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虫に好かれた家 -夏へのオマージュ-

 日の沈む頃、クロウタドリの陽気な歌い声を聞きながら、ドラマティックに変化していく空色と雲を見上げ、テラスで植物の手入れに没頭する一時。この家で一番好きな場所で過ごす、一番好きな時間だ。
 10月半ばに手の平を返したように寒くなったせいか、夏の植物たちは日に日に色褪せ、季節の変わり目に力なく屈していく。最後の手入れをしながら、盛夏に艶やかな緑を茂らせ、そこで虫たちの生活が営まれていたことを懐かしく思い出す。

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 ジャスミンとともに、この夏のテラスを彩ったニチニチソウ。ほとんど花粉が出ないのでハチが寄ってくることはなかったのだが、10月になってこんなに凄いのがやって来た。
 黒と黄色のはっきりとした縞模様に、ボン、キュッ、バンの素晴らしいくびれ。ピカピカに光るビニール素材の服をまとったジャン・ポール・ゴルチエのモデルを思わせる。でも意外と顔は平面的。濃いピンクと緑、黄色と黒の鮮やかさが目に焼きついている。

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 ローズマリーの花が咲いた10月初旬、毛深く丸まると太ったハチもやって来た。夏の終わりにバジリコの花を独占した小さなハチたちは、近くを歩くだけで攻撃してくる勢いだったが、こちらは蜜に夢中で全然気付いていない。ガニマタで花に張り付いている姿がどことなくおかしい。

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 これは見るのも刺されるのも怖いクマンバチ。一匹の虫の羽音とは思えないほど低く鈍い不気味な音を響かせながら、花から花へ、落ち着きなく飛び回っていた。
 翌日、突然しおれ出したこの花(名前不明)は、数日後に完全に枯れてしまった。猛毒にやられてしまったのだろうか。

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 ここはバジリコの葉の上。自分の身体の2倍はありそうなハチを一匹のクモが頭からかぶり付いていた。太くて短い、いかにも筋肉質な身体で寝技に持ち込むクモと、次第に力尽きていくハチ。尾の先から毒を出す卵管針のようなものが見えるが、ハチの最後のもがきは虚しく空を切った。

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 今年一番笑わせてくれた虫がこれ。カメムシの仲間だろうか。薄茶色の着物を着た落語家が舞台で座布団に座って頭を下げ、いやいや、こりゃどーも、と言っている感じがする。
 背中の羽のざらつき感を手で触って確かめてみたかったが、顔を上げて、え、触りたいって?いやー、勘弁してくださいよ奥さん、と言われてしまった気がする。

f0133814_5584970.jpg 薄紫色の涼しげな花を付けるプルンバーゴ。その小さな花びらの上を、米粒より小さな黒い虫が忙しそう歩いていた。
 アリクイのような長い口が何とも愛らしく、身体の小ささのわりには長い足が、その歩みをかえって難しくしているようでおかしかった。もう少し短ければ楽なのに。
f0133814_5594186.jpg プルンバーゴは手前の水色の花。48度が5日間続いた地獄の暑さの中で、根から高さ10センチ程の部分だけがかろうじて生きていた。夏の途中に初めて可憐な花を開かせた時の感動は忘れない。
 こんな満開の桜の木のように、咲き急いで欲しくなかった。数日後、敢え無くしぼんでしまった花を取り除きながら、この小さな苗が無事に冬を越し、また虫たちと戯れることを願った。

 後ろのフクロウは蚊遣器。ネットで一目惚れし弟に買って来てもらった。この地区では、夏にフクロウの声も聞こえる。
 フクロウ左目上の花びらに見える小さい黒点は、この虫。


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 この虫はよく家に来た。風呂にも入ったことがある。橙(だいだい)色と黒のツートンカラーはどこにいても目を引く。羽にはインダス文明を思わせる幾何学模様が描かれ、顔はちょっとダースベーダーのよう。名付けてダイダイ・インダスベーダー。いよ!

f0133814_615131.jpg テラスのタイルに同化しそうな虫。テントウムシの種類だろうか。
 イタリアでは幸運を呼ぶ虫なので、ずっと我が家にいて欲しかったが、背中に砂を付けてまま慌しく行ってしまった。
f0133814_63399.jpg 途中でタイルの目地にはまり、どっちに行こうか考えている様子。
 線を辿っていく虫の習性は面白い。
 

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 そしてこれが最近現れたイナゴ。アフリカから飛んできたのだろうか。すのこに張り付き疲れを癒しているようで、あまり元気がなかった。でも仲間がいなくてやれやれ。
 バネの強そうな後ろ足、長距離の飛来にも耐える長い羽、そして背中の赤い一筋としっかり開いた触角。戦いに行く鎧兜の侍のような凛々しさがある。ネットでイナゴ画像を検索したが、こんなにきれいな種類はいなかった。
f0133814_642988.jpg やっぱり家のイナゴが一番だねー!などと、満足気な我々を見てきっと喜んだのだろう。
 夜、パソコンに向かっていると、ガサガサッという聞きなれない音がした。風で蚊避けの暖簾(のれん)が動いたのだと思っていたが、キッチンにこんなものを発見。ギョギョ!我が家の虫取りセット(今回は団扇+プラスティックの植木鉢)を使ってキャッチ・アンド・リリースした。

 夏の間、こうしていろいろな虫の訪問を受けた我が家。きっと虫のエコシステム調査団体から、ラグーザで住み易い家No.1に選ばれていたのだろう。来年はこの栄誉を慎んでお断りいたしマス。

