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ジェラティーナ -農民の知恵の味-

 夕方の買い物帰り、爽やかな酸味と少し甘いような肉汁の匂いを風が運んできた。少し先の肉屋から光が漏れている。
 覗いてみると立ち込める蒸気の向こうで、青いエプロン、長靴、ゴム手袋姿のシニョーラが様々な形の肉片と戦っていた。聞くとジェラティーナgelatinaを作っていると言う。大理石の肉さばき台は、茹で上がったばかりの肉塊で一杯になっている。後ろには四角いアルミのオーブン皿が山積みに、その横には巨大な銀の鍋が無造作に捨ててある。こうして作るのか。初めて見た。繊細な味なのに体力勝負の仕事だ。

f0133814_17242071.jpg これから冷蔵庫で固め、明日には店頭に並ぶから。そう言われ、翌日早速買いに行った。
 ジェラティーナはラグーザ県一帯の地元の味。その昔、豚肉の良質な部分が貴族の食べ物だった頃、貧しい農民たちは残った豚の頭や耳、足などを集め、臭みを消す調理法を考え付いた。それが今でも郷土料理として人々に愛されているのだ。

 ジェラティーナの作り方はシンプルだが少々手間がかかる。
 まず、豚の頭、耳、足を軽く焼いて12時間水に漬け、血を抜く。それらを良く洗い、大鍋に4対1の割合の水と酢レモンのスライス、塩を入れて2時間半煮込んだら、肉を布の上に取り出し、硬く筒状に巻いて冷蔵庫で冷やす。鍋の湯で汁は捨てず荒熱を取り、上澄み油のゼラチン部分をすくって一度軽く火を通す。肉が冷え固まったら2cmに薄切りし、容器に並べ、ゼラチンを流し込んで冷蔵庫で冷やす。これが固まったら、もう一度上にゼラチンをかけ、唐辛子を散らして再び冷やす。完全に固まったら出来上がり。

f0133814_17253030.jpgf0133814_17312336.jpg
 この出来立てのジェラティーナに、昨日買ったばかりのカルチョーフィcarciofi(アーティチョーク)のソテーを添えよう。ワインはネーロ・ダーヴォラNero d'Avola、パンはセモリナ粉100%のパニョッタpagnotta。地元の味三昧のランチ、考えただけでうひひである。

f0133814_17255079.jpgf0133814_1726994.jpg カルチョーフィの可食部分は少ない。
 茎と葉は捨て、柔らかい部分が出てくるまで花びらを剥がし続け、頭先は切り落とす。するとロゼッタのような姿に。
 どこまで剥くのか、その加減が難しいところ。

f0133814_17263076.jpgf0133814_17265612.jpg ボールに水とレモンを入れ、剥いたカルチョーフィを入れる。
 こうすると黒く変色しない。ちょっと大きすぎたので切り直した。
 ああ、この黄緑、薄黄色、赤紫が溶け合う美しさ。

f0133814_17272065.jpgf0133814_17274487.jpg 下準備が出来たらフライパンにオリーヴ・オイル、にんにく一片、唐辛子を入れて軽く熱し、カルチョーフィを投入。ここで塩も一振り。
 何となくしんなりしてきたら、水を少し足し、蓋をして蒸し焼きする。全体が柔らかくなるまで、水を加えて火を通し続ける。

f0133814_18404481.jpgf0133814_17293729.jpg
 ジェラティーナは材料の不気味さを忘れるほどさっぱりとして、東洋的な味を彷彿させる。チャーシューのような甘い肉の味に、少しコリッとする食感がたまに来て、それをレモンと酢の味がさっと包み込む。何となく湯で豚を酢醤油で食べるような感覚。そして唐辛子のピリリが舌を刺激し、ああもう一口と手が伸びる。
 地元ではオレンジのサラダ(オリーヴ・オイルと塩をかけ、にんにくの芽で香り付けしたもの)と食べるのが一般的だが、どんなサラダとも良く合う。
 そしてカルチョーフィとの相性も抜群だ。とんこつラーメンやタイラーメンに入れても最高に美味しかった。今度は細切りにして、手巻き寿司にもしてみようかとも思案中。東洋的な味だけにアイディアも広がる。

 農民の厳しい生活から生まれた知恵の味。しかし日々の苦労を思わせないほどさっぱりとしている。ラグーザの空を流れる筋雲のように。
 真の美味しさを知り、豊かな食文化を築いてきたのは、貴族ではなく彼らだったのだろう。

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by hyblaheraia | 2007-11-29 19:11 | 料理 | Comments(10)

タスコ -シチリア男性の象徴-

 ドゥオーモ広場に何をする訳でもなく集まる男たち。くたびれた背広と革靴、手には杖、頭には皆同じような帽子。立ち話する者もあれば、ベンチに座り潤んだ目でじっと鳩を追う者もいる。
f0133814_713927.jpg そんな映画のワンシーンに出てきそうなシチリアの老人になくてはならないのが、コッポラ帽だ。ラグーザ弁ではこれをタスコtascoと呼ぶ。
 発音はタシュコ、定冠詞を付けてウ・タシュコu tascoがより正しい。
 今日はそのタスコを買いに、近所の農業・生活洋品店に行って来た。いろいろ種類があるので店のおじさんに聞いてみると、満面の笑みでハハハ、タスコかい?と嬉しそうに説明してくれた。
 この棚にあるのが伝統的なタスコ。トップにボタンが付いたキャスケット風のものも、所謂コッポラ帽もどちらもタスコなのだそうだ。しかし・・・

f0133814_7235334.jpgf0133814_7241062.jpg右はベレー帽で
berretto。
f0133814_7243013.jpgf0133814_724523.jpgこれは帽子で
cappello。


