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力強さと曖昧さの美

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 2500年以上もの間、風雨や地震に耐え、戦火をくぐりぬけてきたドリア式円柱。力強い風格を湛え、優しくも厳しい表情で何かを語る。
 シラクーザのオルティージャ島の入口付近には、アポロン神殿跡(紀元前570年から紀元前560年頃)が残る。シチリア最古のドリア式円柱と言われる。

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 神殿の周囲をこのような円柱がぐるりと張り巡らされていたと推定されている。いかに圧巻だったことだろう。

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 その面影はこの一角に残っている。もはや屋根はなく、壁はわずかに残るのみ。
 しかし不完全な状態から想像を果てしなく巡らせるのも悪くない。完璧な姿でここに神殿を見るよりも、壮大さは見えない方が壮大に感じる。
 神殿の前の教会では結婚式があり、参列客が記念写真を撮っていた。こうしてオルティージャの様々な瞬間を、この神殿は共にしてきたのだろう。

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 神殿の壁の、横石のリズムの変化が美しい。
 ふくよかなバスの旋律に、ヴァイオリンの軽やかな音符が紡がれているような感じだ。
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 窓の部分の切り込み。この種の石の窓を見るといつも感嘆する。四角いものが丸を表現しているのだから。
 窓の向こうに見えるヤシの木。こういう透かし見が好きだ。

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 上部が捥がれてしまった円柱。こんな姿になっても悲哀感がない。いや、むしろ、どんな形になってもそこに息づく太い魂が感じられる。

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 もはや原型が分からない石の塊。ここから感じるのはやはり強さだ。背後に見える現代生活には、薄れているものかもしれない。

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 神殿の横の石壁の中に美しいレリーフが埋め込まれていた。
 おそらく同じくらい古いものだろう。が、なぜここに。何のために。理由が分からないからこそ、その魅力が膨らみもする。

 こうしてアポロン神殿を見ながら思い出すのが、vaghezzaという言葉だ。「あいまいさ、不確かさ、不明瞭さ、ぼんやりしたもの」を意味し、古典イタリア語では「優美さ」として使われる。バロック時代のカンタータにも頻出するこの言葉は、私の好きな曖昧な美しさを言い表している。

 ギリシア神殿にみなぎる見えない美しさに想いを馳せ、骨太な力強さに憧れを感じた。同じシチリアでありながら、ラグーザにはない空気を深く吸い込みつつ。

 ということでシラクーザに来ています!クイズの答えに当たった方は・・・。

曖昧な美しさ・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-30 00:55 | シチリア他の町 | Comments(14)

名もなき風景

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 週末にとある会合のため長距離バスに乗り込む。
 目的地行きのバスが2台同時にターミナルに入って来て乗客は大混乱。**に行きたいんだけど、どっちに乗ればいいの?!なんで2台もあるの?!地元の人でさえこの状況、分かっているのは運転手だけ。
 とりあえず目的地に早く着く方に乗り込み、窓際に座り、カメラの用意。CDを聴きながらこれから出会う風景に胸が高鳴る。
 ところが!イブラの真横を大きく回るこのバス、左側に座るべきだった・・・。空いている席もないので、身を乗り出して撮っていたら乗客の方々がカーテンを開け、身をかがめて下さった。
 この方が逆に、イブラの大パノラマが伝わるだろうか。

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 ラグーザの山間をぬうように走り、静かな風景に包まれる。こんな所でも人知れず春の命が燃えていた。

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 起伏に富んだ丘陵地帯がどこまでも続く。名もなき地域の普段の美しさ。

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 待ちうけるのはラグーザと隣町モディカModicaを結ぶ高さ100メートルの橋。そこを車で疾走し、谷間を駆ける風となる愉しみ。世界遺産の外の、日常の自然に酔いしれる幸せもある。

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 しばらくすると雨。しっとりとくすんだシチリアの色もまたいい。ヤシの木と石造りの農家、良く耕された土地。ありきたりの風景こそがシチリアを語る。

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 バスは途中の小さな町、ロゾリーノRosolinoに入った。風情ある古い家々が雨に濡れ、人一人歩いていない。
 廃墟を見ると想うのが、そこでのかつての生活だ。壁の特殊な装飾には、シチリア陶器の植木鉢が飾られ、色吹く花々がテラスでの憩いの時間を作っただろう。ここに住んだ家族は、心無い壁の落書きをどう見ているだろうか。
 雨の重い空気と、ダウンランドの《ラクリメ、または7つの涙Lachrimae, or Seaven Teares》(1604)の淡い旋律に誘われて、うとうと眠りにつく。

