カテゴリ:伝統・技術( 13 )

ラグーザの馬場

 以前にラグーザで教えていた生徒の中に、二人の子供がいるドイツ人のお母さん、クリスティアーネさんがいた。自分の娘たちと同世代の学生にまじって最前列で授業に臨み、ドイツ語訛りの力強いイタリア語で熱心に質問する人だった。その彼女が卒業論文を書く準備のため、ルカの指導を再び受けることになり、つい先日、久しぶりなので我が家にお茶にご招待した。リディアの紹介も兼ねて。

 次女のカロリーナさんと来宅し、弾むおしゃべりの中で、乗馬のレッスンに毎日二人で通っているからリディアに馬を見せてあげる、ということに。そして昨日の午後、リディアはお昼寝していない?じゃあ馬を見に行きましょうよ。5時15分にお宅の前でね!と突然の電話。行動派の彼女らしいお誘いに感謝。リディアも Si, andiamo a vedere i cavalli~! Dobbiamo uscire~! お馬さんを見に行こう!出かけなきゃ!と大興奮。

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 ラグーザ郊外には3つの馬場があり、そのうちの一つがここ。30頭近くの立派な馬がいて圧巻。ほとんどが持ち馬で、シチリアらしい難しい名前が多いのが面白い。

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 カロリーナさんは乗馬のレッスンのため、馬具を取り付けている最中。

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 白い体にグレーのマーブル模様が薄く入った上品なお馬さん。名前は…、Sで始まるシチリアっぽい名前…。ちなみに7000ユーロ(約91万)で購入したとのこと。13、4歳くらい女の子が乗っていた黒光りするAlexという馬は、なんと25000ユーロ(約325万)!ヴァイオリンみたいな価格にびっくり!

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 そんな立派なお馬さんたちの手綱を引き、子供たちは月曜から土曜まで夕方に毎日レッスン。4,5歳から始められるそう。

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 レッスンが始まる前の各自のウォーミング。次々に子供たちが馬を連れて入って来て、最終的には10数頭がギャロップや柵越えを練習。

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でもリディアは遠くから馬を見ているだけでは満足せず、Voglio carezzare i cavalli! お馬さんをなでなでしたい!と、馬舎でお休み中の馬たちをかたっぱしからなでなで。

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 口の上辺りのやや凹んだ部分を触ると、この上なく柔らかく、温かく、ふわふわの幸せな気分に!クリスティアーネさんはキスまでしちゃうし。

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 子供たちは皆、一人で馬具を取り付けレッスンに行き、たくさん走って汗だくで馬舎に戻って来ると、馬に水を飲ませたり、体をブラッシングしたり、仲良さそうにしていてとても頼もしかった。白いポニーで練習中の7,8才の女の子は背が届かないので、クリスティアーネさんがお手伝い。

 子供たちの様子を見ていたリディアは、Voglio salire su cavallo!お馬さんに乗りたい!を連呼。最後に係のおじさんが茶色のポニーにひょいと乗せてくれて、目をキョトンとさせながら手綱をしっかり握り、とっても満足そうだった。
 お昼寝せずに頑張って起きていて、たくさんの馬に触れた一日。全身全霊で遊んで疲れたのか、帰宅してシャワーを浴びさせている間に寝てしまい、翌朝8時半まで12時間の熟睡。

 コンサートも図書館も児童館も何もない、と嘆いていたけれど、ラグーザの良さはこんな所にあったのかと再認識。もっと外に目を向けなきゃ!


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by hyblaheraia | 2015-05-17 17:23 | 伝統・技術 | Comments(4)

シチリア恋し -カンタストーリエについて書きながら-

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 離れている時間が長くなるほどラグーザの記憶が色艶美しく、愛おしく迫って来るように感じる今日この頃。東京でシチリアのカンタストーリエ Cantastorie の貴重な録音を聴き込み、その歴史にについて調べながら、歌に込められたシチリア性(としか言いようのないもの)に深く共感し、強く魅かれていく自分に気付き、改めて心の隅々で叫びたい気持ちになっていた。
 それでもシチリアを愛している!だからシチリアを愛している!
 「それでも」と「だから」の間で揺れ動きながら、シチリアの大地と空と野鳥に恋焦がれる日々は少々辛い。思い入れのあるものは、離れているほど美しく感じられるものなのだろうか。
 
お知らせ:「カンタストーリエ -その歌に秘められる世界」
 日伊協会の会報誌『クロナカ』第128号、「フェデリーコ二世とシチリア」に寄稿しました。シチリアの口頭伝承文化、カンタストーリエについて日本語で始めて書かれたものです。かなり気合入れました!