f0133814_7252074.jpg プレゼント用なので、やはり伝統的なタスコにした。選んだのはこの2点。一目見て色が気に入ったキャスケット風は、ブルーとイエローの柔らかな風合いのチェック柄。もう一つはいかにもオーソドックスなコッポラ風でグレーの千鳥格子柄。
f0133814_730177.jpgf0133814_7302133.jpg 前部分のボタンで高さが調整でき、後ろも思った以上に深い。寒い日に広場で時間をゆったりと過ごすにはこれくらい頭を隠さないとだめなのだろう。なかなか合理的に、しかもお洒落にできているな。これを被ってマフラーを巻いたら、気分はシチリア熟年男性。

f0133814_7262931.jpg こんな粋な感じになるだろうか。
 シチリア最南端の岬、ポルトパーロのカンタストーリエ、歴史歌いcantastorie、ジュゼッペ・ペトラリトGiuseppe Petralito (1882-1980)。
 夏に旅行した時にアンティーク・ショップで彼の本を見つけた。農民の生活、祭り、戦争などの弾き語りの台本が、ポルトパーロ弁の用語解説とともに載せられている。厳しい自然と労働、貧しい生活、そこで使われた彼らの言葉。シチリア各地の方言と生活を知るときには、いつも深い尊敬の念が満ちてくる。
 歴史歌いにはやはりこのタスコがなくてはならない。シチリアの男の象徴なのだ。

f0133814_8501066.jpg シチリアへの尊敬を込めて日本へのお土産にした2つのタスコ。果たして日本人に似合うのだろうか。
 鎌倉彫の面に被せてみたが、ちょっと怖いか・・・。

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by hyblaheraia | 2007-11-28 09:01 | 伝統・技術 | Comments(14)

月明りに戯れる

 眩い光が天から降り注がれる夜。隣接する家並みも、テラスの植物も欄干も、普段の闇では見えることのない影を静かに落としていた。
f0133814_02946100.jpg 推敲という言葉は、こんな月明かりの下で生まれたのだろう。
 僧推月下門(僧は推す月下の門)

 唐の詩人賈島(かとう)がロバに乗りながら詩作をしていた。
 推す(おす)を敲く(たたく)にすべきか迷い、門を押したり敲いたりしながら考えていると、役人の行列に怪しまれて捕らえられてしまう。長安の知事で文人でもあった韓愈(かんゆ)の前に突き出された賈島は、事の次第を説明すると、それは「敲く」が良かろうと韓愈が答えたという。
 1700年ほど前の話に基づく有名な故事に、思いを馳せる。

f0133814_0303026.jpg それで蛍雪の功も思い出した。これほどの月明りなら、文字も読めるのではないか。ペーパーを月夜にかざす。ああ、確かにこうして十分読める。

 孫康映雪、車胤聚蛍
 昔、晋の車胤(しゃいん)は、火を燈す油も買えぬほど貧しく、を集めた光で書を読んだ。孫康(そんこう)もまた窓辺の明りで勉学に励んだ。後に両者は役人として出世したという。
 子供の頃から、この故事が好きだった。人が寝静まった夜に、彼らだけが知っている明るさがある。そこで集中した時間を重ね、知識と知恵を得ていく二人。悲壮感や苦労談だけではなく、いついかなる時でも人知れぬ僅かな空間で学ぶことができるという、その喜びが感じられるからだ。
 その後も、月夜の青白い地面に電柱の影が落ちるとき、何度かこの故事を思い出した。今日も同じように影が描かれている。ルカをテラスに呼び、影絵で遊ぶ。

f0133814_0321714.jpgf0133814_0323788.jpgf0133814_033157.jpg
f0133814_0312345.jpgf0133814_0314119.jpgf0133814_0315767.jpg
 左:メツキワルワル星人 背中に包丁が刺さっていても痛くないのだそう。
 中:ペロリザウルス 夜中のお菓子を探しにやってきた。
 右:ウサギに応援されるフトッチョパルディーノ 月にジャンプするのが夢。

f0133814_0353676.jpg 月はいよいよ高く昇り、輝きも増していく。その光を全身に受けたジャスミンは、自分と寸分違わぬ見事な影模様を見せる。
 高くなるほど、影も色濃く染まりゆく。こんな夜は初めてだ。

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f0133814_3293570.jpg あまりの美しさに影をすくってみたい衝動に駆られる。でもすくえない。せめて、この身体に影を映してみたい。腕にジャスミンのタトゥーをしてみる。こんなのがあったら素敵なのに。シチリアの若者はどうして漢字を刻むのだろう。しかも間違っていたりするし。
 インドのメヘンディMehndiのように手にもジャスミンの蔓模様を入れたら・・・。

 こうして時間を忘れた月との戯れ。人間は月明りの下で、思っている以上のことができるのかもしれない。
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by hyblaheraia | 2007-11-27 03:13 | 自然 | Comments(2)

オリーヴの塩漬け

 初めは出来た商品を買っていたが、自分で作るようになったものがいくつかある。自宅で乾燥させ手揉みする野生オレガノ、筒とフレッシュ・リコッタを買って自分で詰めるカンノーリ、生地から作って揚げるラグーザ伝統のフリッテッレ(揚げ菓子)、テラスで育てたバジリコを刻んだバジルソース、ラグーザ製サヴォイアルディを使ったルカ風テラミス、冬に隔日で焼く朝食用パウンド・ケーキ。
 全てに共通しているのは、安く美味しく、たくさん食べたいという気持ちだった。そして今日もまた、自分で作る○○シリーズに新顔が増えた。