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 目が覚めると、雨足が通った直後の晴れ間に迎えられた。時計を見ると、あと30分で目的地に着く時間。次第に太陽の輝きが変わってくる。暖かく、強い日差しだ。

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 そこは海。とにかく眩しい。同じシチリアとは思えない空気が漂う。

 名もなき風景を超えて、これからは世界屈指の観光地を巡る。そこに辿り着くまでの、人知れず広がる美しいシチリアの日常の風景を、ずっと大切に愛していきたい。

チェックインを済ませたらお散歩!さぁ我々はどこにいるのでしょう。

名もなき景色・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-29 02:55 | シチリア他の町 | Comments(22)

イタリア解放記念日 -市民は何処へ?-

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 硬い軍隊調のマーチを演奏しながらブラスバンドが近所を通った。祭りの陽気なマーチとはどこか違う。
 今日はイタリア解放記念日Anniversario della liberazione dell'Italia。1945年4月25日、ドイツ軍とファシズムからイタリアを解放したことを記念する祭日である。
 イタリア各地で大規模な集会が行われるこの日、ラグーザでも署名運動があると聞いていたので行ってみることにした。

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 ファシスト時代の冷たい建築とロータリーがあるピアッツァ・リベルタPiazza Liberta(自由広場)。ここで署名運動が行われているはずなのだが、誰もいない。垂れ幕やスローガンを掲げた大規模な運動を想像して来たのに、いったいこれは。
 もう終わってしまったのか?

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 町では数少ない信号のある交差点。普段は車がひっきりなしに往来するのに、風の音が聞こえるほど静かだ。

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 花が飾られているのだけが、唯一、今日は祝日であることを思わせる。
 署名運動はいったいどこで・・・。

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 町で一番賑わうバール付近の橋にも誰もいない。普段はパーキングチケットを売る係官がいて、時間オーバーで追徴料金を払わされる人が大騒ぎで抗議したりしているのだが。
 風の音と自分の足音だけが聞こえる。

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 町一番の大通り、コルソ・イタリアCorso Italiaでさえ車が走っていない。これは信じられないことだ。ラグーザ市民よ、一体何処へ?

 今日の解放記念日、ラグーザ人にとっては日常生活からの解放を意味するのだろうか?

おーいどこだ~・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-26 09:12 | 政治・社会 | Comments(6)

偶然の出会い

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 出会いというのはどこに潜んでいるのか分からない。一生の中でまさにその瞬間に、様々な偶然が重なり、出会う者同士の運命がぴったりと合った時にそこで起こるものなのだろう。
 先日、日本からのスケッチ・グループに中華レストランで出会った。我が家に水が数日届かなかったこと、その日は二人とも早めに夕食を取りたかったこと、久しぶりに中華レストランの夫婦に会いに行こう、と思ったこと。思えばそんないくつかの条件があったからこそ、出会えたのかもしれない。

 中華レストランで出会ったmariさんからコメントをいただいた。ラグーザ伝統菓子の心ばかりの差し入れに、グループの方々全員から私への贈り物がフロントにあるとのこと。
 スケッチのグループだから、一人一色ずつ筆を手に合同で点描画のイブラを描いて下さったのではないか?と想像を膨らませ・・・(想像しすぎ?)。
 夕方ホテルに行ってみるとオーナーが笑顔で現れ、硬い握手で挨拶。そして・・・

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 こちら!見た瞬間に、わぁー和食ー!と感嘆の声。しかもずっしり、パンパンだ。袋から透けて見える中身もいろいろ。まさに和食による点描画という感じ。

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 中身はこんなに。お茶、粉ミルク、お吸い物、お味噌、本物のお味噌、ご飯、おかゆ、炊き込みご飯、梅干し、海苔、ごま、醤油、春雨スープ、カップめん、ワカメサラダ、ドレッシング、お煎餅、黒文字、日本の洗剤、使い捨てカイロが出てくる出てくる。
 やはり旅行中は体調不良や、野菜不足になりがち。部屋に戻ったらゆっくりお茶も飲みたくなるものだ。この品々を見ていると、旅先の不安が手に取るように見えてくる。

