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100年前の箱

 100年前、言いかえれば1世紀前。どちらも遠い時間を感じさせる。現代生活から見れば、その頃のラグーザは生活様式も、価値観も、想像できないほど違っただろう。

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 けれどこの写真には、親しみ慣れた私の良く知るものがある。場所はエッチェ・オーモ通り、1900年初期の撮影。
 急な坂、今は廃墟となった劇場、突き当りに聳えるエッチェ・オーモ教会、そして建物に挟まれた遠近法の空を埋める雲。

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 さらに町並みも、道幅も、歩道の石も全く当時のままである。
 ただ、通りを悠然と歩く人々の姿は、駐車の列に代わり、美しく維持されていた劇場には、雑草が自由奔放に伸びてしまった。
 箱は変わらず、中身は変わる、のだろう。古い町並みは残されていても、新しい価値観が渦巻くから。

 バロック時代(1700年代)の美しい箱を損ねず、常に共鳴し合う価値観が生まれて欲しいものだ。100年前の箱は、良い響きを保っていたように見える。
 ラグーザ市政にいろいろ物申したい。

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by hyblaheraia | 2009-09-30 00:32 | 歴史 | Comments(18)

雨と雷が考えさせること

 旧市街イブラの谷間から突風に巻かれて雲がせり上がってくる。

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 テラスに出ると、体は平らにぶつかってくる空気の衝撃でよろめき、髪は蛇のようにうねり、耳は暴風の鈍い音と雷鳴に占領されてしまう。まるで船の上にいるみたいだ。


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 豪雨と雷のセットとは最悪だな。今日は停電しませんように。停電せず、明日は水がちゃんと届きますように。
 電気も水もあるうちに慌ててシャワーを浴びながらまた考える。髪を乾かすまで停電しませんように。今日は天井から水漏れしませんように。この間みたいに水で天井に穴が開きませんように。
 そしてこんな悪天候の時にいつも思うことを思った。アフリカからシチリアに向かう難民のボートが今日は一艘も漂流していませんように。もしあっても、誰一人転覆せず無事到着しますように。

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by hyblaheraia | 2009-09-24 06:34 | 生活 | Comments(8)

6枚花びらのジャスミン

 偶然なのか、突然なのか、異変とはどう読むべきなのか。

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 最近、6枚の花びらを持つジャスミンが咲き始めている。通常の5枚の花びらが作るゆったりとした間が満たされているので遠目からも分かる。近くで見ると、そこはかと無い悲しみで満たされている。
 

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 6枚花びらは、その枝や、そこから繋がっている枝を伝っていくとまた一つ、一つと見つかる。偶然ではない、何らかの意味があって次々に異変が生じるのだとすれば、ピンクの蕾の中で今、何が起き、出番を待つ花びらたちは、今、何を思っているのだろう。
 固く心を閉じ、うな垂れ、咽び泣く姿に見えることが、時々ある。

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by hyblaheraia | 2009-09-22 05:48 | 自然 | Comments(0)

ボルロッティの収穫!

 昨日の朝、テラスに出て一瞬?!

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 本物のボルロッティだ!!売り物と同じ色!莢が白と赤のマーブル模様になっている!!もはや収穫の時が来たのだ。ようし!


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 パッチン!という硬質な音と手応えを楽しみながら、大きめの莢を全部収穫。そして、指先にまで伝わる胸の高鳴りを感じながら、最初の一莢を裂き始めると・・・。
 なんと!たった一粒のボルロッティだけれど、ぷにゅっとした瑞々しい皮に包まれ、表面には立派なマーブル模様を描いている。


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 他の莢たちも次々に開いて見てる。完成された美しいマーブル模様をまとったものもあれば、まだ早すぎて自分がボルロッティであることも知らない粒もあり。
 ああ、でも君たちを皆、等しく愛しよう!!


f0133814_6121179.jpg わずか30粒ほどのボルロッティは小さな鍋でコトコト煮られて、マリネの小皿に変身。
 オリーヴオイル、お酢、塩、そして今年の野生オレガノ少々で味付けしたもの。


 一粒一粒を大事に味わい、溶けるような上品な甘さに二人とも顔を見合す!ボルロッティじゃないみたい!


f0133814_6125486.jpg イカとトマト・ソース(塩漬けカッペリ[ケッパー]入り)のリングイネの後の、小さな小さなセコンドとして、二人で仲良く半分分け。