f0133814_3565332.jpg それはオリーヴの塩漬け。シチリア南東部の丘陵地帯、イブレオ高原産monti iblei産のオリーヴは、小ぶりで実が引き締まり、青々とした風味が特徴である。これを使ったキアラモンテ・グルフィChiaramonte Gulfiのオリーヴ・オイルは名だたるコンテストで金賞を受賞する名品揃い。
 そのオリーヴを塩もみし、にんにく、唐辛子、セロリ、フィノッキェット(フェンネルシード)、イタリアン・パセリなどと共にオイル漬けにした特産品がある。無類のオリーヴ好きの私としては、小腹が空いた時にチビチビつまみ、至高の幸せを味わう一品だ。
 あのオリーヴが常に家にあったら・・・。
 八百屋の店先で売られる収穫直後の生オリーヴ1.5kgに、遂に手が出てしまった。
 店のシニョーラは、塩水に漬けて朝夕水を取り替えたら3~4日で出来上がると言った。そこにオリーヴオイル、にんにく、唐辛子をかけて食べたらmm~!ミントも入れると最高よ!聞いた瞬間、制御不能に。

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 オリーヴの葉や砂などが混入しているので、まずは洗ってごみを取り除く。その後重曹bicarbonatoを入れた水に10分ほど漬け置く。こうするとガスが発生し、表面の細かな埃もきれいに取れる。ここの野菜は泥だらけなので、我々はいつもこうして洗う。
 きれいに洗えたら、表面のきれいなものと汚いものに選別する。手前はきれいなもの。

f0133814_41499.jpg しかし見れば見るほど、汚さにも種類がある。初めての作業で良く分からないので、汚いオリーヴ標本を作ってみた。左から1、2、3・・・と番号を付けると:
 2、5、7は表面が黒く傷んでいたが、ナイフで削ると中は白くきれいだった。これは使える。
 一方、1、3、4、6は虫食いの小さな黒い穴が開いており、どんなに削っても中まで虫の通った黒い道があった。こういうものは種の中に虫がいたりするので、きれいな部分だけ削ぎとってあとは捨てる。ルカは前に、種に入った虫を見つけてこのオリーヴを買いたがらなくなった。食品の混入物にはちょっと神経質なA型。対する私は、胃液で溶けるから大丈夫!と適当なB型。

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 時折、標本を見ながら汚さ基準を確認しつつ、傷んだ黒い部分は削り取る。虫食いもできるだけ取り除こうとしたが、一度もぐりこむと中まで進出するようで捨てるしかない。虫だってこんな美味しいオリーブ、一口でなんて止められないのだろう。
 それでも虫食いで捨てたのは20粒のみ(写真右)。本当にきれいなオリーヴだった。手前は優良オリーヴ、奥はやや難あり。
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 さて、きれいになったオリーヴを今度は押し潰さねばならない。八百屋のおじさんは、野菜の入った木の柵で叩き潰して見せてくれた。確かに指や手で潰せるような代物ではない。瓶の底で潰すつもりだったが、とてもとても。金槌を取り出し、そのままでは硬すぎるので、布とビニールで巻いてみた。てるてる坊主に似た、オリーぶるぶる坊主。
 テーブルでガンガンやるわけにはいかないので、床に薄いクッションとビニールを敷き、そこで試す。が、ツルン!コロン!ピョーン!だめだめ、作業にならない。
 使い捨ての皿を置き、その端のくぼみに固定させてコン、コン!と潰す。おお、これだ!この方法だ。こうして作業のコツを得ていくのも楽しい。

f0133814_494886.jpg 割ると中身はこんなに白い。青りんごのうっすらとした若い苦さを思わせるフルーティーな香りが漂う。皿の上にはオリーヴのミルクが点々と。絞りたての果汁がこんな乳白色だったとは驚きだ。そして美しいエメラルド・グリーンの果実。
 ああ、こうして一粒一粒きれいにし、丹精込めて潰す作業に心が満ち足りていく。商品を買って完成された味を楽しむのもいいが、やって見なければ一生知ることはなかった作る喜びに、しばし酔いしれた。

f0133814_4103231.jpg 最後は、潰したオリーヴを塩水に浸す。塩の量は人によってまちまちだが、とりあえず舐めて塩っぽいと思うくらいの量にしてみた。様子を見て加減しよう。
 ちなみに容器はガラスと陶器。ステンレスだと変色しそうだし、プラスティックでは匂いが移りそうな気がしたので。手前ガラスが優良オリーヴ、奥の陶器は難アリ君たち。
 どんな味に変化して行くのだろう。これから毎朝、毎晩、水を取替えるのが楽しみだ。

 いつも行く小さな食材店で業務用の巨大なオリーヴの瓶を見つめ、これをまるごと買ったらおいくらですか?とシニョーラに聞き、そんなに好きなの?と笑われた。
 あのオリーヴが常に家にあれば・・・。その夢は膨らみ、少しずつ現実になりつつある。

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by hyblaheraia | 2007-11-24 09:42 | 料理 | Comments(11)

権利と義務

 雨が降るからといって水がなくならない訳ではないだろう。激しく降る雨を見ながら、ふとそう思った。そしてその通りになった。

f0133814_18531647.jpg 一昨日、我が家には水が届かなかった。この「届かない」という表現は断水ではなく、水はあるのに我が家にだけ来なかったという意味である。
 隣近所のベランダでは、洗濯された大きなシーツが風に揺れ、水があることを伝えている。ああ、またか。また家だけか。気が滅入って来る。
 いやいや、落ち込んでいてもだめだ。今日の水を確保せねばならない。ルカは友人に電話し、SOSを送る。農業用品店で買った25リットルのタンクを4つ用意し、友人の車で少し離れたカップッチーニ教会広場の水飲み場へと向かうのだ。「漏斗(ろうと)も持って行って!」夏にもやったことがあるので、水を入れるのに漏斗が必要なことを思い出した。こんなこと、慣れたくはない。

