カテゴリ:イタリア他の町( 12 )

音の香り

 中世の田園劇、《ロバンとマリオンの劇 Li gieus [Le jeu] de Robin et Marion》を聴いていたら、ふとあの羊の姿が頭に浮かんだ。
 
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 イスキア島のアラゴン城で見たフレスコ画の中で、私の目線にいたこの羊が妙に人なつっこく笑いかけてきた。

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 その近くには仲間の羊たちが、羊飼いの奏でる音楽に合わせてモワモワと嬉しそうに踊っている。

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 この楽器はザンポーニャzampognaだろう。バクパイプと同じ原理の古い楽器で、中部~南イタリアで今でも演奏されている。シチリアではチャルメッダciarmeddaと呼ばれるそう。
 左脇に抱えているのが羊の胃袋。そこに吹き口と管(チャンター)が付いている。管が一本なのは古い形だからかもしれない。

 
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 1280~85年頃にナポリ王宮で演奏された、アダン・ド・ラールAdam de la Halle(1245頃~1285以降)の《ロバンとマリオンの劇》。
 歌詞はラング・ドイルで書かれ、若い恋人の会話が音に乗せられたような瑞々しさが溢れている。そしてどことなくヴィッラネッラ(ナポリ古典民謡)と似ている要素が感じられるような。
 作品の存在は知っていたけれど、こんなに色と香りを感じたのは初めてだった。

 ナポリの潮風を思い出しながら、音の香りが膨らんでいくのを感じている。

ご参考までに:
カラーブリアの例ですが、ザンポーニアの音はこんな感じです。《ロバンとマリオンの劇》の音源はネット上になくて残念。


いろいろ気になっちゃって勉強が進みません・・・。
 
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by hyblaheraia | 2008-07-21 22:26 | イタリア他の町 | Comments(6)

アラゴン城の朽ちた美

 イスキア島のシンボルとも言えるアラゴン城Castello aragonese
 本島と小島を結ぶ220メートルの橋を渡ったその先の、岩礁の上にそびえ立つ高さ113メートルの古城。

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 その歴史は古く、紀元前474年にシラクーザのジェローネ1世が、ティレニア人と戦争中のクーマ人に援軍を送るためここに要塞を建設したことに遡る。その後、パルテノペーイ、ローマ、西ゴート、ヴァンダル、東ゴート、アラブ、ノルマン、ホーエンシュタウフェン、アンジューによる長年の支配で要塞の形は変容を続けた。
 南イタリアは、支配の歴史なしには語れない。
 (スキンヘッド氏に視界を遮られ、変なショットになっています)

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 灼熱の太陽と海の照り返しが嘘のような、ひんやりとした洞窟を抜ける。
 定員6人のエレベーターに乗って、一気に上に上がると、

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 イスキア本島とエポメーオ山(789m)が眼前に広がる。1301年の噴火で町が壊滅し、人々はこちらの小島に避難してきたそうだ。
 1441年、アラゴン家が城を再建した際、本島と小島を繋ぐ橋、ならびに頑丈な城壁を建設し、1700年代にはここに約1892世帯が暮らしていたという。

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 こんな環境に住めたら、もう何も要らないだろうな。

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 羽を休めに来たカモメに出会った。
 大きな翼を真横に広げ、羽一杯に風を受け、羽ばたきもせずに、ただ空中で静止している飛び方が忘れられない。

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 城の中は光と緑が溢れていた。
 内部はに住居、修道院、修道士の墓、食料貯蔵庫、刑務所、教会3つ(?)、ワイン醸造所、神殿、開廊、オリーヴ畑、果物の小道、テラス、などがあり、面積は56000平方メートル。方向指示がなければ一生出られなくなりそうな迷路状態だった。

 さて、この日、私の心を捉えたものは・・・
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 アッスンタ(聖母被昇天)大聖堂Cattedrale dell'Assunta
 崩壊したクーポラの穴から空が見え、石の隙間から生えた草が揺れ、何かが心を突いた。

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 祭壇に近づいてみると、プットputtoと草花の優美なバロック装飾。流れるような、ふくよかな線の美しさに、たっぷりと歌い込むバロックの旋律美を感じていた。

