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寄り添う雲

 天気予報でシチリア南東部は「Cielo sereno 晴天」と言われても、ここはいつも曇っている。おそらくラグーザの地形と関係があるのだろう。海抜およそ700メートルの丘陵地帯、深く切り込まれた谷間に、急傾斜の町並みが剥き出しの崖に挟まれて、谷底から山頂へと一気に走る。

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 この日も旧市街イブラの頭上には、分厚い雲の冠がどっかりと居座り、

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 町の傾斜に沿って右にも、

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 崖の連なりに沿って左にも、雲が寄り添っていた。


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 この雲はラグーザの町を抱くためだけに生まれている。谷を挟んだ反対側の丘に立つと、そう思わずにはいられない。


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 新市街の上空にもまた、家並に触れそうなほど雲が低く、

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 低く、立ち込めている。


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 こうして旧市街も、新市街も、分け隔てなく等しく覆うラグーザの雲は、谷を走り、崖を這い登り、上昇気流となって今日も天空へ駆け抜ける。
 シチリア全土が晴天であっても、ここだけは今日も雲に寄り添われて(しまって)いる。

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by hyblaheraia | 2009-10-29 19:57 | 自然 | Comments(10)

透明な空気の中で -秋のイブラ-

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 重く湿った空気を吹き飛ばした今朝の空は、さらさらと心地良く体を抜けていく。旧市街イブラもこんなに透き通っている。
 
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 階段を一段一段下がりながら、

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 透明な景色に近付く時の心の軽さは、鳥の気持ちと同じだろうか。

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 柔らかな緑は、この数日の激しい雨を耐え忍び、耐え忍び、それを自分の糧としたような表情をしている。


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 夏の厳しい乾きを乗り切った崖は、深緑のビロードの裾をたっぷりと揺らしている。
 振り向けば、

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 大胆な奥行きが私たちを待っている。そのことを知っていながら、春も、夏も、秋も、冬も、恐々と振り返り、毎回のように新鮮な衝撃を受けてしまう。ここには、心を呼び覚ます何かがあるのかもしれない。

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 前を向き直して歩き始めると、谷間へ溶け込む地層の連なりが視線を遠くの丘へつなげていく。そこはいつもテラスから見ている場所だ。丘の背後から毎朝太陽が登り、夕方には西の空を熱く反射し、秋の夜はオリオン座が横たわる。天と地の境界であり、天空の鏡のような丘。

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 今日はふと異変に気付いた。カッルーボ(イナゴマメ)の木の根元に、銀色に輝く草が群生し、そこだけ白い絨毯が敷き詰められたような雰囲気を醸し出していたのだ。

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 透明な空気の中を歩いていると、様々な色が微細な点の集合のように見え、ものの際が明確に見えて来るようだった。鬱鬱とした考えも晴れていくようだった。

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by hyblaheraia | 2009-10-27 07:35 | 自然 | Comments(14)

オリーヴの塩漬け 2009

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 そろそろオリーヴが出る頃だとアンテナを張っていたら、こんなツルツル坊主たちと遭遇。1キロ=2ユーロという安さ!しかも虫食いはほとんどなし。
 おじさんが両手ですくいながら、ゴロゴロ音を立てて紙袋に大人しく収まる坊主たちを2キロ連れて帰り、

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 楽しい、楽しい、作業の始まり始まり。
 まずはしっかり水洗いして、虫食いの粒はナイフで切って食べられる所は使いませう。そして最も楽しい、オリーヴに割れ目を入れる作業は、タオルとビニールを巻いた特性金槌を使って、一粒一粒に愛情を打ちこむように。オリーヴェ~、ヤイヤ~、ほ~いほい、と仕事歌を歌いながら。
 疲れたら手を休め、割れ目から染み出るオリーヴのミルクを愛で、溢れる青い香りを吸い、汗を一杯かいて頑張ったツルツル坊主たちに話しかけ、また元気に続けませう。