 シチリアの家庭には、貯水槽が2、3個、屋上や屋根裏などに設置され、ここに毎朝一定の時間に市の水道管から水が配給される。蛇口をひねれば、好きなだけ水が使える日本とは違い、こうして一日一定量の水を大事に使わねばならないのだ。

f0133814_18533878.jpg 我々は決して水を無駄にするような生活はしていない。洗濯は必要な時だけ節水コースで、入浴はせずシャワーしか使わない。食器洗いも汚れの少ないものから始め、すすいだ水を有効に使っている。そんな涙ぐましい努力も、たった一つのことで無意味になる。
 それはモーターmotoreである。縦に長い3、4階建てが一般的なラグーザの家では、市の水道管から送られてくる水の圧力では最上階にまで少量しか届かないため、水を引き上げるためのモーターを付けているのである。しかし、後で知ったのだが、これは違法なのだ。
 それを知っていてかどうかは知らないが、人々はモーターを設置する。水がなくては生活できない!と主張し、水を得る「権利」という言葉で違法行為を違法でなくしてしまうのだ。確かに、権利ではあるが、水を皆同じ条件下で得るという「義務」は何処へ行ったのか。自分さえ良ければ、という考えが自己を守るために使われるのは悲しいことだ。

 こうして周囲が当然のことのようにモーターで水を強引に引き上げると、我々の水も奪われてしまうのだ。もし我が家もモーターを付ければ、どこかの一人暮らしの老人宅で、水がなくなるかもしれない。
 なぜ市民一丸となって行政と戦わず、モーターという手っ取り早い方法で解決するのだろう。外から来た者として腑に落ちないことの一つである。シチリアの水道と鉄道業界は、背後にマフィアの手が潜んでいるというが、どうせ勝てない、嘆くしかない、ならば自分の周囲だけは堅固に守ろう、という悪循環はどこかで断ち切らねば終焉がない。
 水無し生活は今年で4回目。近所の人も、モーターを付けなさいと言う。が、違法を知っていて付けることなど絶対したくない。そういうメンタリティーが嫌いだ。多少の我慢をしてでも、自分たちが大切に思うことを大事にしていきたい。

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追伸:強がっていられるのも今だけ。年を取ったら、こんな水汲み絶対に無理!毎日、全く水が来ない状況になったら、モーターを付けるしかないのでしょう・・・。その時はご報告します。
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by hyblaheraia | 2007-11-21 20:08 | 生活 | Comments(12)

ラグーザの暖房事情

 ラグーザの長い冬が始まった。これから本格的な春の声を聴くまで、植物も人間も息を潜め、体力の温存期間に入っていく。生命力が爆発する夏に向けて、生きとし生ける物が経ねばならぬ一年のリズムである。

f0133814_732778.jpg 今年は寒さの訪れがいつになく早い。数日前に最低気温が3度にまで下がり、霰(あられ)も降った。
 その叩きつける勢いでバジリコの葉は破れ、ジャスミンは引きちぎられ、多肉植物の表面には傷が残った。
 雪になるかと心配したが、大雨と落雷、最後には晴天と目まぐるしく天気が変わった。
 そしてどんな時にも、ただ寒い。寒かった。
 
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 翌日は正午でキッチンが11.6度。吐く息が白い。冷蔵庫並みの寒さだ。フリースは既に10月から、今はタイツに厚編みの靴下を重ね、裏が起毛のズボンをはき、上は4枚重ね着している。まだ11月なのに、普段の1~2月の重装備。
 パソコンや机に向かっていると、寒さで集中できなくなる。そんな時は作業を中断して南側の窓に椅子を置き、日光浴をする。太陽の光は凄い。ただ浴びるだけで、じわじわと温まってくるのだから。でも夜はどうにもならない。そろそろ暖房が必要か、と考える。が、ちょっと面倒なのだ、これが。

f0133814_7292940.jpgf0133814_7281584.jpg 我が家の暖房の中枢はテラスの一角にある。この金の扉(銀の棒にも注目)を開けると、中に巨大なガソリン・タンクラジエーターがあり、ガソリンの燃焼熱で室内の暖房器具に湯を送り込むというシステム。
 ラグーザでは一般的なガスオーリオ式というものだが、ガソリンの購入と注入が大変なのだ。

f0133814_729570.jpgf0133814_7294551.jpg まずはガソリン会社に注入日の電話予約をする。我が家は細い一方通行の道に面しているので、ガソリン車は人の往来の少ない早朝7時にやって来る。
 長いホースを地上から4階(イタリア式の3階)までロープで引き上げ、写真左のボルトを開け、そこから注入するのだ。高所の作業なので、予約した日が雨だと延期になる。
 ガソリンの残量を測るには、銀の棒(写真上の上:金の扉に立てかけた)をボルトの奥までしっかり差し込み、取り出す。棒の先何cmがオイルで濡れているかで残量を読むのだ。こんな原始的な方法をどこの家でもやっている。
 スイッチの確認も目と耳に頼る。ガソリンを燃やすと、ゴーッという音とともに煙が出るので、この音と煙を確認してから家に入る。不完全燃焼が起きては恐ろしい。いや、キッチン横にガソリンが300リットルもあること自体が恐ろしい。

f0133814_942343.jpg さて、こうしてガソリンを燃やすと、家の中ではこのテルモシフォーネtermosifoneに湯が通って来る。触れられないほど熱いのならいいが、触れられてしまう程度の熱さ。これが各部屋にあり、2時間付けて16~17度が精一杯だ。
 しかし人間の身体は幸せなことに、2、3度上がるだけで暖かくなったと感じるものなのだ。真冬の室内10度を体験すると、今日は12度もある!などと言うようにさえなる。我々にとっては15度息が白くならない暖かい家。十分幸せなのである。
 ナポリの親戚の家で、18度しかないから暖房をつけよう、という声を聞いたときに、我々がいかにストイックな暮らしをしているかを笑った。真冬はここに二人で張り付いて、我慢大会を実施している。
 