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 その近くでは、天使と言うにはあまりに成熟した容姿の、朽ちかけた彫刻が密かに息をする。
 翼を持つ女神と呼びたくなる身体、リラを奏でているような手の動き、そのまま風に乗って海の彼方に音とともに消えて行ってしまうのでは。


f0133814_6565789.jpg そのまま後方に下がり、祭壇全体を見渡す。

 ロマネスク様式の構造に、15世紀と17世紀に修復の手が入り、個々の時代の趣味が添えられていったのだそう。

 かつての豪華な姿より、クーポラのない、今のこの朽ちた姿に果てしない美しさを感じる。

廃墟を見ると、なぜか心が震えます。     
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by hyblaheraia | 2008-07-18 10:00 | イタリア他の町 | Comments(12)

イスキアでの数日

 薄青色に浮かぶソレント半島とカプリ島を遠く左に仰ぎ、右手に深く湾曲したバーヤの家並と、プローチダ島に積み木のように寄り添う家々を数えるように見つめながら、ゆっくりと群青色の海を進んでいく。
 ナポリ湾からおよそ1時間、そこは

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 休火山の島、イスキアIschia
 古代ギリシアの植民地であったこの島は、かつてはピテクーサPitecusaと呼ばれたそう。


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 イスキアの港には船が続々と入港して来る。人ばかりではなく、車も、観光バスも船から降りて来て大混乱!!
 ナポリ市民は車で入れないはずなのに・・・。叫んでいるのはナポレターニとイスキターニ(ischitani イスキア人)か。

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 緩やかな山道を登って宿まで移動。次第にプローチダ島が見えてくる。
 緑が濃く生い茂り、ブーゲンビリアも夾竹桃も満開だ。鮮やかなピンクと青い空のコントラスト、そして少し蒸すこの空気、ちょっと懐かしい。同じナポリとは言え、ここは太陽が違う。じっとしていると肌がジリジリ痛い!

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 お義母さんとジョヴァンナの部屋からの風景。
 丘の上の宿には海のそよ風が気持ち良く通り、夏の青さが音を立てて揺れ、明るい雀の歌が聴こえていた。時折、近道をしたいハエが猛スピードで横切っていったり。

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 夕方、町に下りると散歩を楽しむ人で賑わっていた。レストランが開く8時まで、お土産を見ながら、そぞろ歩きをして過ごす。イタリアの晩御飯は遅くてお腹が空いてたまらない。一人だけ部屋でパニーノを食べてきたところ。

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 これはアラゴン城Castello Aragonese。明日の朝、みんなで見る予定。

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 西の空が赤く染まる時間。早くレストラン、開かないかなぁ・・・。

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 イスキアは去年、ジョヴァンナが結婚式を挙げた思い出の島。今年はお義母さんの温泉療養のために、これから家族や親戚が代わる代わる泊まりにくることになっている。我々は第一陣としてお義母さんのお伴に。
 と言いつつ、あまり役に立てなかったような・・・。


親孝行って難しいな・・・。



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by hyblaheraia | 2008-07-17 09:49 | イタリア他の町 | Comments(6)

やっぱり家が一番

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 船から見たヴェズーヴィオ山。海にそっと足を浸したようなナポリ湾の向こうに、堂々と隆起する赤い姿が印象的だった。
 ああ、帰ってきた。海の男たちも、こんな深い安堵感で見上げているのかもしれない。

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 船のスクリューが巻き上げる白い波の向こうの島で、お義母さんとジョヴァンナ(ルカの妹)と我々と、美味しいものを食べて、たくさんおしゃべりして過ごした。食事をすれば、すぐに政治の話になるのがいかにもナポリの家族。
 我々は二日だけの滞在で先に帰宅したけれど、二人は温泉に行ったりしてのんびり、楽しくやっているだろうな。
 
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 さぁ、明日から勉強!と言ってもかなりヘトヘト・・・。
 今回は、マイルを使うためアリタリア利用だったので直行便がなく、ローマを経由しての往復。つまり一旦、ナポリを飛び超えてローマに北上し、再びローマから南下してナポリに入るという実に、無駄なルート。
 ヴェズーヴィオ山がきれいに見られたのは嬉しかったけれど、もう二度としない!!