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by hyblaheraia | 2007-10-31 11:12 | 野鳥・昆虫・動物 | Comments(8)

天の輪

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 天に現れた光の輪。満月の輝きを湛えた、弛みのない柔らかな張りが、ただ静かに優しく広がっていた。
 ゆらめく靄(もや)が光の輪の息遣いを感じさせ、この空間を埋めるべきは人声の神秘だと思わせた。アッレーグリの《ミゼレーレ》、ジョスカン・デ・プレの《レクイエム》、ドビュッシーの《ノクチュルヌ》の「シレーヌ」、あるいはブルガリアン・ヴォイスのように、たおやかに膨らんでは引いていく、声という人間の身体の響き。それが重なり、摩擦し、調和し合うことで生まれる原始的で比類のない美しさを、この光の輪に捧げたかった。

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 光はいよいよ高くなり、薄くなり始めた靄の中で清朗な大輪を掲げる。一切の迷いを打ち消すような包容力に身を預け、前向きな思考が自然に生まれてくる。

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 深夜1時、深い靄に包まれるラグーザの谷で、何人にも平等に輝く天の輪。しかしそれに気付いた人は少なかっただろう。

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 西の空へと移動していく天の輪。このまま夜が終わらなければ。沈想と沈吟の時間が過ぎていく。
 但爲君故 (ただ君が為故に)
 沈吟至今 (沈吟して今に至る)
 (曹操)
 家族からは遠く離れているが、こうして二人で美しい町で自然の神秘に触れられることに感謝しつつ。


f0133814_8385955.jpg と、月明りの神秘を目にしたら、その現象を再現してみたくなった。寝る前に飲むハーブ・ティーの湯を沸かし、懐中電灯で実験をしてみる。天の輪ほど明確ではないけれど、なんとなく湯気の輪ができて・・・いる・・・か。
 朝から異常な靄に包まれたラグーザで、夜には巨大な輪が出現、前日のUFO騒ぎも手伝って興奮の冷めない一日だった。

 そんな楽しい生活とラグーザの美しい自然、私の音楽、そして今後の二人の人生は、全て大きな輪で繋がっている。

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by hyblaheraia | 2007-10-30 11:01 | 自然 | Comments(4)

シチリアに宇宙人?!

 昨日の国営放送シチリア・ニュース、ならびにエスプレッソ紙が驚くべき事実を伝えた。
 メッシーナMessinaとパレルモPalermoのほぼ中間に位置する人口4000人ほどの町、カロニーアCaroniaでは、2004年1月から謎の自然発火現象UFO騒ぎが相次いでいる。

f0133814_11313766.jpg この件に関して国の専門調査委員会が3年に及ぶ科学的調査を行い、数日前にその結果がパラッツォ・キージ(首相官邸)に提出された。その報告書の題目を聞いて誰もが耳を疑うだろう。

 「軍事テストあるいは宇宙人による実験」

 彼らはそう結論付けたのだ。世界中の科学者を集めた国の調査結果に「宇宙人」とは。そんなSF的な話を突然されても信じるわけにいかない。しかし軍事テストというのもまた恐ろしい。国の調査機関でさえも特定できない軍事テストとなると、恐怖は一層募る。いったい何者なのか。
 エスプレッソ紙にもまた「E.T.シチリア弁を話す」という見出しが掲げられた。国中がすっかり地球外生物の存在に沸いた一日、我々も何度もこのニュースに見入った。
 科学的な実験結果はもはや疑う余地はない。とは言え、宇宙人はさすがに。ラグーザ弁を話すF.T.(The Finger Terrestrial, 地球上指生物)などで想像を膨らます。


f0133814_9394524.jpg 謎の事件は聞けば聞くほど不気味だ。
 コンセントから外れている電化製品が180ヶ所以上で燃え、衛星を使ったカー・ナビゲーション・システムが溶け、携帯電話は狂い、ある神父は2005年に悪魔に煩わされていた。

f0133814_11233899.jpg さらにカロニーア郊外の野原では40×15㎡の長方形型に、一定の間隔で一種類の草だけが燃えた。
 市民保護団体のヘリコプターは、ティレニア海南部を航行中に緊急着陸を余儀なくされた。何の衝突もなかったにも関わらず、4枚のプロペラのうち3枚に、何かに激しくぶつかったような亀裂が入っていた。このような事件はヘリコプター事故史上例のないものだった。
 それだけではない。2年前から謎の光る飛行物体が市民によって度々目撃され、その多くがカーテンとマットレスが突然燃える現象と関係があると噂されている。もちろん国の調査機関もそれらを映像に収め、科学的な解析を進めた。

 当初は国立地球物理研究所やヨーロッパ各地の研究所がこれらの事象に対して調査を行っていた。しかし完全に御手上げ状態となり、2005年に時のベルルスコーニ内閣が特別対策本部を設置した。そこには、カラビニエーリ、航空学、海軍、市民保護団体の専門家、さらにアメリカのNASAの研究員さえも含まれた。

f0133814_11213737.jpg その調査結果によると、ティレニア海南部ばかりでなくシチリア海峡に至るまで、実に309箇所にのぼる謎の事件が明らかになり、それらは
自然界で起こり得る現象の全ての可能性を否定するもの
だと明言された。ではいったい何なのか。その正体は実に想像を絶するものだ。すなわち、
一点に集中され強力なエネルギーを持った人工の電磁力で、海側を発生源とし、数億分の一秒の速さで放出されるもの。