f0133814_7411329.jpg 今年はまだガソリンを買っていないので、暖房も点けていない。
 寒い夜は、ルカがこんなものを作ってくれる。りんごを細く切り、シナモン、クローブ、生姜、蜂蜜で煮込んだもの。身体が芯から暖まる。

f0133814_7413527.jpg それでも寝る時は足が寒い。とうとう湯たんぽも先週から登場した。電気あんかを日本から持ってきているが、変圧器を通すと電気を大いに消費すると聞いたのでやめてしまった。我が家の湯沸かし器は電気式なので、電気代を押さえる努力は惜しまないのだ。
 最近は、昼の勉強にも湯たんぽを抱えている。

 こんな暮らしをしていると、リモコン一つでヒーターを点けていた日本の生活が今では罪深いものに感じてしまう。電気もガスも、湯も水も、エネルギーと人との関係がここでは全く違う。
 電気は二人がいる部屋だけ、湯沸かし器は就寝前に点け、翌朝シャワーを浴びたら消す。水は一日一定量、タンクへの給水式なので無駄使いは絶対にしない。都市ガスは通っていないのでボンベを買って大事に使う。だから日本から来客があると、とにかく電気を消しまくり、水を無駄にしないよう力説している。
 それでも家族が来た時は、電気代が普段の約1.5倍になり、水が底を突いた日もあった。そんな「シチリアの山奥で、最小限の水と最小限のエネルギーで暮らしている」娘夫婦を、両親は驚きつつも感心していた。

 家に籠もりがちの冬、いかにエネルギーを無駄にせず生活するかが、我々デスクワーク夫婦の課題である。寒さ解消方法としてはりんご煮、湯たんぽ以外に、CDを聴きながら歌う、それでもダメなら音楽に合わせて激しく踊る、という自己発電を行う。
 ただ、クリーンなエネルギーであるはずなのに、踊ると埃がたってクリーンではなくなるのが難点ではある・・・か・・・。

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by hyblaheraia | 2007-11-20 12:11 | 生活 | Comments(10)

手作りフリッテッレ -癖になる伝統の味-

 それは繰り返しの魔力なのかもしれない。どんなに美味しいものでも毎日食べると飽きが来る。それでも食べ続けていると飽きが慣れに変わる。それでもなおかつ食べ続けると、慣れは癖になる。そんな過程を我々は身体で感じていた。
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 先日の揚げ菓子祭りの最中、あれだけ食べ続けたにもかかわらず、なぜかまた食べたくなってしまったのである、この油っぽい菓子を。そして、ああ遂に、作ってしまった。何となく和な雰囲気に出来上がったので、ラグーザ模様の箸を添えて。

f0133814_031193.jpg 実はバールへ買いにいったのだが、揚げ菓子はもう作られていなかった。祭りのための菓子だからだそうだ。ああ残念、と言いながらも我々は巨大なプロフィッテロールを見つけ、迷わず2つ買う。

 レジでバールのおじさんは揚げ菓子の作り方を懇切丁寧に教えてくれた。パン屋のシニョーラにも、簡単だから自分で作りなさい、と言われた。確かに、売られていないのなら作るしかない。自分で作って美味しく食べよう。働かざるもの食うべからず!ちょっと違うが、そんな感じに盛り上がっていた。

f0133814_0315035.jpg おじさんに言われた材料と分量は以下の通り。

小麦粉 500g
砂糖  25g
油(コーン油かオリーヴ・オイル)  25g
ビール酵母 1/2
レーズン  100g(前日にリキュールに漬けて柔らかく戻しておく)
フィノキェット(フェンネルシード)  10g
塩 一つまみ

 この4分の1量で作り始める。手前にある小さな四角いものがビール酵母。

f0133814_0401662.jpgf0133814_0444116.jpg フィノキェットfinocchiettoは野生のものじゃないとだめだよ。おじさんは口を酸っぱくして何度も言っていた。
 ラグーザではこれをソーセージ、サラミ、鰯のパスタ、クッキー、パンなどに入れてよく使う。八百屋などで量り売りしてくれるので、瓶に入れて保管しておけば長持ちする。セロリのような爽やかな青さに、ほんのりとした甘みがある不思議な味。昔はどちらかと言うと嫌いな味だったが、4年ここに住むうちに、フィノキェットなしのソーセージなんて考えられないほどになった。慣れというのは癖になるのだ、本当に。


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 さて、ビール酵母をぬるま湯で溶かし、小麦粉に混ぜる。全体に混ざったら、さらにぬるま湯を少しずつ足し、ドロドロの状態を作る。それに埃が入らないよう蓋をして2倍に膨らむまで2時間ほど置いておく。家中が酵母の匂いに包まれ、ワクワクしてくる。
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 室内が寒かったので、3時間以上してようやく、ぷつぷつと泡が出てきた。2倍にはなっていないが、まぁ良いことに。ここに水気を切ったレーズンとフィノキェットを入れて混ぜる。
 ああ、あの匂いだ。習慣になったあの味が、もうすぐ再現される期待に胸が躍る。
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 油を用意し、後は天ぷらと同じ要領。生地を少し垂らして、シュッ!という音と共に上がって来るまで油が熱くなったら、軽く一さじ流し込む。生地がスプーンにくっ付いているので、指で剥がし取るように。バールのおじさんのジェスチャーを思い出しつつ。
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 4分の1量で作ったのにこんなに出来てしまった。これを何日間食べ続けるのだろう。そんな心配を他所に、ルカの魔の手が忍び寄る。揚げたてアツアツを頬張り、気付くと随分パレットに隙間が空いている。目を離した隙に、今度は砂糖をまぶしてキッチンペーパーに乗せて逃げるところだった。ちょっとー!何やってるの!!と追いかけ、一緒に食べてしまったり。
 以外と早くなくなりそうだな。もう明日にはないかも。

f0133814_3115165.jpg もう少し小麦粉が多い方が好みだったが、最初にしてはまずまずの出来か。
 思わずVサインが出てしまうような。あ、フリッテッロ君もイェーイ!