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 そんな貴重な品を、まだ旅が終わらないうちに19名全員の方々が私に譲って下さった。添乗員の方が袋をもって一部屋一部屋、声をかけてくださったのだろう。帰りの坂道を登りながら、この偶然の素敵な出会いに感謝した。

 スケッチ・グループの皆様、日本の味をありがとうございます!大事に大事にいただきます。
 皆様の風景画が、ラグーザの風と光を日本に届けてくれますように!グループ展などの際にはご連絡ください。

スケッチツアー
トラベルプラン http://travelplan.co.jp

偶然の出会い・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-25 08:48 | 生活 | Comments(10)

ジョヴァンニおじいさんの宝物

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 ジョヴァンニおじいさん(Sig. Giovanni Nobile、ジョヴァンニ・ノービレ氏)。
 イブラで生まれ育ち、イブラをこよなく愛し、世界中から訪れる観光客に愛される人。イブラの迷路のような道も、そこに住む人々も、古くからの言い伝えも、草花の名前もその香りも、イブラに息づくものは何でも知っている。

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 そんなジョヴァンニおじいさんの財布には大切な宝物が入っている。これは(もはや何度も見ているけれど)、歌舞伎《助六》のテレフォンカード。
 ほらサムラーイ、サムラーイですよ!と嬉しそうに見せてくれる。日本に住む古い友人(確か、別府の方)からの贈り物で、とても大事にしている。
 そしてこの日、さらに素敵なものを見せてくれた。それは・・・

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 ジョヴァンニおじいさんの叔父さんの写真。左から2番目が彫刻家で美術の先生だった叔父さん。1930年代に工房で仲間と一緒に撮った一枚で、ジョヴァンニおじいさんはまだ2歳だったそうだ。
 叔父さんの頭の上に、グリーンのペンでぐにゃぐにゃっと記が付いているのが面白い。
 そしてもう一枚・・・

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 あ、これは・・・!
 イブラのジャルディーノ(イブレオ庭園)の奥、サン・ジャーコモ教会横にある叔父さんの作品。1950年代の制作で、もとは別の古い教会の中にあったのだが、道路拡張工事のため教会が壊されイブラに移されたのだそう。
 セロテープで補強された破れ目が、いかに長い間おじいさんの財布に入っているかが分かる。

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 いつものようにおじいさんとの散歩が始まる。
 ここはおじいさんが通った小学校。こんなに荒れ果てた建物だけれど、子供の頃の思い出を聞くと全く違って見えてくる。

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 ほら、ドゥオーモが見えますよ!
 建物の隙間から一瞬見えるこの景色。足元を見ていては気付かない。おじいさんはこうしてイブラを見つめているのだろう。
 そして全く知らない階段を上り、こんなかわいい路地に来た。白い子犬が吠えて飼い主のシニョーラがごめんなさいね~と出てきた。この人もおじいさんの知り合い。こうして会う人会う人に私を紹介してくれる。

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 ここはサンタ・ルチーア教会からの眺め。サン・レオナルド渓谷の崖の途中に、白く光るものがあった。良く見ると十字架だ。どうしてこんな所に?
 おじいさんはゆっくりと語り始めた。昔々、中世時代の話ですが、騎士があそこまで馬に乗って登ることができれば、宝物を手に入れられるという言い伝えがあったんですよ。数年前までボーイスカウトが訓練のために上から下りたりしていましたが、危険なのでラグーザ市が禁止したんです。あの十字架はその伝説を忘れないために置かれているんですよ。
 
 ガイドブックには書かれていない素敵な話だった。
 ジョヴァンニおじいさんの宝物は、財布の中だけでなく、ラグーザの隅々に隠されている。一緒にのんびり散歩しながらそんな話を聞いていると、この町への愛情が輝くような宝物になっていくのを感じる。
 次の宝物探しはいつだろう。

宝物を探して・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-23 18:18 | 生活 | Comments(13)

20 Aprile 2008 -友へ-

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 2008年4月20日、満月の日曜日。深夜一時頃、ラグーザの夜を白い光の輪が照らす。

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 朝目覚めると、アフリカからのシロッコで青空が少しくすんでいた。近所の猫は大きな骨付き肉をもらい、空ではなくて肉ばかりを眺めている。

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 カッテドラーレの中庭では小さな男の子と女の子が仲良く遊んでいた。30数年前の二人はこんな感じだっただろう。ファサードの前でも子供たちが元気に遊ぶ。
 イブラでワインを飲んでいるとき、イッシシシ!と遊びに来た3人の子供たちはどうしているだろう。

