日。結婚記念日の祝いと気分転換も兼ねてマリーナで一泊しよう!というルカの提案で、いざ海へ。

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 ラグーザ上空に重くのしかかった雲を背に、車で南へ下ること20分。もうそこは別世界。

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 潮風は甘く、海の声は耳の底をくすぐり、きらめく太陽は目と肌を心地よく刺す。

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 青空の濃さと透明度は、空が近くいのか遠いのか、分からなくさせてしまう。
 ああ、これぞラグーザの空!忘れていたものを取り戻すこの感覚。古い友人に久しぶり会うような、懐かしさが湧き起こってくる。

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 リディアはお気に入りの長靴を履いて、憧れのcastello di sabbia(砂の城)に初挑戦。

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 それを手伝いつつ、見守るつもりの我々は、

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 次第に楽しくなってきて、お堀を作り、要塞で囲み、なぜかドクロの丘まで。

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 海岸を散歩する家族も、カップルも、走り回る犬たちも気付かない、ちょっとした悪戯。

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 まだ冷たさの残る海辺ではあったけれど、砂の城を作り、歌いながら海岸を歩き、時々砂を掛け合い、ボールで遊び、疲れたらジェラートを食べて休憩し、また城を作りに海岸へと、たわいの無い遊びの繰り返しに興じる。

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 そして夜もまた、遊び足りないリディアを連れて、遠くから砂の城の存在を確認。黒い海の声と黒い空の星々に心が震えたのは、自然への畏れからなのか、その美しさからなのか。

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 家族3人、それぞれが、それぞれにリフレッシュし、何かを感じたマリーナ。泳がなくてもいい。海にまた来よう。そして皆で「一緒に貝になろう」。
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by hyblaheraia | 2015-03-04 10:35 | 生活 | Comments(5)


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


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