 思ったより簡単、材料費も安く(3ユーロくらい)、手作り菓子の楽しさと温もりが詰まったラグーザ伝統のフリッテッレ。今度は、これのおつまみヴァージョンをやろう、刻みエビ、刻み海苔を入れて!と、既に盛り上がっている。
 我々の揚げ菓子祭り、ラグーザ新市街にて年中開催!。

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お知らせ:2007年11月19日(月)、1:00~12:00頃、システムメンテナンスのためエクサイト・ブログへのアクセスができなくなるそうです。
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by hyblaheraia | 2007-11-18 03:58 | 菓子 | Comments(12)

過去と現在を繋ぐもの -gratitudine(感謝)-

 百という快い響きとともに、遠く各地から温かい言葉が届いた。持ち得る全ての感情でその一つ一つを抱擁し、感謝を伝えたい。高い空を見上げながら、きっと100歳の誕生日を迎える日も、こんな気持ちになるのかもしれない、と考えていた。
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 冷たい風が吹くこの日、空にはすじ雲が幾重にも伸びていた。この逸る気持ちを届けてくれるだろうか。

f0133814_37253.jpg エッチェ・オーモ教会Chiesa di Ecce Homoの周りでも、すじ雲が冷風に巻かれていた。氷の薄い膜が張ったかのように、普段とは違った凛とした表情を見せる風景。雪女を思わせる他言無用の美しさ。人に話せば、命を奪いにくるか姿を眩ます美女を、我々はただ遠くから見つめるしかない。
 上空の風はよほど強いのだろう。薄い白線は見る見るうちに姿を変え、北風に乗って教会の背後から迫り来た。
 ああ、この流転する空。もはや冬なのだ。これから雲観察の季節になる。

 すじ雲は正式には巻雲(けんうん)と呼ばれる。上空5000~13000mに現れ、小さな氷の粒でできているそうだ。国際気象機関が規定した10種の基本雲形のうち、これは最も高い所に現れる雲と分類される。空の高い所から順に層雲、層雲、層雲に大別すると、すじ雲(巻雲)とうろこ雲(巻積雲)、先日の天の輪を生じさせたうす雲(巻層雲)は、最も高い上層雲のグループに相当するのだそうだ。
 それだけ最近の雲は高い所にあるということだ。
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 夕方には大鷲が北東の空に舞っていた。家々の向こうに見える丘の町、パラッツォーロ・アクレイデPalazzolo Acreideからゆったりと羽ばたいて来たかのように。
 先史時代からの住居跡にシークリ人が住み、紀元前664年のコリント系シラクーザ人によってアクライAkraiと名付けられたその一帯は、ローマ、ビザンチン、アラブ、ノルマンと度重なる侵略を受け、町の名前もバランスルBalansùl、プラチェオルムPlaceolumもしくはPalatioliパラティオーリ、そしてパラッツォーロPalazzoloと変わっていった。1862年に当時の名に本来の名が加わり、パラッツォーロ・アクレイデとなるに至る。
 シチリアの町にはどこにでもある複雑な歴史と町の名前の変遷。東の空一杯に羽ばたく大鷲の姿に、3000年に渡る歴史を思う。ここラグーザもかつてはヒブラ・ヘライアHybla Heraiaと呼ばれていたのだ。

f0133814_31245.jpg 10分後の空にあの雄々しい大鷲の姿はなかった。強風の中、翼が次第に捥ぎ取られていったのだ。
 しかし同じ空で一羽の無垢な鳩が、生命溢れる飛翔を見せる。
 過去と現在との出会いは、こうして日々、どこかで、人知れず起き、過去は現在へと連れ出されていくのだろう。

 モンテ・ラーチMonte Raciの景色に言葉にならない何かを感じていたのは、私とヒブラ・ヘライアとの知らぬ間の出会いがあったからだ。その出会いに感謝し、この歴史と空間に流れる美しき魂を伝えていこう。そしてその美しさに共感してくれる全ての人々に、感謝の気持ちを伝えていこう。
 
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by hyblaheraia | 2007-11-16 08:02 | 自然 | Comments(6)

百のことばで綴るラグーザ -ブログ100回記念-

 4年前の11月初旬。大学赴任初の授業を終え、宿舎に戻る途中のルカは、興奮気味に携帯から日本に電話をかけきた。すごくきれいな町、でも階段だらけ!道に迷ったみたいだけれど尋ねる人もいない。この道かな、あ行き止まりだ!そんな声を聞きながら、ラグーザとは一体どんな所かと心配した。
f0133814_22493199.jpg が、まさに聞は一見に如かず。来て見ると一瞬にしてこの町の虜になった。何百件もの家々が渦巻状に寄せ合う中世の町並み、そこにバロックの華やかな教会がそびえ立ち、何百段もの階段が新市街へと続く。初冬だというのに青々と茂る椰子の木と燃えるような赤紫のブーゲンビリア、バルコニーの色採り採りの草花が、百花繚乱という言葉を思い出させた。辺りには野鳥の囀りと、一日に数百回も打ち鳴らされる教会の鐘が明るく響き、燦々と降り注ぐ太陽と青空が広がっていた。しかし数時間後には、百雷が一度に落ちるような激しい天候に見舞われることもあった。そんなラグーザの百様の息吹は、今も変わらず私の心に染み入ってくる。