 それらは300ヘルツから1ギガヘルツにまで至るマイクロ波の束に相当し、それと同等の力を得るためには、12~15ギガワットの電力を生み出さねばならない。我が家の使用可能総電力が3キロワットであることを考えると、その威力の凄さが容易に想像できる。しかもとてつもない速さを伴うのである。もはや人間の業と叡智をはるかに超えている。

 それにしても宇宙人はこの電磁力を使って何を目論んでいるのだろうか。何らかのメッセージがそこに隠されているのだろうか。
 電化製品とマットレスが燃える、という特異な事件にその謎を解く鍵を求めれば、早寝早起キ、無駄ナ電気ヲ消費スルベカラズ!と人間に警告しているのかもしれない。

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by hyblaheraia | 2007-10-28 13:36 | シチリア他の町 | Comments(6)

早朝のサン・ジョルジョ広場で

 やってしまった。朝6時半に起き、8時半のバスでイブラに向かったと言うのに、今日は授業の日ではなかった。明日だった。手帳に書き違えてしまっていたのだ。
 大学の係員に気の毒そうに見られながら、せっかく早起きしたのでイブラの散歩でもしてきます、と笑顔で出てきた。こんな日があっても良いではないか。即興のメロディーを頭で歌いながらドゥオーモ広場へと向かう。今日はどんなドゥオーモが見られるだろうか。

f0133814_6121353.jpg ああ、こういう表情もあるのか。
 ヴェールのようにそよぐ筋雲の向こうに青空が透け、薄オレンジ色の母体が優美に浮かび上がっている。柔らかな朝陽を浴びて、いつになく優しい色合いを感じる。
 今日もこの間も、きっと今度もずっとこのまま美しいサン・ジョルジョ教会(Chiesa di S. Giorgio)。イブラに来るたび、その姿を見るのが楽しみなのだ。

 坂の上に建つこの教会、ファサードとクーポラは敢えて斜めに配置されている。坂の下から登って来たときに二つの建築物が見えるように意図されたからだ。さらに坂の上にあることで実際よりも雄大に見える。そういうドラマティックな演出は、やはりバロックの精神の現れ。ちなみにクーポラの高さは43メートル

f0133814_6124632.jpg これは真正面から見たサン・ジョルジョ教会。
 教会前のバール近くにゴミ箱が置いてある。その辺りに立つと、こうしてドゥオーモが覆い被さりそうな迫力で目の前にそびえ立つ。
 物議を醸したあのピエトラ・ペーチェ(pietra peceこの地域特有の黒い石)の修復も、なかなか上手くいったのではないか。最初はあまりに黒くて見るのが怖かったが、少しずつ馴染んできている。でも、色落ちが早すぎる気もするが。
 もしかすると今が一番いい時期かもしれない。フェンスのグレーとファサードの黒い部分はほぼ同じ色合いだ。

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 このフェンスは本当に美しい。鉄であることを感じさせない繊細さと軽やかなリズムがある。こうしてフェンス越しに見るドゥオーモもまた美しい。透かして見るものは、どうして直接見る時よりもはっとさせられるのだろう。
 そんなことを考えながら、17世紀の手書き楽譜の透かし調査をしていた頃を思い出していた。紙の製造地と製造年代からカンタータの作曲年代を推定しようと、数え切れないほどの楽譜と透かしを調査した。手紙と歌詞の筆跡比較もしたし、あらゆる方法を試みた。そうして12年も打ち込んだ研究なのだから、もう一度見直して自分の糧にしてみたい、と最近は考える。
 今までやってきたことが思い出され、その発想が何かにつながったとき、頑張っていることは何でも無駄にならない、といつも思う。あるピアニストも言っていた。努力は裏切らない、と。
 今日も天を仰ぐサン・ジョルジョ。一緒に仰いでみた。きっと、そんなことを教えてくれたのかもしれない。

f0133814_615275.jpg 振り向くと周りはこの通り。誰もいない。
 まだ9時前。薄い朝靄の中でゆっくり一人でドゥオーモと対話する時間。このバロック的な大舞台が私一人のものに。こんなのことは初めてだ。
 意外と皆さん朝が遅いのデスネ。なーんて偉そうに。

f0133814_617857.jpg ドゥオーモに入ろうと横の階段を登りながら見上げていると、こんなものに気がついた。
 いや、前から知っていたこのアングルだが、今日はいつもと全く違って見える。実にきっちりと四角が連続している。正面から見る湾曲と丸みをすっかり忘れさせるほどの角ばり。鏡の中に永遠に連続する鏡にように、ただただ四角の連鎖が天に向かって伸びている。

f0133814_6183013.jpg 少し下がってみると、天を突くようなフェンスの棘の連続。
 ほんの少しの角度の違いで、こうも印象が変わるとは。また新たなドゥオーモの楽しみが増えてしまった。
 ちょこちょこ立ち位置を変えては好きなポジションを探し、ここに決定。槍の先の硬さと風にそよぐ雲の柔らかさ、空の水色と教会の薄黄色、渦巻きのオブジェと四角い切り込み、こうした有機的なコントラストがこの教会の奥深い魅力を作っているのだろう。

f0133814_6193112.jpg ドゥオーモは朝早すぎて入れなかったので、ベンチに座ってその姿を見上げ、広場を見つめ、これからの生き方を何となく考えたり。
 
 イブラの懐に深く包まれ、サン・ジョルジョ教会から忘れかけていた大事なことを教えられた今朝。私の授業はなかったけれど、聖人の授業の日だったのかな。

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by hyblaheraia | 2007-10-27 09:06 | 生活 | Comments(7)