 今日はナポリから帰って来るのに11時間もかかった。飛行機なのに、これでは電車と変わらない。そして空港はどこも大混乱!
 夏の旅は大嫌い、今年はもうどこにも行かないぞ!!

 家でのんびりするのが我々にとっては最高のヴァカンス。
 灼熱のビーチも日焼けも、スレンダーボディにも興味がないので、モッツァレッラ夫婦と自称しております。ムリン、ムリン。


空から見たシチリアはきれいでした・・・!



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by hyblaheraia | 2008-07-16 08:13 | イタリア他の町 | Comments(12)

ヴァレーゼで同窓会、そして日本刀を知る

 コモ湖近くの町、ヴァレーゼVarese
 そこにルカの親友のルカ・ガッロとロレーナが住んでいる。せっかくトリーノまで北上するのだから会いに行こうかと話をしていたら、ボローニャに住んでいるコッラードも来ることになり、噂を聞きつけたベルガモのダヴィデも大学の授業を終えたら電車に飛び乗り駆けつけると言い出した。

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 大学時代に日本語を専攻した3人とアラビア語専攻だったルカ・ガッロ。3人がまだカキクケコを書いていた時に、既に日本文化好きだったルカ・ガッロは草書をさらさらと書いていたそうだ。共に学び、ロックバンドを組んでいた時から、今も友情は変わらない。
 結婚式に来てくれた4年前以来の顔合わせだから、楽しみで仕方がなかった。シチリア人らしく、モンティ・イブレイの高級オリーヴ・オイルを携えやってきた。

f0133814_1958860.jpg 話には聞いていたけれど、古い農家を改築した本当に素敵な家。
 暖炉やアンティーク家具、ゴミ捨て場から拾ってきて修復した食器棚(アンティーク)が、モダンなバスルームやキッチンと調和していて、二人のアイディア溢れた空間だった。
 我々もラグーザ郊外の農家を改築して住むのが夢。将来のいいお手本として隅々を観察。

 そして見つけた!ルカ・ガッロの哲学的世界。日本刀の美
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 圧巻。刀だらけだ。日本で購入して郵送したそうだが、こんなにたくさん。刀を3段に並べるこういうものは、いったいどこで売られているのだろう。不思議でたまらない。刀を入れる袋も美しい。

f0133814_23194361.jpgf0133814_23203274.jpg 彼は漆好きでもあるので、こんな家紋入りの殿様の肘掛?まで。右は日本で彼が作ってきた脇指(わきざし)。刃の具合を真剣に見つめる。

 最上階のバスルームには、1600年代の衣装道具入れがあって驚いた(歌舞伎だと鬘入[かづらいれ])。ニューヨークの古美術商から買ったと言っていた。

f0133814_23212677.jpg さらにこんなものが。ボビンレースかと思ったら、組紐を編む道具だそうな。日本で購入後、ばらして郵送し、再び組み立てて編んでいるという。アナタハ、ナニジンデスカ?f0133814_0211255.jpg
 写真右はルカ・ガッロ作、刀の鞘(さや)。金粉入り漆仕上、鍔(つば)もあり、柄(つか)には菱糸巻が。どうやって作るのか、全く想像不可能。

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 そう言えば、時代劇で侍が正座して刀にテルテル坊主のようなものでポンポンポン・・・とやっているのがある。あれは何?と聞くなり、ああ、打粉(うちこ)だね。待っててすぐ持ってくるから!
 打粉、丁子油、目付のセット、桐箱入り。一寸法師の打出の小槌のようなものは、刀を柄から外す時に目をコンコンと叩くのに使うもの。生まれて初めて見たな、こんなもの。しかもヴァレーゼで。
 打粉をはたいた後、刀の光り具合を鋭い目で見つめるルカ・ガッロが印象的だった。