 その後ここに住み始め、まず美食文化に百パーセントはまってしまった。何百キロカロリーあるかもしれないカンノーリをはじめに、カッサータ、フォカッチャ、サルシッチャ、アランチーニ、チーズやサラミ、ラヴィオリ、揚げ菓子、伝統菓子の数々、とどれも大百貫になりそうなものばかり。そしてワインだ。シチリアの血であるネーロ・ダーヴォラと、その涙であるインゾーリアは疲れた身体にも健康なそれにも良く沁み渡る。まさに酒は百薬の長である。
 地元の力強い野菜にも驚かされた。色濃く大振りの百生りの野菜たち、冬のミネストローネを彩る百穀、どんな季節にも切れることのない百花の宋(主要な果物)。それを持ってくる行商のラッファエーレの歌声は、何百万ものファンを持った亡きパヴァロッティにも聴かせたかったほどだ。次第に消え行く行商の歌声に、百感の思いを寄せるのは私だけではないだろう。

f0133814_0585042.jpg さらに雄大な自然に感服の毎日である。夜空を仰ぎながら、何百もの輝きの中に人工衛星を追い、流れ星や天の輪に出会い、遠くの雷光を見つめる時間は無になる自分を知る。雲の形と動き、空色の移り変わり、丘の植物にことのほか季節感を強く感じる今日この頃。自然の百態を愛でつつ、一年のリズムを肌で感じている。
 豊かな自然には野鳥も虫たちも共存する。見たこともない虫に刺されて百憂の思いだった日もあった。カルデッリーニやチンチャレッラ、メルロたちの子育てを興奮気味に観察し、雨の日はカタツムリを数えるのも、子供の頃の自然との戯れが原点なのだろう。三つ子の魂まで、あるいは雀まで踊りを忘れず、とは良く言ったものだ。ちなみに、盆踊りも私を熱狂させるアイテムの一つである。そしてラグーザの祭りもまた然りである。

f0133814_115090.jpg 彩色豊かなシチリアの伝統荷馬車を引く百万馬力の馬たち。百卉(ひゃっき、様々な草花)で彩られる聖人像の御輿。地元伝統料理と菓子の屋が並び、町全体がカラットの宝石のように輝く。こうした喜びの雰囲気が百代にわたって百黎(多くの民)の魂を熱くしてきたのだろう。
 ラグーザの美しい自然と伝統文化が、未来永劫続いていくことを願い、百害あって一利なしの公共工事と石油採掘には一市民として断固戦って行きたいと思うのだ。

 今年は野鳥、流れ星、人工衛星だけでなくUFOでも随分興奮した。シチリアの町、カロニーアで起きる謎の現象、そして百鬼夜行する謎の物体は、百里之命(一国の政治や政令)によって科学的な調査が行われ、宇宙人騒動が巻き起こった。百家争鳴(多くの学者が自由に論争すること)の結果だからもはや受け止めるしかない。ラグーザにUFOが来たら…、宇宙人にインタビューして原稿と写真を放送局に高い値で売りつけ、百万長者になれるだろうか。
 そう言えば、江戸時代に流行した「妖怪カルタ」を先日、授業でやって大いに盛り上がった。百人一首が手元になかったので、「耳なし芳一」を語って恐怖を募らせた後、スリル満点に遊んだ。最終回は「日本人と迷信」というリーディングの後に、実際に手相もやった。中という程ではなかったが、ある男子学生に彼女がいないことをピタリ言い当てたとき、これはイケると思った。老後は歳までイブラで手相占いでもしてみるか。

f0133814_2243536.jpg そんなラグーザで、具体的な年の計(将来の長い間の計画)は持たず、その日その日を楽しく過ごしている。地球の百八十度裏側の家族は、ハラハラして見ていることはも承知だが、意外と何とかなるものなのだ。
 川海を学びて海に至る
 (百川学海而至于海)
 多くの川が絶えず海を目指して流れ、ついには海に注ぐように、人も努力し続ければ目的に達し得る、ということだそうだ。
 ルカも私も互いに研究を地道に続け、誠実に生きていけば、百禄(多くの幸福)の人生を送ることができるだろうか。百里を行く者は九十を半ばとす…、と言うなら今は何里くらいを歩いているのか。最近生命線が手の甲にまで進出しているので、三百歳の人生はまだ始まったばかりかもしれない。

 本ブログ回目の記事となる今回、「ということば」でラグーザ生活を綴ってみた。いったい何回、を使ったのかな。ヒャッヒャッヒャッ、クー

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by hyblaheraia | 2007-11-13 21:19 | ブログ・・・周年とゲーム | Comments(29)

揚げ菓子祭り -サン・マルティーノ祭-

 夫婦は似てくるとは良く言ったものだが、まさにその通りである。昨日我々は同じ店で、同じものを買って来てしまった。
f0133814_20415930.jpg 左は私、右はルカが買って来たもの。
 良く知る店なのに、おじさんはなぜ何も言ってくれなかったのだろう?量が足りなくて、旦那が買いに走らされたと思ったのだろうか。
 
f0133814_20423233.jpg 包みの中身は揚げ菓子、フリッテッレfrittelleである。小さい揚げドーナツのようなもので、この店では3種類作られている。
 干し葡萄とフィノケット(finochietto、フェンネルシード)入りの伝統的な味の他、リコッタ・チーズクレーマ・ビアンカと呼ばれるクリームを詰めたもの、の3種。チョコチップ入りを作る店もある。この時期、ラグーザ中の菓子店、パン屋ではこの揚げ菓子が必ず売られている。