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 大通りをずっと下がると、細い路地が左右にいくつも見えてくる。過去へのトンネルのような趣き。その横を古いオート三輪のリコッタ売りがポンポンポンと軽快に通り過ぎていった。
 夏にリコッタ入りラヴィオリはなく、食べさせてあげられたなかったのが残念。

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 そして一緒に見たこの風景。これを見せたくてここに呼んだようなもの。あのイブラの中心で、二人の斬新なヴァイオリンを聴くのは本当に楽しかった。演奏の後はいつも夜中2時まで飲み明かしたことを懐かしく思い出す。

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 と感慨にふけっていると、シニョ~~ラ~~!!
 ジョヴァンニおじいさんに出会ってしまった。今日は日曜日なのでミサ用に正装している。相変わらずおしゃれさんだ。カメラを向けると自然にポーズを取るのもあの日のまま。

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  熱烈なハグを受けて、いつもの猛烈なおしゃべりが始まり、いつの間にか、いつもの様に一緒にお散歩となる。
 ここは最近、お気に入りの場所。今度ラグーザに来る時は、ここでのんびり風に吹かれておしゃべりしよう。

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 あの時もジョヴァンニおじいさんと小さな路地を一緒に歩いた。夏にはここにテーブルを出して、近所皆で食事をして、踊って・・・。ここにはギターの名手がいて、階段に座って弾いていると人が集まって耳を傾けて・・・。
 昔のラグーザの生活は、生き生きとして温かく、人々の素朴な心を感じさせる。その話に子供のように聞き入った。

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 路地を抜けて普通の道に戻ると、二人の目に留まったトリナークリアに迎えられた。
 陶器の美しいトリナークリアにナイフとフォークを添えて、お化けのタコかイカに見立ててギョーギョー言って遊んだのが懐かしい。

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 夕方のテラスは初夏の雰囲気になってきた。ジャスミンはまだ少し弱々しいけれど。ヴァイオリンの練習の合間に、ここでアマツバメを追っていた二人の後ろ姿を覚えている。夜はこのテラスで星を眺めながら食事をし、ワインを飲み、語り明かした。
 45度の暑さで水が来なかった日を経験した貴重なお客さんでもある二人。

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 メルロの親子は今年もあそこに巣を作った。オオツバメもテラスの前を疾風のように飛び去りながら、子育てに懸命。一年は早い。

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 こうして今日のラグーザは一日を終えようとしている。満月の光は、アフリカの湿った空気の中で一層大きな輪を描いている。

 2008年4月20日、満月の日曜日。
 結婚おめでとう。二人の晴れ姿を目にすることはできなかったけれど、忘れ得ない思い出とともに、結婚式の日のラグーザの満月を贈ります。

 双方のご両親をお連れしてのラグーザ新婚旅行、実現が楽しみ!


 ヴァイオリン・ドゥオのShiro氏とYoshiko氏。ライブ活動から舞台俳優、映画女優、そして幅広いレパートリーで活躍するマルチな二人。斬新かつアグレッシブな演奏は人の心を瞬時に掴み、独特のオーラが音楽に色を与えている。
 二人の音楽的センスは、イル・ジャルディーノ・アルモーニコIl Giardino Armonicoの型破りなスタイルと通じるものがある。アントーニオ・ヴィヴァルディの《リュート協奏曲》RV.93では、彼らの生の声と身体のリズムが自由に溢れ、陰影を帯びながら語りかけてくる。なんと楽しそうな演奏!
 そして、タルクィーニオ・メルラTarquinio Merula(1590-1655)のチャッコーナCiaccona。バス定型に乗って流転するメロディーと、肩ひじ張らない自然体の演奏。この音楽本来の命がはじけている。もうただただ、Vravi!