心を癒す

 1時間に1本しかない旧市街イブラへ降りるバス。いつもより早めに家を出たため、あと20分は待たねばならない。天気も良いし、のんびり歩いてイブラに降りることにした。

f0133814_22434292.jpg 10分ほど坂を下ると、いつものイブラの絶景ポストに辿り着く。
 一気に広がる視界に悦びの溜息、谷の深さに身も心も吸い込まれ、鳥になって飛んでいるような心地になる。
 もうすぐここに来て4年になるが、何度見てもこの感動は変わらない。周りの丘は、最近の雨で少しずつ緑が濃くなってきた。青空に浮かぶこんな丸々と太った雲も夏にはなかった。確実に秋が深まっている。

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 イブラへの道は、急な坂道と階段の連続。天気が良ければ歩いて下る人もちらほら。
 こんな景色を眺めながらの通勤なんて、この上ない幸せだ。地元の人は車に頼り過ぎだといつも思う。生粋のラグーザ人である友人は、イブラに歩いて降りたことは一度もないと言っていた。もったいない。

f0133814_2256233.jpg イブラの入り口、プルガトーリオ教会付近に到着すると、驚いたことに信号が。
 イブラには信号など一つもないし、新市街にも数えるほどしかない。どうしたのだ、ラグーザよ。
f0133814_22563395.jpg そんな悪い胸騒ぎも束の間、何ということはない。工事のため、臨時に設置されたものだった。細い道路に工事の足場が張り出しているため、こうして時間差で一方通行にしているのだ。


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 反対側にもこのように信号が。電気コードとキャスター付きというところがかわいらしい。工事が終わったらコロコロ転がされて、取り外されるのだろう。お疲れ様と言ってあげたくなるな。

 ところで、世界初の交通信号は1868年にイギリスのウェストミンスターに設置された赤と緑の2灯式のものだそうだ。その後、1918年にニューヨークで手動式3色式が用いられ、次第に世界に広まっていく。現在では、交差点を単独に制御する単独制御、複数の交差点を同時に制御する系統式制御、面的に広がる街路網を同時に統括する面式制御、の3つの方式があるとのこと。町の構造の複雑化と交通手段の増加に従って、円滑な交通を図るために信号は不可欠な存在となっていったのだ。

f0133814_2346651.jpg しかし世界初の信号機誕生から約140年も経った現在でさえ、イブラには信号がない。いや、必要がないとも言えるかもしれない。そしてそれは素晴らしいことだ。
 信号に頼らずとも譲り合って運転できる心のゆとりが人々にはある。中世の渦巻型の町並みは、道が狭く坂とカーヴの連続で運転は決して容易ではない。それにも関わらず、交通パニックに陥ることなどほとんどないのだ。さらに中世とバロックの息吹が溶け込んだこの美観が、現代の利器によって無造作に壊されることもないのである。
 高度に発達した大都市にはない、人間の本性に頼る生活。それこそイブラが誇るべき美しき魂の現れの一つだろう。

 などと考えながら、谷底の畑で育つ冬のブロッコリーやたわわに実るオリーヴを眺め、たどってきた谷と丘を振り返りつつ、ああ、こんなに歩いてきた、と得も言われぬ充実感に満ちていた。肌で季節を感じ、心が開放されている自分に気が付いた。


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 利便性を追求して生まれた信号と車。たまには現代生活のリズムから離れて、自分の足と心で町を歩いてみるのもいいものだ。名も知れぬ木の種が、秋空高く舞っていくのを眺めながら、そんな生活が人の心をいかに豊かに癒すのか、身体で実感したある朝の通勤だった。

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by hyblaheraia | 2007-10-26 00:09 | 生活 | Comments(12)

雨が降ると

 このところラグーザではよく雨が降る。しかし秋雨などという美しいものではない。黒い空に雷鳴が轟き、稲妻が数秒おきに走り、雨と風が家々の窓を叩く激しさである。カーテンの隙間から空をうらめしく見上げ、成す術も無く家に缶詰めとなる。
 ところが、そんな日にこそ喜び露わに出てくる人々がいる。カタツムリ(lumache、ルマーケ)である。雨に濡れてたじろぐどころか、濡れれば濡れるほどいよいよ勢力を増し、我が家のテラスの至る所に出没するのだ。こんなふうに。

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 雨上がりにテラスに出てみると、ざっと見渡しただけで8匹もいた。もしやここも、と思いフェンス付近を見てみると・・・。

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 いるいる!フェンスの真下から、死角になって見えない壁、さらにはテラコッタの瓦の間にまで。貝殻の色も模様もそれぞれ違う。触覚をにょきにょき出して、嬉しそうに歩いているな。動きが遅いので、観察には最適。
 ここには6匹、さっきの分と合わせて14匹!これほどいるのなら、向こうの壁にもいるはずだ。

f0133814_1453452.jpg と、ちょっと身を乗り出してみると、こんな絶壁にも一匹。下の道路があんなにも遠い。カタツムリは高所恐怖症ではなさそうだ。でも思わず足がすくむ、ということはないのだろうか。
 そんな心配を他所に、マイペースでのんびりと進む。いやいや、そちらこそお気をつけて、とカタツムリに心配されたかもしれない。

f0133814_2524678.jpg さらに観察意欲に突き動かされ、右の絶壁を覗き込むと・・・、白い殻の小さい一匹が、






← この辺りに。


 黒い粒粒は雨で屋根から大量に落ちてきたハトの糞。見間違えないよう、観察者は注意が必要。
 この絶壁にも2匹いたので、合わせて16匹!
 すごいすごい、16匹もいた!早速、ルカに伝えようとテラスから小走りで戻ろうとすると・・・。

f0133814_150435.jpg え!?
 急ブレーキをかけてのけ反りそうになった。なんと、キッチンのガラスドアにも一匹くっ付いているのだ。
 こんなところにも、どうやって、なんで、と考えれば考えるほど不思議でたまらない。油断も空きもありゃしない。空きあらばルマーカ!とまらんか!