f0133814_20413575.jpg というのも、11月8日からラグーザの新市街中心部では、揚げ菓子祭りSagra della frittellaが開かれているためだ。
 毎年、サン・マルティーノ(聖マルティヌス)を記念する11月11日に合わせて行われるこの祭りは、今年で9回目になる。新しいワインと揚げ菓子、チーズ、サラミ、蜂蜜などの地元物産のほか、多国籍な品々の屋台が並ぶ。
 サン・ジョヴァンニ広場の仮設舞台ではブラス・バンド演奏が行われ、子供用トランポリンなどもあり、ちょっとした盛り上がりを見せる。

 
f0133814_2053386.jpg 今年は、作りたてのリコッタ(ricotta calda、リコッタ・カルダ)の実演販売が行われると聞き、近所の友人と7時半頃行ってみた。雨がぱらつき強風にもかかわらず、リコッタ・カルダの屋台には人が集まり、賑わっている。

f0133814_20572516.jpgf0133814_20575134.jpg
 テントの中では巨大な鍋で400リットルのリコッタ・チーズが沸々と煮られていた。チーズを作る時に出来た乳清を再び煮て(ri・cotta、再び煮た、の意味)、分離して浮き上がってきたものをすくったのが、リコッタ・チーズなのだそうだ。脂肪分が少なく、ほのかな甘みとさっぱりとした味が特徴で、料理にも菓子にも使われるシチリアの代名詞的なチーズだ。
 こうして竹の長い棒で焦げ付かないようゆっくりかき混ぜる。昔は各家庭で木を燃やし銅鍋を使ってリコッタ・チーズを作ったそう。ガスでは一気に熱くなってしまうが、木は緩やかに温まり、銅の鍋は火の回りが一定で焦げ付きにくかった、とシニョーラたちが懐かしそうに話していた。こういう地元の人々の何気ない会話を聞くのも、祭りの醍醐味の一つだろう。

f0133814_20583381.jpg おじさんにあと30分はかかると言われ、他の屋台を見に行くことにした。残念なことに雨と強風で次々に店終いとなり、ここだけが開いていた。
 シチリアの蜂蜜がずらり。サートゥラと呼ばれるタイム、ユーカリ、オレンジ、ミッレ・フィオーリ(いろいろな花)、栗の花の蜂蜜の他に、苺味などもあり興味深かった。スプーンにすくって味見もさせてくれる。
 f0133814_20585983.jpgf0133814_20592376.jpg
 さらにナチュラル石鹸もローヤルゼリー、プロポリス、アロエ、オリーヴ、赤ワイン、といかにも身体に良さそうなものばかり。その中で目を引いたのが、ロバのミルクの石鹸。これはちょっと想像できない。ロバのおっとりした性格を受けて、精神安定作用がありそう。パッケージもかわいい。

f0133814_212065.jpg さて、これは屋台の食券。出来たてのリコッタ・チーズ、揚げ菓子、パン、赤ワイン一杯を紙盆に乗せたセットが4ユーロ。揚げ菓子を既に食べてきた我々は、揚げ菓子抜きで3ユーロのチケットを買った。
 ところが、おしゃべりしながらのんびりと待っていると、事件が起きた。突然ガスの火が止まり、プラスティックが溶けるような臭い匂いが立ち込めたのである。鍋の近くにいた人々は小走りで遠のき、小パニック状態。
 風にあおられた火がガスボンベのチューブを溶かしたのだ。強火でリコッタ・チーズを急いで作ろうとしたのが災いしたようだ。チューブの焦げた部分を切り落とし、再び煮沸開始。しばらく臭い匂いは充満していた。

f0133814_2134921.jpg 何はともあれ出来立てリコッタ・チーズを待つこと1時間半、ようやく完成。人々の熱い視線の中、リコッタ・セットを用意する若者も緊張気味。
 テーブル奥にある小さな樽は、ラグーザ弁ではカッラティエッドゥcarratiedduと言う。昔、各家庭ではテーブルに置いてワインを注いだそうだ。我が家にも同じものがあり、友人が来た時に使うと喜ばれる。

f0133814_2141153.jpg この紙盆に赤ワイン、ネーロ・ダーヴォラが一杯付いてセット完成。そんなに難しくないはずだが、慌ててなかなかセットが揃わない。あちらこちらから、2セットまだ?!、さっきから頼んでいるんだけど!と声が上がる。

f0133814_2143718.jpg 屋台の横に大きなテーブルが3つ用意され、そこで食べる人々もいたが、我々は家に持ち帰り。歩いて3分、家に着いてもまだリコッタは温かかった。
 その味はと言うと、まるでおぼろ豆腐。見た目ばかりでなくそのふわふわ感、そしてほんのり甘いような、ちょっと塩気があるようなミルクの味。
 3ユーロあればリコッタの小バスケットがまるまる一つ買えたわね、と友人の母上が漏らした一言を思い出し、地元の人もそう思うのかと安心した。確かにちょっと高い。が、お祭りだから目を瞑ろう。
f0133814_2161784.jpg リコッタの屋台の正面のバールのシニョーラが、揚げ菓子をプレゼントしてくれた。我が家にはまだたくさんあるので心の中で悲鳴を上げつつも有難くいただいて、今日の晩ご飯はワインと揚げ菓子になるだろう、とルカと予想した通りの展開になっていた。

 揚げ菓子祭りは、日曜日まで続く。そして我々のかぼちゃな日々とともに、揚げ菓子な日々もまだまだ続くのである。
 それなのに明日のかぼちゃ料理と、明日行く揚げ菓子の店を考えているのは、夫婦共々同じ。夫婦は似てくる、本当に。

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by hyblaheraia | 2007-11-11 01:58 | 祭り | Comments(16)


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


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