 心の友へ捧げます

結婚おめでとう・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-21 18:59 | 音の絵:写真と音楽のコラボ | Comments(13)

伝統菓子の差し入れ

 水がなくて料理ができないので、昨夜は中華レストランで2~3品テイクアウトすることにした。ここに来た時から仲良くしている中国人夫婦のレストラン、東洋の味が恋しくなると出掛ける店。
 入るとシニョーラが、日本人が来ているのよ、と笑顔でそのテーブルに案内してくれた。そこには熟年男性に紅一点が輝くグループがビールとワインで賑やかに食事中だった。
 こんばんは、と声をかけると、おおーー、どーも、あらー!と驚きの声。
 ヨーロッパをスケッチして周るグループで、現在ラグーザ滞在中。既にイブラの景色は描き済み。明日はヴィッツィーニVizziniにてスケッチとのこと。お食事中であることを忘れ、すっかり楽しくおしゃべりしてしまった。

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 今朝、そのグループの方々の泊まるホテルにラグーザ伝統菓子、ンパナティッギ'mpanatigghiムカートリmucatoli, nucatoliをこっそり差し入れしてきた。
 奥に写っている餃子のようなものがンパナティッギチョコレートに牛挽肉を混ぜてうす焼きクッキーに包んで焼いたもの。手前がムカートリ、小麦粉に蜂蜜、オレンジの皮、丁子(ちょうじ)、クミンなどを混ぜたものを薄焼きクッキーに乗せてS時型に焼き、アイシングで飾り付けしたもの。
 挽肉入りはいったいどんな反応があるのか、興味津津。ムカートリは昔懐かしい味がするので大丈夫だろう。どちらも濃い目の日本茶と相性ばっちりなのだけれど、お茶も差し入れすべきだったかな。
 
f0133814_0131966.jpg 楽しいおしゃべりの中で、奥さんは、かかあ殿下ですか?と聞かれたルカは、話の流れから意味を悟って、ええ、うちでは奥さんが一番偉いんですよ、と答えて笑いを取っていた。ラグーザの生活はどうですか?という質問には、ずっと住みたいですねと答え、二人いっしょだからいっしょう(一生)!ヒャヒャヒャッ!という反応にルカ大喜び。
 家に帰って来てから残念そうに言った。この辺りでは馬肉も食べるんですか?と聞かれた時、あれはウマいですよ、って言いたかったんだよね~、と。
 そんな日本のオジサマ・ギャグも懐かしく、久しぶりの中華を食べながら、水問題の疲れも風邪も吹っ飛んだような気がした。

 水がなく風邪もひいて落ち込んでいた私には、日本の家族に会えたような気持になり、とっても嬉しかった。
 シャワー浴びにどうぞいらして、という暖かいお言葉は今も心に深く響いている。そして私の父くらいの年齢の方々が、こんな山奥まではるばるいらして、私の愛するラグーザを描いてくださるとは・・・。
 何かどうしてもこの感謝の気持ちを伝えたかった。

 皆さま、どうぞお気をつけて。そして楽しいご旅行を!シャワーも浴びず、ボロボロの姿で失礼いたしました!

ヒャヒャヒャッ・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-21 01:05 | 菓子 | Comments(12)

イタリアで風邪をひいたら

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 イタリアの風邪はイタリアの薬でないと治らない、とある友人が言っていた。そうかもしれないな、と最近思う。
 日本の風邪薬はなんだかゆる~りとしか効かない。ところが、これを飲んでみると、ジワッジワッと何かが効いている感じ。体のだるさもすーっと抜けて、いつ間にか掃除なんかしていたりして。

 その魔法の薬は、イタリアのどこの町薬局でも売られているEFFERALGANエッフェラルガン500mg。16錠入り5.5ユーロ。1日3回、大人は1回1錠、13歳以下の子供は1/2錠をコップ一杯の水に溶かして飲む。

f0133814_6421095.jpg シュワ~~ッ、シュワシュワシュワ!!
 楽しい薬。味は少々苦いけれど、薄めのスポーツ飲料みたいで飲みやすい。

 風邪だけでなく、頭痛、歯痛、寝違えた時の痛み、肋間神経痛、生理痛などの様々な痛みに効き、解熱作用がある、と説明書に書かれている。
 イタリア旅行中にそんな症状に悩まされることがあったら、ファルマチーアFarmacia薬局に行ってぜひこれを。

f0133814_6423613.jpg 風邪をひくといつも思うのが、イタリアのティッシュの質の悪さ。
 日本のような箱ティッシュもあるにはあるが、中身が少ないわりに高いので買わない。イタリア人もファッツォレットFazzoletto(ハンカチ)、と呼ばれるこのタイプのティッシュを使っている。薬局やスーパー、さらにタバッキでは単品でも買える。
 しかしながらこのティッシュ、薄い紙が2~3重になった硬め仕上げなので、これで鼻をかみ続けるとあっという間にトナカイ顔に。最近私はリップクリームを鼻下に塗りながら使っている。

 ちなみにリップクリームも薬局だけでなくスーパー(レジ近く)、タバッキ(電池の近く)で買える。名前はlucida labbraくちびるキラリ!、あるいはcrema per labbraくちびるクリーム。ワオ!
 