 トマト・ソースも、ワインも、オイルも、何が飛び跳ねてもシミが見えない色柄うるさいテーブル・クロスで、大いに安心しながらランチ!ワインはもちろん、地元のネーロ・ダーヴォラ。濃いトマト・ソースに負けない味。




 ということでボルロッティの成長記、最終章。発芽から色付き、そして収穫まで、皆様、応援ありがとうございました。プランターでも育つことを証明しちゃいました。

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by hyblaheraia | 2009-09-13 07:27 | 変わった野菜と果物 | Comments(10)

静謐なるシチリア

 シチリアの景色に何を求めるかは季節によって違う。春は溢れ出す色彩を、夏は荒涼とした乾きを、秋は戻り始める緑への安心感を、冬は凍てつく透明な世界を無心で追うのが常だ。
 午後の雨と雷が空気を湿らせた8月末日、いつもの夏の表情ではなく、

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 空家となった古い農家が崖にしっとりと包まれる姿を、


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 その尾根の終わりまで見届け、

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 乾いた土地に天の恵みが浸透していることや、

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 静かに横たわる女王の両乳房(i minne)の豊かさに目が止まった。遥か彼方に雲隠れしているエトナ山を想っていると、足元の

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 湿りを含んだ土地に、普段は見過ごしていた隆起を見せつけられた。

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 山間部から見下ろすキアラモンテ・グルフィChiaramonte gulfiは、漂う霧に生活音の一切を吸われ、

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 どこを走っても我々を抱いて止まない石壁、ムーロ・ア・セッコmuro a seccoは、

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 口に水を含み、淡く押し黙っていた。

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 もはや羊たちも、「事に従ひて思惟を致」すのみ。

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 ああ、静謐(せいひつ)なるシチリアの風景よ。秋へ足を踏み入れた、この穏やかな表情を忘れないだろう。

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by hyblaheraia | 2009-09-11 07:22 | 自然 | Comments(10)

紫雲竜

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 日没後、西の空が妖しく劇的に染まると、そろそろ秋から冬の季節に入ったなと感じさせる。こんな雲竜の空を、去年の冬に何度も見上げた。

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 紫の無限の陰影が巻かれている。
 竜胆色(りんどういろ)の空に軽やかに流れる浅紫色。その背後でやや慎重な面持ちの蒲葡(えびぞめ)色。厳かに垂れて来る滅紫(けしむらさき)の濃さ。

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 それらが混ざり合い、溶け合ううちに、石竹色(せきちくいろ)の薔薇窓が開いた。その奥の方から聞こえていた呼び声は・・・。
 ああ《遠い呼び声の彼方へ
 晩夏雲竜紫の怪・・・(ばんかうんりゅうむらさきのかい)。あの声の主は誰なのか。


 雲竜の空、これから取り憑かれる季節。

注) 《遠い呼び声の彼方へ》、は武満徹のヴァイオリンとオーケストラのための作品(1980年)のタイトルです。
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by hyblaheraia | 2009-09-09 06:08 | 自然 | Comments(4)

追想 サン・ジョヴァンニ祭りへの

昨夜、眠くて書いたので意味不明でした。書き直しました…。


 過ぎ去ったものへの記憶とは、体感した音、光、空気の震えや温度、艶めかしい感触のようなものを一心に甦らせることによって、それらを脳裏に深く刻もうとする行為なのではないだろうか。だから、記憶の糸を手繰り寄せているうちに、その時の感覚を呼び起こそうと、想像が想像を呼び、全ては実際の体験よりも色と艶と濃淡を増し、妖しく光を放つのではないだろうか。

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 サン・ジョヴァンニ祭りの記憶は、今私の中で色や光の濃度を高めつつある。例えば、斬首された聖人の銀細工が周囲の空気をひたと止めた瞬間は、実際よりも長く冷やりと思い起こされ、

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 盛大な爆竹で空気が裂け、火薬の匂いが立ち込めた瞬間は、耳と鼻の奥を突く鋭さを思い出す。

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 聖人像を照らすランプと蝋燭の炎のゆらめき、鮮やかな光のアーチは、妖しい暖色の空間となってうねり出す。人の肌さえも橙色に輝くその夜は、異様な空気となって記憶に浸透している。