 全てに割れ目を入れたら、塩水に入れ、ふたをして日陰に置きませう。これから1週間ほど、朝、夜2回、ざるに上げ、ツルツル坊主たちをお風呂に入れるようにきれいに洗い流し、新しい塩水と交換してあげませう。
 日中も度々ふたを開け、顔を見ながら話しかけて。愛情を注ぐほど応えてくれるでせう。
 

追伸:「オリーヴ 塩漬け」という検索ワードでこのブログがヒットするようなので、また途中報告などしてみたいと思います。
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by hyblaheraia | 2009-10-14 07:13 | 変わった野菜と果物 | Comments(18)

罪と平安 -国葬に寄せて-

言い足りなかったことを書き足しました。

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 メッシーナの大規模土砂災害で命を落とした人々のために、10月10日(土)は国葬が行われた。日本のメディアではほとんど取り上げられていないこの災害は、シチリアの現状を象徴するものだったと私は感じている。

 翌日行われたエッチェ・オーモ教会の「ロザリオの聖母の祭り」では、例年になくミサが広場で行われていた。拡声器から聞こえるラグーザ弁のなかで、我々の罪と平和への祈りを語る言葉が印象的に響いた。

「peccato罪」と「pace平安」。
 繰り返される言葉を聞きながら、自然にミサ曲のテキストが連想された。そしてJ.S. バッハの《ロ短調ミサ曲》BWV 232の、アルトの嘆願的なアリアと、生命力に溢れる最終合唱を思い出していた。

Agnus Dei  世の罪を除き給う
qui tollis peccata mundi,  天主の子羊
miserere nobis.  われらを憐れみ給え


Dona nobis pacem.  われらに平安を与え給え


雑感:
 遠い日本の、安全で豊かな生活とは何の関係もない、シチリアの不条理な問題の数々を伝えて何になるだろう。 -きっと何にもならない- けれど、その問題を知った日に、それ以外に伝えることがあるだろうか。ジャーナリストではない自分が、感じたままに、感じた方法で伝えるしかないだろう。
 と最近は思うのであります。

:::::: :::::: ::::::

 2009年4月に起きたラクイラの大地震の時は、日本にも大きく報道された。ラクイラは予知できぬ自然災害だったけれど、メッシーナの場合は2年前の土砂崩れ以来、何らかの予防対策が可能だったはずである。住民から声が上がり続けていたにも関わらず、工事を行わなかった行政の責任に対して、人災という言葉さえ浮かんでくる。避難勧告もなく、夜中に土砂に飲まれて多くの命が奪われたことをどう考えるべきか。
 ベルルスコーニ首相の失言(オバマ夫人も日焼けしている、と述べた)を報じるスペースがあるのなら、メッシーナの大規模土砂災害について、何かしら述べて欲しかった。失言について世界が騒ぎたてることは、結局、彼の思う壺なのだから。
 政治の表舞台に立つ人物を追うのは当然だが、彼の力の及ばぬ所で苦しんでいる人々こそ、今の政治の真の姿を伝えているのではないだろうか。
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by hyblaheraia | 2009-10-13 07:16 | 政治・社会 | Comments(10)

カタツムリの歩みに見る

 雨が続いているので、最近はテラスの至る所にカタツムリが這いつくばっている。遅々とした歩みではあるけれど、じっと目的地を見据え、粘り強くそこへ向かおうとする動きはなかなか感慨深い。
 イタリアは今、公共サービスの不徹底による人災、ジャーナリズムに対する統制と検閲行為、人種偏見、教育の質の低下、慢性的な給料未払い等、あまりにいろいろなことが起きている。カタツムリの歩みを眺めていると、彼らはこの状況を黙って耐え、嘆かず、それどころか希望を持って将来を見据えているように感じられる。