 そして鼻をかむ時はビー!、ブー!、ブヒー!、けたたましい音で盛大に。イタリアでは鼻をかむ姿は恥ずべきものではない。あくまでも堂々と。きれいな女性でもこれを平然と、そして丸めたティッシュをポケットに・・・、なんてこともざら。

 旅行中の突然の風邪や痛みにはこの薬でいいけれど、鼻炎持ちの方はティッシュ持参がお勧め。箱を潰して、中身だけをビニール入れて、イタリアで再び箱を組立中に入れれば使える。鼻炎持ちの友人がそうしていた。

 あれは確か「花せれぶ」というものだった。イタリア硬質ティッシュなら、鼻あれぶ(荒れぶ)かな。

ビー、ブー、ブヒー・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-20 07:39 | 生活 | Comments(10)

水なし生活2日目

 昨日から水が無い。またこの問題で生活のリズムがすっかり崩れた。
 シチリアには現代生活に当然必要な水道網がない。各家庭の屋上や屋根裏、あるいは地下には貯水槽servatoio, cisternaがあり、市の水道管から毎日、一定時間放出される水がそこに貯められる。蛇口をひねれば好きなだけ水が使える日本やイタリア本土では考えられない生活スタイルだ。(写真:屋根の上の貯水槽)

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 水の供給時間は公的には朝7時~12時頃までという。しかし我が家には毎朝1時間ほどしか水が届かない。しかも一旦、貯水槽が満水になると、それ以上は水が4階屋根裏の貯水槽に上がって来ることはない。
 それは、モトーレmotoreと呼ばれる違法モーターを使って、近所の人々が市の水道管から水を強引に吸い上げるからである。皆が我先にと水を引き上げれば水道管の水圧が一気に下がり、モーターのない我が家には水が上がって来ないのである。
 これがシチリアの水問題の基本的な状況。
::::::::::::

 さて、昨日シャワーを浴びているとき、水量が急に少なくなった。考えられる理由は2つ。停電か、水が終わったか。停電ならば、貯水タンクから水を押し出すプレスコントロールが止まったことになる。水なら・・・、言わずもがな。
 石鹸の泡が付いたまま水が終わるのと、風邪なのにドライヤーが使えず髪が濡れたままでいるのと、どちらかがましか思わず冷静に考える。慣れとはこういうものか。
 シャワーを終えて電気のスイッチに触れると、煌々ととライトが付いた。ああ、問題は水か。

f0133814_1420156.jpg とりあえず水がどれくらい残っているか確認するために屋根裏の貯水槽を見に行くことにした。
 この梯子を登った所にそれはある。

 水問題が度々起きるため、梯子は常にこうして置いてある。

f0133814_14175074.jpg こんな細く急な梯子をソロリソロリと。
 普段ならルカと共同作業でどちらかが梯子を支えるのだが、この時は一人だったのでとにかく冷静に。落ちないように。

 ちらっと写っているヘンテコなズボンは・・・。

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 屋根裏ファッション。
 シャワーキャップ、懐中電灯、テラス用サンダル(本当はスニーカーがベスト、階段の途中で脱げると危険なので)の他、エプロン、ジャブジャブ洗えるフリースとズボン。ズボンはつまずかないよう裾を3重に折リ上げて。足は怪我しないよう厚手の靴下。これは唐辛子繊維入りの冬用ポカポカソックス。
 準備完了で登るとそこは・・・。
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 こんな感じ。汚すぎて全部はお見せデキマセン!砂埃、丸太、余ったタイル、ハトの糞、鳥の卵があったりする(何の鳥か不明)。
 左のライトを探すために懐中電灯が必要。右が貯水槽。その前にあるのが水を押し出すプレスコントロール。これがないと屋根裏から水が惰性で落ちるだけ。シャワーはチョロチョロ。
 そして貯水槽の蓋を開けてみると・・・。
 水は底1センチも残っていなかった
 