 ということで、合計17匹観察されるに至ったノデアリマス。

f0133814_1524115.jpg 雨上がりにこれだけ出てくるカタツムリ。ラグーザ人がそれを見逃すわけがない。
 日本ではフランスのエスカルゴが有名だが、実はシチリア南東部でもよく食されるのだ。
 八百屋に行くとこうして大きなバケツや網籠が無造作に置いてあり、野菜と一緒に売られている。逃げ出さないように重しが乗っていて、これを開けてみると・・・。

f0133814_153695.jpg この通り!むちょむちょと寄せ集まっている。
 これを見て気を失いそうになるか、ヨダレを垂らして目が爛々となるか、好き嫌いは分かれるところだ。私は密集恐怖症・・・。
 前にムーロ・ア・セッコ(muro a secco、セメントを使わない石積みの壁)の続く郊外の道で、ビニール袋を持ってうろうろする人を見たことがある。運転する友人が、カタツムリ採りをしていると教えてくれた。彼女もまたカタツムリ大好き人間、調理の仕方を嬉しそうに説明してくれた。


f0133814_1481198.jpg カタツムリはとても汚れているので何度も何度も水で洗い、砂や草、土などのゴミを掃除し、オリーヴ・オイル、ニンニク、玉葱、プチトマト、イタリアン・パセリで炒めて塩味で仕上げるとのこと。

 先日、八百屋のシニョーラに、カタツムリを持って来たら売っていただけますか?と冗談半分で聞いてみたら、大きさは?何キロくらい?と笑われてしまった。
 が、それで分かった。我が家の17匹は、売り物にするにはまだまだ小さいのだ。ヘンゼルとグレーテルのように、網に閉じ込めて太らせたらいいお金になるかもしれないぞ!

 そういえば小学時代、ぷりぷりに太ったアオムシを筆箱に、巨大カタツムリを海苔の缶に入れて学校に持ち込み、友達に見せてはかわいい消しゴムなんかと交換してもらっていたな。
 三つ子の魂百までも・・・。

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by hyblaheraia | 2007-10-24 05:31 | 野鳥・昆虫・動物 | Comments(14)

砂糖入りラヴィオリ、ラム肉香草風味ソース

 絵の具で空を塗ったような真っ青な空が広がる土曜の朝。サンタ・ルチーア教会に散歩に行こうか、と話していたらなんだか体調が悪くなってきた。ベッドで少し休んで午後から、と思っていたが悪くなる一方。結局、午前中は完全に眠ってしまった。

f0133814_733247.jpg そんな体調を気遣ったルカが買い物に走り、作ってくれたのがこれ。ラグーザ伝統のリコッタチーズのラヴィオリ砂糖入り、ラム肉と香草風味。
 ラヴィオリに砂糖?!と驚く人も多いだろう。実際、同じシチリアでもシラクーザの学生はこんなラヴィオリ信じられないと言う。が、その味は日本人なら誰でも懐かしさを感じるはずだ。

f0133814_9424981.jpg 醤油と砂糖、みりんを使ったふっくらと甘い煮物。まさにそんな優しい味がこのラヴィオリ砂糖入りの美味しさなのである。
 普通のラヴィオリも売られているが、ラグーザでは砂糖入りがより好まれる。豚の骨付きバラ肉をゆっくりと煮たトマト・ソースで食べるのが一般的。

 しかし今日のラヴィオリは違う。保守的なラグーザ人が聞いたら顔をしかめそうなラム肉との取り合わせ。ところが、である。リコッタとの絶妙な出会いは、プロにも教えたいほどの素晴らしさだった。

 その手の内を明かしてしまうと、まずオリーヴ・オイルに唐辛子を少々入れ、細かくしたラム肉ローズマリー(相当量)を入れてゆっくり焼く。しばらく焼き続け、火が通ってきたらミントバターを入れ蓋をして蒸し焼きする。
f0133814_7334916.jpg その間、ラヴィオリを茹でながら、ソースが乾かないように泡と茹で汁をフライパンに少し足す。茹で上がったラヴィオリをソースに絡めて皿に盛りつける。が、まだ完成ではない。食卓上での「あれ」が必要。
 そう、シチリア料理に欠かせないリコッタ・サラータricotta salataである。素手で豪快に掴みナイフでスライスして、ラヴィオリの上にたっぷりと散らす。
 細かく削ったチーズはパルミジャーノ。これは料理全体にまろやかさを加えるもの。リコッタ・サラータはそこにしっかりとしたアクセントを加えるもの。両者の役割は違うのである。

f0133814_7344220.jpg 食べている途中、各自好きなようにリコッタ・サラータを補充。こんな風に、いつもごろんとテーブルに転がっている。
 ラム肉はローズマリーと合わせると、どうしてこんなに美味しくなるのだろう。互いの強い香りが絡み合い、融合しあうから不思議だ。我が家のローズマリーは茎の臭いが強く、野生的な風味がよく引き出されていた。
 そしてミントの威力。爽やかさの代名詞的存在だと思っていたが、過熱するとなんとエキゾティックな味が滲み出てくることか。ミントなしに我々のクスクスはあり得ない。ナスのグリルのオイル漬けにも不可欠。使い方のヴァリエーションを探して、試行錯誤するのは楽しい。

f0133814_734196.jpg パルミジャーノとバターの濃くをベースに、ラヴィオリのほのかな甘さが肉汁を包み込み、ローズマリーの香りが吹き出す瞬間、ああ、これだ、と思う。ハーブのまやかし。あれだけ鼻を突く香りがこんなに柔和になり、他の食材と調和するとは。西洋的な濃厚さの中には、ミントの異色な風味も混じる。そして全てはシチリアの恵みだと言うかのような、リコッタ・サラータの存在感。
 私はさらにここに、黒胡椒をぱらぱらと散らし、より引き締まった味を楽しんだ。
 直球勝負のラグーザ伝統料理が外地の新たな空気を運んできたような感覚だった。