 新美南吉の美しい童話、『デンデンムシノカナシミ』が思い出された。

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 イツピキノ デンデンムシガ アリマシタ。
 アル ヒ ソノ デンデンムシハ タイヘンナ コトニ キガ ツキマシタ。
 「ワタシハ イママデ ウツカリシテ ヰタケレド、ワタシノ セナカノ カラノ ナカニハ カナシミガ イツパイ ツマツテ ヰルデハ ナイカ」
 コノ カナシミハ ドウ シタラ ヨイデセウ。


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 デンデンムシハ オトモダチノ デンデンムシノ トコロニ ヤツテ イキマシタ。
 「ワタシハ モウ イキテ ヰラレマセン」
 ト ソノ デンデンムシハ オトモダチニ イヒマシタ。
 「ナンデスカ」
 ト オトモダチノ デンデンムシハ キキマシタ。
 「ワタシハ ナント イフ フシアハセナ モノデセウ。ワタシノ セナカノ カラノ ナカニハ カナシミガ イツパイ ツマツテ ヰルノデス」
 ト ハジメノ デンデンムシガ ハナシマシタ。
 スルト オトモダチノ デンデンムシハ イヒマシタ。
 「アナタバカリデハ アリマセン。ワタシノ セナカニモ カナシミハ イツパイデス。」


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 ソレヂヤ シカタナイト オモツテ、ハジメノ デンデンムシハ、ベツノ オトモダチノ トコロヘ イキマシタ。
 スルト ソノ オトモダチモ イヒマシタ。
 「アナタバカリヂヤ アリマセン。ワタシノ セナカニモ カナシミハ イツパイデス」
 ソコデ、ハジメノ デンデンムシハ マタ ベツノ オトモダチノ トコロヘ イキマシタ。

 カウシテ、オトモダチヲ ジユンジユンニ タヅネテ イキマシタガ、ドノ トモダチモ オナジ コトヲ イフノデ アリマシタ。
 トウトウ ハジメノ デンデンムシハ キガ ツキマシタ。
 「カナシミハ ダレデモ モツテ ヰルノダ。ワタシバカリデハ ナイノダ。ワタシハ ワタシノ カナシミヲ コラヘテ イカナキヤ ナラナイ」
 ソシテ、コノ デンデンムシハ モウ、ナゲクノヲ ヤメタノデ アリマス。


青空文庫より転載
 
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by hyblaheraia | 2009-10-05 07:33 | 生活 | Comments(16)

メッシーナで土砂災害

 「停電するかもしれないので今日はネットを切ります」と昨夜、右メニューの掲示板に書いた時、ここラグーザも激しい雷と雨に見舞われていた。夜中3時まで寝床で書き物をしている間も、その勢いは一向に衰えず、今朝、シチリア北部での大規模な土砂崩れのニュースが入ってきた。
 メッシーナ市から10キロ程の町、ジャンピリエーリでは死者18名、行方不明者35人以上、道路や鉄道は土砂に寸断され、アパートなどが倒壊し、1000人の住民のうち400人が家を失った。

 この地域は2007年にも洪水被害があったという。シラクーザ出身のプレスティジャーコモ環境大臣は、「惨事は回避できたはずだ」と述べ、政府の援助金が効果的に使用されていないことを指摘した上で、「今年は16,000,000ユーロをシチリアに導入する予定である」と発表した。
 果たしてこの援助金は、使われるべきところで正しく使われるのだろうか。

 現政府は莫大な国家予算の下に、シチリア(メッシーナ)とイタリア本土を結ぶ橋の建設を計画している。が正直なところ、この橋はシチリア住民の大半には利用機会もメリットも少ないだろう。我々には本土との連絡など、生活の最優先事項ではないからだ。我々が求めるのは安全な住環境、処理能力のある排水設備、安心な水道網、都市ガスと鉄道の整備、そして通常に機能する病院施設と救急体制である。
 これほど至って普通のことがここシチリアには欠けている。同じイタリアだのに。

 
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by hyblaheraia | 2009-10-03 06:21 | 政治・社会 | Comments(10)


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


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