 日本刀には太刀脇差短刀の種類があるそう。太刀は弓なりに反り、刃を下向きに持つのに対し、刀はより直線的で刃を上にして腰に指すらしい。そして鉄の鍛練の仕方で、刀の表面には様々な刃文(はもん)が浮かびあがる。

f0133814_1562760.jpg ルカ・ガッロ作の脇指にもそれが見えた。ダヴィデが思わず指でそっとなぞってみると、ダメだよ触ったら!するとダヴィデはますます調子に乗って、イヒヒと刃を触って遊ぼうとする。おい、何するんだよ!!と真剣なルカ・ガッロ。
 脇指を取り上げ正しい持ち方を示す彼と、意地悪して嬉しそうなダヴィデ。そんなやり取りをちゃかすルカとコッラードとロレーナ。ワインを飲みながら、ヴァレーゼ料理を堪能し、日本刀の美に触れ、朝方までワイワイ騒いだ。
 久しぶりだったな、こういうの。


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 刀に魅せられる理由を聞くと、静かに語り出したルカ・ガッロ。7歳の時、誰に教えられる訳でもなく、古い釘を金槌で叩いて刀を作った。子供の頃から刃物が部屋にないと眠れなかった。
 精神の奥底から出てきた答えに感銘を受けた。刃物は彼になくてはならないものなのだろう。だからキッチンもこんなに和包丁が。
 彼の前世は日本刀の砥師かな・・・。

同窓会っていいな・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-03-23 02:32 | イタリア他の町 | Comments(8)

古代エジプトの生活道具

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 時間に追われて急ぎ足で展示品を見ていたとき、意識の中にすっと入ってきた絵。
 黒いパレオを腰に巻いたセミヌードの踊り子が、体をしなやかに反らしている。豊かな黒髪は地面に垂れ、耳には大きな金のイヤリングが光る。じっと見ていると笛の音と太鼓のリズムが聴こえてきそうな臨場感に満ちた瞬間。妖艶な踊りは何に捧げられたのだろう。

f0133814_21115334.jpgf0133814_21121465.jpg 当時はパピルスが高価だったため、陶器や石灰石の破片で代用し、契約書、領収書、手紙、物語、絵などを書いたのだそうだ。
 それらはostrakaと呼ばれ、例えばこれは書類。
左:牛の売買証明書 「牧夫TjaoはAmenemipetからベッド1、上質のショール1、シーツ1、チュニック1の45デーベン相当を牛との交換で買った」(紀元前1186-1070)
右:4つの断片から成る手紙 宛先人は「神の父」で「儀式官」であるAmenhotepと書かれているらしい。(紀元前1183-1152年頃)

 やはり文字を書くということは、何かを伝え、記録を残すために行われるのだ。それを読み解きながら、新たな考察と発見に身を置くのは考古学も音楽学も同じだなと、ぼんやり考えていた。
 もしこの欠片に文字がなかったら・・・。17世紀の五線譜があってもそこに音符が記されていなかったら・・・。何らかのメッセージが刻まれているからこそ、それは、その時代を生きた一人の人間の証としての深い意味を持つわけで・・・。
 書く、記す、という行為はなんと尊いのだろう。

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 古代エジプト人の筆記具はこういうものだった。まるで硯と墨、毛筆のような雰囲気。石を刻むより、顔料を溶かして筆記する方がはるかに簡単だっただろう。作業が容易になれば、書く意欲も機会も増し、それに伴い文字も発達するのではないだろうか。ほんの少しの発案で、果てしない世界が広がるのだな、きっと。

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 こちらは彫刻刀。陶器に模様を刻むのに使ったのだろう。表面に書かれた文字は、切れすぎるから要注意!だったりして。
 小学時代に使った「ロダン彫刻刀」というのを思い出して懐かしくなった(指を切った思い出も)。

f0133814_2123836.jpg うわ!見た瞬間ちょっと鳥肌が。
 この鬘は本物の髪で作られていて、冒頭のダンサーと同じ髪型。近付いてみると、太くて硬質の、波打つ毛で、生命力の強さをひしひしと感じた。

 その横には埋葬品のトイレ用衛生用品。小瓶には塗り薬が入れられている。当時、薬は大変貴重だったので、直射日光やハエから守るためにアラバスターや陶器に入れたのだそう。化粧箱に見えたけれど、意外なものでびっくり!