 我々はよく、ラグーザ創作料理だ!とはしゃぎながら、この地の伝統食材に旬の野菜や醤油などを使った新たなメニューを実験する。今日は買い物からアイディア、調理までルカ一人で着々とこなし、私は何が出来るのかどきどきしながら、時々ソースをかき回したり、味見をしたりと、完全に脇役に徹した。
 何もせずにこんなに美味しいものが食べられるなんて。病気になるのも悪くないな。

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by hyblaheraia | 2007-10-21 10:02 | 料理 | Comments(5)

バジリコ畑征服計画 -家族編-

 コンドハ コノ バチュリコバタケ ヲ セイフクニ クルゾ!
 その予告通り、カルデッリーノ(cardellinoゴシキヒワ)がやってきた。チュリチュリ、チュロチュロ、カサカサ、いつもより随分と騒がしい。窓の影に屈んでそっと見ると、今回はなんと3羽もいる。おお、大変だ!本当に本当に征服にやって来たのだ!
f0133814_616433.jpg

 左奥の顔が赤いのはこの間来た人だ。あの背格好には見覚えがある。あとの二羽は産毛があって顔もまだ薄茶色、体も小さい。そうか、親子でやって来たのか。この間は、親鳥が下見に来て、安全な餌場を探していたという訳か。
 それにしても、なんて楽しそうにバジリコの種を啄ばむのだろう!

f0133814_7323556.jpgチョピチョピ!

あ、左の子供がどこかに行ってしまった。
大変。

残された二羽は、食べるのをぴたりと止めた。
 
f0133814_6383073.jpgすると、スノコの上で雛がこんなことを!

アゲハチョウのような黄色と黒がくっきりとした羽。顔や体の色はまだ赤ちゃんなのに、翼はこんなに立派だ。さすがは野鳥。

f0133814_6212371.jpg遊ばないでちゃんとご飯を食ベなさい!やだ。
絶対そう言っている。

子供をじっとさせて、食事をさせるのは大変。どこの世界も同じなのかな。

f0133814_627259.jpgいつ見ても心が温まる鳥の給餌光景。そしてカルデッリーノの羽音さえ聞こえる近距離で、気付かれずにずっと見ていられる幸せ。
ラグーザに来なければ、野鳥の素晴らしさを知らずにいただろう。そんなことをふと考えたり。

左の雛が餌をせがむ様子が切ない。

f0133814_6275886.jpgチュビチュビ!バサバサ!

兄弟がいると、喧嘩はつきもの。僕の!僕にも!あなたたち、仲良くしなさい!という声が聞こえた気がした。

f0133814_629625.jpgああ、この嬉しそうに頬張る雛のふくふくとした姿。きちんと喉に入っていくように、優しく優しく種を食べさせて。
左の雛のうらめしそうな表情。

鳥の顔は、素朴な木彫りのように皆同じに見えていたけれど、こんな豊かに感情を表現していたのか。

f0133814_63014.jpgもうちょっと!と、餌をさらにせがむ雛のオーバーな表情とジェスチャー。さすがイタリアの鳥。

対して、背筋を伸ばして、ぴしゃりと要求を拒む親鳥の威厳。子育てとはこうあるべきか。
もう一羽は何か言いたそう。

f0133814_6303871.jpg遂に、左の雛が詰め寄ってきた。
いつもずるいぞ!
ふん!
という感じか。

親鳥の溜息も聞こえるような。

f0133814_6311395.jpgなにか企んでいる雛たち。こういう時の子供のひそひそ話は、気付かれないつもりでも、大人にはちゃんと分かってしまうもの。

何を仕出かすのやら、と見つめる親鳥。

f0133814_6314232.jpg雛たちが前を向いた。
3羽が
同じ間隔で、
同じ方向を、
向いた瞬間。
まるで置物みたい。

f0133814_6321445.jpg次に雛たちは、
左を向いて、
後ろを向いて。

f0133814_633281.jpgさらに、
右を向いて、
前を向いて。

あ、元に戻った!
な~んだ、それがやりたかったのか。

ジェスチャーと軽快な動きが目立つ右の雛は社交的、左はちょっとシャイかもしれない。
きっと鳥にも性格の違いがあるのだろう。これだけ表情があるのだから。

f0133814_6333570.jpgチャチャチャチャ!


ふざけて戯れる子供は、よくこういう声を出す。大好きな姪たちを思い出した。いい年して、私もこんな風にじゃれて遊ぶのが好き。

f0133814_634318.jpgあなたち、ご飯はもういいの?もういい!