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 短白衣に身を包む聖職者の列は、厳格な階位と、強固な意地を張り巡らせた白い蛇のイメージとなって降りて来る。衣類の装飾は聖職位に比例し、短白衣の見事なレースには教区間のシニョーラたちの技が競われていたからだ。

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 聖人がゆっくりと我らの前に現われるあの一秒一秒は、もどかしくもあり、終わらないで欲しくもあった。その矛盾した感覚が浮き上がって来る。

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 言葉なく見上げていると心を見透かされるようだった。


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 聖人の血を想像させる、ほとばしる赤が目に刺さった。それらは身体が覚えている。

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 そして、血痕のような花が目の前に咲き乱れた時、不思議と音が遠のき、身体がふわりと浮き、感覚のなさに支配された。自分の存在が祭りの興奮に溶ける、あの透明な感覚は何だったのだろう。


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 ブラスバンドのシチリア的な哀愁と、鳴り続ける鐘がもたらす高揚した聴感覚、溢れる光と生温い空気は、狂騒の魔物なのだろうか。そこにいる時は感覚を麻痺させ、私の存在さえも飲み込んでしまうが、そこから解放された途端にどっしりと重い安堵感がのしかかり、現実に押し戻される。

 こうして記憶というのは、色はより鮮やかに、光はより煌びやかに、香りはより芳しく付け足しながら、自己の内で永遠に美化され続けるものなのかもしれない。
 ラグーザにいると、ふとそんなことを思う。

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by hyblaheraia | 2009-09-08 08:05 | 祭り | Comments(2)

Muragghiu ムラッギュ

 ラグーザ生活において、どうしても見たかったものがある。

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 土地を開拓した時に出てくる石灰石をひたすら積み上げ、石壁と小屋を作ったもの。

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 Muragghiu ムラッギュ。ラグーザの伝統技術の結晶。

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 3段構造のうち、下段はモディカ様式、中段と上段はラグーザ様式。
 前者は5面をカットし積み易くした石を、後者は手を加えず形の合う石同士を重ねていくのだそう。

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 3段の石小屋から、どこまでもムーロ・ア・セッコmuro a seccoが続く。途中に井戸や釜戸らしきものもあった。

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 石小屋に登ってみる。ここは中段。セメントを使っていない上に、何年も放置された状態なので、石がグラッと揺れる時がある。

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 上段まで登りたかったが、石の威厳と脅威のようなものに圧倒され、これ以上は進めず。それでもこの高さから見る景色は、


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 なんと清々しいことだろう。向こうは海、

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 その続きには、イ・ミンネi minne、ラグーザ弁で「女王の乳房」を意味する二つの山がある。靄に隠れてエトナ山が不在だったが、馬たちの姿を追っていた。



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 石小屋の中に入ってみた。天井はぽっかり空き、光が漏れるているのは、何かのまやかしか。中段からはこの小さな穴が見えなかったので、不思議な感覚だった。

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 何かを追い求めるような、石の重なり。その声に耳を傾けていよう。

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 全ての重みを支える最底辺の石たち。あまり辛さは感じられない。

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 入口からの強烈な光。全てから守られているような場所だった。



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 ずっと夢見ていたムラッギュ。圧倒的な石の存在を身体で理解した。
 よじ登り、爽やかな風を受け、潜入し、湿った空気を嗅ぎ、石の声を聴いた。周囲の土は足を取られるほど柔らかく、黒く、白い石灰岩が不変の模様を散らしていた。一面に根付く鋭い枯れ草は肌を突いたが、瑞々しい可憐な花は痛みを忘れさせ、石の隙間にうずくまるカタツムリが我々の笑みを誘った。
 何もかもが想像を超えていた。
 
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 ブログ400回目の記事は、憧れのムラッギュと今日の満月、そしてラグーザに来てくれたai-pitturaさんご夫妻の思い出に捧げよう。

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 ブログを通じて、ai-pitturaさんの精力的で挑戦的な創作姿勢と、ご主人の器に注がれた穏やかで静かな視線に興味を覚え、彼らに聞きたいことが山積していた。その全ては質問できなかったけれど、彼らとの芸術談義を通して、何かが甦って来るようだった。

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by hyblaheraia | 2009-09-05 08:13 | 伝統・技術 | Comments(16)


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


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