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 そしてやっと出会えた楽器!に穴を開けた笛で、太さも長さも多種ある。吹口は上部なので縦笛だろう。どんな音がするのか、特に箸ほどの細さの笛が気になる。展示品の多さの割には楽器がこれだけというのが残念だったけれど。

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 そしてなんと、古代エジプト時代のパン!虫食いの穴が無数にあるが、3500年以上前のパンがカビずに残っているとは信じ難い。まさにパンのミイラ
 左下はパンかご。今でも使えそうなほどきれい。右下は当時の穀類、他にニンニクもあった。お墓は臭くなかったのかな(ニンニクちょっと苦手・・・)。

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 さらに靴まで。アンクル・ブーツのようなものはとても小さく、皮で模様が施され、つま先が上向きになっていた。女性用だろうか。野菜の繊維で美しく編まれたサンダルは女の子の墓から出土したそう。夭折した子供への想いは、時を越えて我々にも伝わってくるよう。

 こうして2時間、膨大な展示品を見て、感じたことはまだ整理できていないけれど、いろいろなものが心に残り、新たな風を受けてきた。知らない世界を知るのって素敵だな。

 トリーノ・レポートはこれで終わり。さて、次に向かったのは・・・。

パンのミイラ・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-03-21 02:14 | イタリア他の町 | Comments(8)

旅立ち ―エジプト博物館の葬送の美―

 トリーノのエジプト博物館Museo Egizio di Torino
 エジプトのカイロ博物館に次ぐ規模を誇り、3万点を超える所蔵品が展示されている。2時間あっても足りない膨大な展示品の中で私を捉えたのが葬儀品生活道具だった。

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 棺の全面に記されたおびただしい文字と絵。一部は解読され、死者の地位を示していることが分かっている。それ以外は、いったい何を伝えたかったのだろう。仏教の経文のような一心不乱の筆致を見ていると、意を汲んであげたくなる。

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 これは紀元前2100年頃イニIniという男の棺。発掘時の通りに部屋が再現されている。
 棺の表面には彼がノマルカ王Nomarcaの友で聖職監督官であったことが記されている。棺に描かれた目は、中から外を見るためのもので、亡骸の目と同じ高さに施されている。周りにはあの世で使う皿、茶碗、穀物袋、木で作った穀物とその保存庫船員を乗せた船(あの世へ亡骸を運ぶ)、手前には故人イニの像が置かれている。亡骸が腐敗した時には、代わってこの像があの世へと旅をするのだそうだ。
 深い思いやりと手厚い葬送。人は死んで消えるのではなく、新たに別の世に旅立ち、生きていくと信じていたのだ。

 
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 当時の墓の周りは、こんな小さな像が守っていた。各自の任務をしっかり果たして・・・。穀物を潰す人(左上)、パンをこねる二人の女性(左下)に胸がキュンとなった。

 展示フロアが変わり、ここは明るい色が弾けていた。が、ミイラが5、6体はあっただろうか。とてもカメラで撮ることはできなかった。見ているのも辛いほど。小学生のグループの中で、男の子が真っ青な顔をして床に倒れる現場も目にした。子供に何の説明もなくこういうものを見せるのはどうだろうか、と思ったのだが。

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 ミイラを包んだマスクや棺。この鮮やかさに目を奪われる。女性の体の描き方が美しい。

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 ほとんど変色していないのではないだろうか。色遣いと縦横のリズムが大胆。

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 そして棺の足元の外側部分には、牛に運ばれるミイラが描かれていることに気付いた。実際にこのように運ばれたのか、象徴的な意味なのか説明がなかったのだが、牛の角の間に聖輪(せいりん)ができているのが興味深い。

 黄泉の国へ旅立つ魂を葬送する品々を見ていて、Partenza「旅立ち」と題された17世紀イタリアのカンタータを思い出していた。生前の偉業や人となりを、時に神話の神々になぞらえて讃え、亡き人があの世へ出発するために歌われるものだ。
 あの「旅立ち」というタイトルの真意に、前よりも少し近付けたような気がする。