飽きやすいのも子供の特徴。でもその短い数分数分に、彼らの輝くような世界がある。

f0133814_636421.jpg 楽しく遊んで、食べて、体操もして、カルデッリーノ親子は、向かい宅のアンテナに飛んで行った。
 アチュピチュピ、チョピチョピ、チョリチョリ!!!!
 美味しかったね、楽しかったね、また来ようね、と羽を動かし大騒ぎ。そして目尻を垂らして眺めるルカと私。なんだか既に老人のような生活・・・。

 言葉で言い表しにくいけれど、そういう生活に我々の心の糧がある気がする。あの明るく楽しい親子の姿、優しくも厳しい子育て、そして小さな体一杯の表現は、我々の心に忘れられない何かを残していった。

 そんな様子を朝7時から、このシャッターの隙間にて観察。
 暇と言われればその通りだが、カルデッリーノの征服に果敢に立ち向かった、ということにしておこう。

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by hyblaheraia | 2007-10-19 09:23 | 野鳥・昆虫・動物 | Comments(10)

イタリアで最も住みにくい町?!

 昨日の全国ニュースで衝撃的な事実が伝えられた。毎年、都市のエコシステムを調査している団体レガンビエンテ(環境協会Legambiente)は2008年度の調査をまとめ、イタリアで最も住みやすい町はベッルーノBelluno(ヴェネト州)、最も住みにくい町はラグーザという結果を提出した。
f0133814_8355689.jpg
 寝耳に水、青天の霹靂、なんとでも言おう。私の愛するこの美しいラグーザが、最も住みにくいとは何たることだ。早速、レプッブリカ紙のサイトで、記事とデータを参照した。

 同紙によると、イタリア全国の県庁所在地となる103の町を対象に、
1.交通手段の信頼性
2.住民一人当たりの緑地面積
3.水道システムの有効性
4.大気の質
5.自転車による走行可能距離
6.生活用水の水質
7.エコ・エネルギーの普及度
8.ゴミの管理システム
9.ゴミ分別の実態
などを中心に、都市生活に関する125の調査項目が用意され、125,000以上に登る統計データが収集されたという。
 このうちラグーザでは、ゴミの分別は全体の3%に留まり、水道網から26%の漏水が確認され、市民の緑地面積は5平方メートルにも満たなかったそうだ。昨年の100位から103位へと最下位に陥ったラグーザは、各メディアでこうした最悪の結果を見せ付けられたのである。

f0133814_8393662.jpg 確かに9項目のうち、1の交通手段は1時間に1本の路線バスに悩まされているし(午後8時最終)、3の水道も大いに問題がある。坂だらけの町のため、5の自転車など使えるような環境ではない。が、かと言って住みにくい訳では決してない。いや、坂の多さこそが、この町を美しくしているのではないか。
 2の緑地面積もそうだ。石灰岩の上に建設された町のため、市内にもちろん緑は少ないが、周囲には野生の大地が広がっている。これはどう解釈されたのだろうか。大自然に囲まれた町だから、もちろん空気もきれいだ。多くの野鳥がやって来るのもそのためである。
 と、最下位という結果をどうしても承服できず、このような調査基準は、果たして有効なのかと考えていた。

 しかしながら、市の水道網から漏水していた事実は、こうして明るみになって幸いだった。この機会がなければ、市の水道課は事実を隠蔽していたかもしれない。ゴミの分別が守られていない現状も、自分さえ良ければ、という行動が市民社会において、いかに無知であるかを知らしめている。エコ・システムの導入は、シチリア全体の問題とも関わっているだろうが、全国的な視線を浴び、市民の意識が高まれば少しずつ政治も動いていくだろう。

f0133814_829183.jpg この結果に対してラグーザ市長は、国営放送地方ニュースで次のようにコメントした。
 サン・ジョヴァンニ大聖堂広場を車両通行禁止にし(余計なサービス)、ローマ通りVia Romaも毎週日曜は歩行者天国になる(前からそう)。市内にも地下駐車場や多数の駐車場を建設中で(超迷惑)、住み良い環境作りに邁進している(嘘ばっかり)、と。
 全く筋違いではないか。去年100位だった結果を真摯に受け止め、この粗末な交通手段や深刻な水問題、ゴミの分別意識を改善するよう、何か努力したのか。彼が意気揚々と述べた駐車場開発には、市長選の際の黒い絡みが見え隠れしている。
 現市長の当選以来、ラグーザでは異常な建設ラッシュとなり、のどかな牧草風景があちらこちらで失われつつある。住みにくい町とは、まさにこのことではなかったか。
(写真:駅前広場を封鎖する巨大な地下駐車場工事)

f0133814_846172.jpg ちなみに、86位~最低103位の間に、エンナ86、パレルモ89、カターニア94、トラーパニ96、アグリジェント97、シラクーザ98、カルタニセッタ99、ラグーザ103が位置している。
 周知の通り、全てシチリアの町である。この島がいかに通常の都市環境から取り残されているかを物語っている。唯一メッシーナが56位と健闘した。

 参考までに、シエナ6、ヴェネツィア11、ピサ12、フィレンツェ17、ボローニャ23、モデナ29、アレッツォ40、カーリアリ52、ローマ55、ミラノ58、トリーノ74、ナポリ91位であった。
 この結果をどう受け止めるべきだろうか。

 ああ、我が町よ。最下位であろうと、ラグーザに流れる美しき魂の全てを愛し続けよう。

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by hyblaheraia | 2007-10-17 08:49 | 政治・社会 | Comments(26)