 緊急事態なので、大学にいるルカにメッセージを。すると数分後、今日はこれで授業が終わりなのですぐに帰ると連絡があった。屋根裏ファッションを脱ぎ棄て、二人で近所に飲料水のペットボトルを大量に買いに行き、店で聞いてみた。水はありますか?
 昨日は来なかったけれど、今朝ちょっと来たわよ、と平静に答える客のシニョーラ。こういう状況が普通だと思っている。
 店の主人も君たちはモーターを付ければいいんだよと言う。それが違法であることを誰も知らない、いや、知っていても水がなければ生きていかれない!と権利を主張して皆が設置している。

f0133814_14191972.jpg そんな自分さえ良ければいい、目先のことしか考えない、大きな問題に立ち向かわず手っ取り早い方法で自分の周りだけ解決しようとするシチリアのやり方に幻滅する。こんなに素晴らしい文化と自然に囲まれ、素朴に暮らす人々が、なぜ水問題に対してはこうも利己的になるのだろう。

 嘆いていても仕方がない。近所の事務所で働く友人に、いつもの通り、水汲みに車を出してもらった。私は風邪で自宅待機。情けないな。
 25リットルのタンク4つで100リットル。これでとりあえず、今日の生活をしのぐ。こんな時、一人暮らしの老人や病人のいる家庭ではどうしているのだろう。

 さっき、わずかながら水が届く音がした。それと同時に、隣の家のモーターが普段にはない鈍い音で大量に水を吸い上げているのが壁伝えに聞こえた。虚しい響きだ。
 そして道端からも聞こえてきた。
 今日は水が届かないわね~!そうそう、だから新しい家に行くところなのよ!あ、そうなの。チャオー!チャオー!

 ラグーザ人は町に1件、海にも1件家をもっている。水がなくても逃げる場所があるから、水問題を深刻に受け止めないのかもしれない。
 この町ばかりでなく、この島全体の意識が変わるにはまだ1世紀くらいかかるだろうか。

水よ届け・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-19 18:04 | 生活 | Comments(4)

黄と緑の輝き

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 春のシチリアの大地。
 長い冬の終わりを誰よりも早く感知し、人知れぬ間に一気に萌え出づる野の花と緑。凍てつく寒さに打たれても、過酷な陽射しに焼かれても、この季節になれば必ず蘇生する。この偉大なる自然の生命力。シチリアの大地に根付く息吹から、この地の人々は忍耐強さを学んできたのかもしれない。

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 ラグーザからカターニアに向かう長距離バスからの風景。今しかない春の姿を追う。
 アフリカからシロッコ(季節風)が吹いていた数日、シチリアの湿度は高く、視界が鈍り、砂漠の赤い砂がもたらされていた。ヨーロッパにいながら異国情緒を肌で感じる。

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 瑞々しい緑の絨毯に、黄色の輝きが添い寝する丘。ここに横たえ、春の景色に同化してみたい。

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 沿道両脇に広がる春の輝き。この黄色には底知れぬ明るさと生命力を感じる。

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 天然の牧草地に放たれる牛たち。春を喜んでいるのは人間だけではないようだ。

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 モンティ・イブレイMonti Ibleiの一帯では、これから5月にかけて様々な色の花々が咲き乱れる。赤、ピンク、赤紫、オンレジ、黄、薄紫、青、白・・・、その可憐な姿に秘められた尋常ならぬ生命力に出会うのはもうすぐだ。


 ボローニャのサン・ペトローニオ大聖堂の楽長だったマウリーツィオ・カッツァーティ(Maurizio Cazzati, 1616-1618)のチャッコーナCiaccona
 テオルボが静かに提示するバッソ・オスティナート(繰り返されるバス定型、ドドドソ、ラファファソ、ド)に他の楽器の多彩な声が応え、自在な変奏が展開されていく。その様子はまるでシチリアの春の密かな萌芽から、一気に野生の草花が咲き乱れる過程を聴くかのよう。
 この明るさと生命の喜びに満ちた躍動感!ぜひ感じてください!


追伸:このグループ、Arpeggiataアルペッジャータは古楽演奏のみならず、イタリアやスペインの古い民謡(あるいは民謡に基づく音楽)もレパートリーに持っているようです。
 南イタリアのタランテッラTarantellaとプーリア州のピッツィカレッラPizzicarellaも必聴!
 音楽家とはこうあるべき、と思わせる演奏。


春の輝きと躍動感・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-18 10:22 | 音の絵:写真と音楽のコラボ | Comments(10)


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


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2013年11月、共著出版



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