ミイラ怖い・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-03-20 05:56 | イタリア他の町 | Comments(10)

48年前の旧友宅

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 48年程前、イタリア人、フランス系カナダ人、日本人の若者が同じアパートに暮らし、共に学んでいた。それぞれが母国に戻り、風の便りに一人はトリーノにいることを知った。
 食事当番の時に、鰹節を削って味噌汁を作るとこのイタリア人青年は大層喜んだ・・・、彼の母上が訪ねて来た時は、家中にラヴェンダーのスプレーを撒いて慌てていた・・・、そんな話を子供の頃から幾度か耳にしていたので、鰹節好きのイタリア人になんとなく親近感を抱いていた。
 それから長い年月が経ち、家族にルカというイタリア人を迎えることになったとき、父は言った。あいつ、どうしてるかな。
 狭い世界なので、私はネットで難なく父の旧友のメールアドレスを見付け出した。その後、何回かメールを交わし、ついに40数年振りのコンタクトを果たした。電話の向こうでハロー?と聞こえた時の両親の歓声は忘れない。ちょっと親孝行した気分だった。

f0133814_1294892.jpg 去年の9月に親子共々、トリーノの鳥野家(我が家ではそう呼ぶ)に遊びに行った。遠くに連なる山々と美しい町並みを見ながら、このベランダで朝食を取り、夜はアペリティーヴォを楽しみ、あの山々の一部の、フランス国境近くでピクニックもした。
 その時の約束で、春に来る時は家に泊りに来てください、と言われていたので、ルカの仕事が終わった日の夜にお邪魔することにした。

 古い家柄だそうで、年代物の使い込まれた素敵な家具と小物があちらこちらに。

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先祖の写真が並ぶ立派な家具。カーペットも年代物、猫足家具の上にはエレガントなランプ。
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大きな風景画と寄木模様のチェスト、その上には現役の古時計。向こうの角には蓋付き書斎。なんて繊細な柄。こんなので勉強したいな。
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 そしてこれは潰されてしまった教会の窓だったもの。ナポリ派の画家(17世紀)が石に描いたものと伝えられているそう。光を透かすと柔らかく浮かび上がるようになっている。
 どこを見てもうっとりするような素晴らしい家具に囲まれ、少々緊張気味の一夜を過ごした。

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 シックなブルーのテーブルクロスで美しくセッティングされた朝食を緊張しながら頂いた後、我々は中心街に散歩に(ふぅ)。ここは前日まで泊まっていたヴィトーリオ・ヴェネト広場。

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古着屋の前には春の色が満開だった。球根植物の花はふっくらとして、瑞々しく、不思議な形をしていて心が和む。
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1本ではなくて、こんな風にいっぱい寄せ植えすると、なお幸せな気分。その上には、ボンサーイBonsaiが!。侘び寂びの精神、百花繚乱の隣りで全く負けておりませぬ。

 散歩をしながら、ある所へ向かう我々。急いで見て、ランチには鳥野家に戻らないと!心のこもったおもてなしで我々を待っていてくれる。早く、早く!
 さぁ、どこに行くのでしょう・・・つづく。

鰹節好きイタリア人・・・?!。
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by hyblaheraia | 2008-03-19 03:47 | イタリア他の町 | Comments(6)

動きへの憧憬 ―映画博物館その2―

 動く情景。それを創り出すことにこんなに緻密な作業と創意があったとは。トリーノの映画博物館では、映画の歴史そのものではなく、動く映像が生まれるまでのあらゆる試みが展示されていた。

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 これは1800年代フランスの影絵道具。切り抜かれている人物のフォルムを見ているだけで、貴婦人のドレスの色が想像される。後部から光を当てるだけの簡単なしくみで、こんなに美しい世界が作られるなんて。
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 これは紙芝居と同じ方法を用いて、ワンシーンごとに絵を入れ替えるもの。各絵には小さな穴が無数に開けられていて、後部からの光を透かしてキラキラと輝いて見えるしくみのようだ。実演はなかったけれど、女の子のドレスが華やかに揺れて夢のある光景なのだろうな。
 1800年代後半になると、装置がより大掛かりなって・・・