エッチェ・オーモ教会の祭り

 我が家の背後にそびえるエッチェ・オーモ教会Chiesa di Ecce Homo。その守護聖人を祝うロザリオの聖母の祭り(La festa della Madonna del rosario)が、日曜の夜に行われた。
 毎年10月の第1あるいは第2日曜に、ロザリオを手にした聖母マリア像の御輿が担がれ、美しい宗教行列processioneが執り行われる。教会通りに面した我が家は、まさに祭りの特等席。3階のバルコニーと4階のテラスから、その様子を見るのが慣例になりつつある。

f0133814_8374863.jpg 辺りが暗くなった午後7時、普段とは違う鐘が鳴り始めた。カーン、カーン、カーンという高音の早い刻みと、ゴーン、ゴーンというゆったりとした深い響きが混ざり合い、祭りの開始が高らかに告げられる。
 今年のイルミネーションはバラだ。教会通りに左右交互に置かれているので、この道を歩くとバラのアーチをくぐるような感覚になる。

 カメラを手に、まずは3階のバルコニーに走る。

f0133814_817957.jpg 教区の信者が左右に分かれ、光の道が創られる。喜ばしい鐘の響きの中で、エッチェ・オーモ通りの急な坂道が、次第に光で満たされていく。
 無駄な言葉を慎み、厳かな感謝の念が湧いてくるのを感じつつ。

 お隣のシニョーラもバルコニーから見ている。

f0133814_810349.jpg そして、光に守られ現れ出でたる聖母マリア。優美な姿に溜息が漏れる。
 サン・ジョヴァンニの勇壮な御輿も素晴らしかったが、精緻なレースに手をかざす時のような、息を呑む静かな美しさが、この祭りにはある。

f0133814_8112128.jpg 聖母の右手にはロザリオが垂れている。
 ロザリオとは日本の数珠のようなもので、特別の祈りに用いられている。
 大玉1つと10の小玉を5回組み合わせて鎖にしたロザリオを手にし、主の祈りPadre Nostroを1回、アヴェ・マリーアを10回を唱え、最後にグローリア1回で結び、玉を数えながら行うという。
 旧市街イブラの壁に掘り込まれた聖母の像(壁がん)を前に、このロザリオの祈りを捧げる女性がいたと、ジョヴァンニおじいさんから聞いたことがある。

 今年は御輿の担ぎ手が老人ばかりだが、若者はどうしたのだろうか。

f0133814_8145753.jpg こんなのなかったねぇー。
 ルカが指差したのは、スピーカーの山車。司祭の祈りの声が、このスピーカーから響いていた。
 確かに去年まで、スピーカーなど使っていなかった。今年は何か違う。

f0133814_8213100.jpg 宗教行列はエッチェ・オーモの坂をゆっくり下っていった。
 これから1時間くらい教区を周り、今度は坂を登って教会に戻る。それまで夕食の支度に取り掛かろう。
 今晩は、テラスで元気良く育っているバジリコでペーストを作り、パスタにする。 
 ルカ共々、張り切っている。

f0133814_82125100.jpg ふと見ると、紙吹雪を拾う少年たち。
 どの祭りでもこんな光景が見られる。私も黄色のものを一枚、祭りの後に拾ってきた。
 表に「ロザリオの聖母 我が家族をお守りください」、裏には「ロザリオの聖母 病の人をお助けください」と書いてあった。

f0133814_822558.jpgf0133814_8222862.jpg
 1時間後、宗教行列が戻ってきた。
 坂の下からバラのアーチをまずは光の列が通る。その後ろにロザリオの聖母、その後ろにブラスバンド。シチリアの祭りには欠かせない存在だ。

f0133814_8225080.jpg 聖母が教会の階段前に到着すると、数分してから花火が上がる。
 マリア様、万歳VIVA MARIA
 ファサードに火文字が灯り、Viva Maria!!と歓声が上がる。
 こんな演出は今回初めてだ。タイミングが少々遅かったが、なかなかやるではないか、とルカともども感心する。
 やはり今年は何か違う。

f0133814_8231385.jpg 赤い炎と煙に包まれる聖母の後姿。
 大勢の信者を引き連れて、信仰の扉を開きに炎の中へ自ら飛び込んでいくような、凛としたその姿。
 ドラマティックな演出に、涙するシニョーラもいただろうきっと。

f0133814_8252684.jpgf0133814_828279.jpg
 赤い炎と煙の後は、打ち上げ花火が夜空に舞う。
 4階のテラスに移動し、じっくり見つめる我々。お向かいさんも、いつの間にか最上階のバルコニーに移動していた。お互い顔を見合わせてくすっと笑う。特等席に居られる者だけの幸せ。
 
f0133814_8284935.jpg ところが、打ち上げ花火は思いの外、早く終わってしまった。普段なら教会の周囲が煙で真っ白になるくらい打ち上げられるのだが。
 まだ何かあるか待ってみましょう、とお向かいさんに言われ、物足りなさを感じながら待ってみた。

 が何も起こらなかった。老人たちに担がれ、左右にゆらゆら揺れながら、危なっかしく教会に戻っていく聖母の御輿を、寒さに震えて見守るのが精一杯だった。
 この夜はコートを着る人もいたほど冷たい風が吹き抜けていた。

 そそくさと家に入り、バジリコ・ペーストのパスタを美味しくいただき、12時過ぎまで祭り閉幕の花火を待ってみた。が、それさえなかった。

 やはり今年はいつもと違う。バラのイルミネーションも、スピーカーも、御輿の担ぎ手も、花火も・・・。もしかしたら強風のせいで花火が中止されたのかもしれない。修復に費用がかかりすぎて、規模を縮小せざるを得なかったのかもしれない。
 祭りの翌日、近所の人とそんな細かい点まで話し合っていた我々は、一丁前に、この教区の古い住民のような顔をしていたかもしれないな。

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by hyblaheraia | 2007-10-16 11:04 | 祭り | Comments(10)


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


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