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がっちりとした本体にレンズを付けたものが現れる。透過性の絵のパネルを透かして、数コマのシーンを連続して見ていたようだ。
 それにしてもこの機械の美しいこと。ティーポットのようなもの、赤く塗られた中国趣味のもの、エッフェル塔なども。昔の道具はどうしてこんなに手が込んでいるのだろう。

 さらに時代が進むと、動く絵への欲求が膨らみ、こんな装置が生まれる。
f0133814_719107.jpgf0133814_721613.jpg
絵を回すことで、動きがより早く、スムーズ、かつダイナミックになる。左は円柱形の装置の細い穴から中を覗いていると、棒を振りかざす男とその足元でちょこまかする子供、真ん中にはにゅぅっと伸び縮みする赤いライオンが見える。
 右の円盤はかなりグロテスク!手前は中心の黒い穴から人がニョキニョキ這い上がって来るし、真ん中の絵からは小さな人が梯子を無我夢中に登り、その奥の薄緑の円盤はペイズリー型の模様がニョロリンニョロリンと湧き出てくる感じ。どれも見ていると鳥肌がゾゾーッ!気持ち悪い~と言いながら、でも見てしまうのがお決まりなのだけれど。

f0133814_8185516.jpgf0133814_8192452.jpg
 お口直しに星のように輝くピアッツァを。その場を離れかけては後ろ髪を引かれる思いで戻り、何度も見た。

 こんな簡単な方法で、人の心をうっとりさせる光と影、連続がもたらす魔術。老夫婦が仲睦まじく筒を覗いては感嘆の声を上げている様子がとても印象的だった。
 遠い昔の思い出が蘇ったのだろう。光と影の魔術に誘われて。

キラキラ・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-03-17 08:43 | イタリア他の町 | Comments(10)

光と影、そして錯覚 ―映画博物館その1―

f0133814_0434096.jpg
 トリーノのシンボル、モーレ・アントネッリアーナMole Antonellianaの中で光と影、目の錯覚で遊ぶ。
 ここには世界有数の映画博物館があると聞いて行ってみた。エレベーターで塔の上に登る時、古い映画のパネルがたくさん見えていたが、入るといきなりバリの影絵ワヤン・クリに出迎えられた。
 ああ、この人。懐かしい。
f0133814_012499.jpg
 その横では影絵の人物たちが忙しそうに走っていた。影を追いかけるのって楽しい。いつもは自分の影に追いかけられているからかな。その先には小さな光が並んでいる。近づいてみると・・・

f0133814_0145417.jpgf0133814_0134587.jpgf0133814_0142499.jpg影絵の作り方だった。

あひる
帽子の男性
ジャンプする猫
f0133814_0132058.jpgf0133814_0152328.jpgf0133814_0155551.jpgこちらは
般若?

狐?

かわいい!本当にこんな風にできるか、今度やってみよう。

f0133814_0283343.jpgf0133814_0293211.jpgそしてここは目の錯覚で遊ぶコーナー。
前から見るとこんな絵だけれど、真上から覗くと・・・クローバーの葉が!

f0133814_0253449.jpgf0133814_026696.jpgきれいな絵が円を描くように並んでいて・・・穴を覗いてみるとまぁ、すてき。長い羽飾りの鳥がそこに。
 描かれた同じ絵を見るのと、こうしてそっと近づいて覗いてみるのとでは、こんなにも感じ方が違うものなのか。

f0133814_0302625.jpgf0133814_03116.jpgf0133814_0313468.jpg
 これは同じ手法で空間を利用したもの。
 足マークの場所に立ち、その天井の円錐オブジェを見上げると・・・、思わず感嘆の声が。透明感のあるこの色遣いに心を吸われるような気分になった。コガネムシの一種かな・・・。あ!虫嫌いの方、スミマセン!

 光と影の素朴な遊び、目の錯覚の不思議な世界を体験し、子供のようにはしゃいでしまう。こんなに面白い博物館は久しぶり。もうちょっとつづく・・・。

影遊び・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-03-17 02:28 | イタリア他の町 | Comments(2)


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