目次および購入方法は日伊協会のブログ ←こちらで見られます。(一部300円)


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by hyblaheraia | 2011-01-22 23:52 | 伝統・技術 | Comments(12)

Muragghiu ムラッギュ

 ラグーザ生活において、どうしても見たかったものがある。

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 土地を開拓した時に出てくる石灰石をひたすら積み上げ、石壁と小屋を作ったもの。

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 Muragghiu ムラッギュ。ラグーザの伝統技術の結晶。

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 3段構造のうち、下段はモディカ様式、中段と上段はラグーザ様式。
 前者は5面をカットし積み易くした石を、後者は手を加えず形の合う石同士を重ねていくのだそう。

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 3段の石小屋から、どこまでもムーロ・ア・セッコmuro a seccoが続く。途中に井戸や釜戸らしきものもあった。

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 石小屋に登ってみる。ここは中段。セメントを使っていない上に、何年も放置された状態なので、石がグラッと揺れる時がある。

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 上段まで登りたかったが、石の威厳と脅威のようなものに圧倒され、これ以上は進めず。それでもこの高さから見る景色は、


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 なんと清々しいことだろう。向こうは海、

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 その続きには、イ・ミンネi minne、ラグーザ弁で「女王の乳房」を意味する二つの山がある。靄に隠れてエトナ山が不在だったが、馬たちの姿を追っていた。



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 石小屋の中に入ってみた。天井はぽっかり空き、光が漏れるているのは、何かのまやかしか。中段からはこの小さな穴が見えなかったので、不思議な感覚だった。

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 何かを追い求めるような、石の重なり。その声に耳を傾けていよう。

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 全ての重みを支える最底辺の石たち。あまり辛さは感じられない。

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 入口からの強烈な光。全てから守られているような場所だった。



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 ずっと夢見ていたムラッギュ。圧倒的な石の存在を身体で理解した。
 よじ登り、爽やかな風を受け、潜入し、湿った空気を嗅ぎ、石の声を聴いた。周囲の土は足を取られるほど柔らかく、黒く、白い石灰岩が不変の模様を散らしていた。一面に根付く鋭い枯れ草は肌を突いたが、瑞々しい可憐な花は痛みを忘れさせ、石の隙間にうずくまるカタツムリが我々の笑みを誘った。
 何もかもが想像を超えていた。
 
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 ブログ400回目の記事は、憧れのムラッギュと今日の満月、そしてラグーザに来てくれたai-pitturaさんご夫妻の思い出に捧げよう。

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 ブログを通じて、ai-pitturaさんの精力的で挑戦的な創作姿勢と、ご主人の器に注がれた穏やかで静かな視線に興味を覚え、彼らに聞きたいことが山積していた。その全ては質問できなかったけれど、彼らとの芸術談義を通して、何かが甦って来るようだった。

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by hyblaheraia | 2009-09-05 08:13 | 伝統・技術 | Comments(16)

楽しい農業・生活用品店

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 近所の農業・生活用品店。
 ここに行く時はいつも心が躍る。使ったことのない道具がゾロゾロ並び、地元のお爺さんたちのオシャレの秘密が見つかるから。
 これは、店先で輝いていたトマトソース・マシーン。


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 湯剥きしたトマトを上から入れハンドルをぐるぐる回すと、この小さな穴からミュリミュリッとソースが出てくる。右はモーター付きのマシーンでルカのお爺ちゃんはこれを持っていたそう。小さい頃、兄妹総出でソース作りを手伝わされたから、もう作りたくないと言っていたけれど、なんだか嬉しそうに説明していたな。

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 自家製ワインやオリーヴオイルに蓋をするマシーン、昔懐かしいほうき、真空瓶詰め用の大鍋、そしてピカピカのシチリアの火鉢もあったり。生き生きした生活が見えてくるよう。

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 左の巻き巻きは蚊・蝿を通さないための糸のれん(モスキエーラ)。ドアや窓の寸法に合わせて作ってくれる。カラフルなのはいかにもイタリア的。右はスノコいろいろ。意外と東洋的なものが愛用されている。

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 こちらはシチリアのお爺さん身だしなみグッズ。タスコと呼ばれる伝統的コッポラ帽の夏バージョン、ちょっとニヒルな麦わらハット、若々しいキャップなど。足元にも気を配り、社交用サンダル、普段履きの布靴、そしてなぜか派手な運動靴まで!ジム用かな。

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 もちろん婦人用も取り揃えている。柔らかい皮使いでクッション性の高い室内履きから、バックベルトのお出かけ靴まで、デザインも色も豊富。
 上の方には刺繍・レース用の枠(テライオ)と洗濯板がぶら下がっていた。シチリアではお爺さんたちが外で遊んでいる間、女性たちは家事をしたり、誰かの家に集まってレースをしながらお喋りしたりする。
 
 
 何から何まで、シチリアの日常がびっちりと詰まったこの店。いつ来ても飽きず、これらの道具を格好良く使いこなせるようになりたい、と思うのだけれど・・・。
 その頃には、貫禄たっぷりになっているかも。 


楽しくて、いろいろ見ちゃいます。      
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by hyblaheraia | 2008-07-28 07:46 | 伝統・技術 | Comments(12)

小さなレースに込めた想い

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 ああ、なるほど。見た瞬間、深く納得した。
 スフィラート・シチリアーノSfilato sicilianoと呼ばれる伝統レースの店で見つけた小さな作品。わずか10センチ四方のスフィラートには、チンクエチェント500と呼ばれる伝統的な技法でレースが施され、片隅にイニシャルが刺繍されている。
 スフィラトリーチェ(レース作りの女性)たちの、アイディアの結晶とも言える素晴らしい作品。

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 色は白とベージュの二色。花瓶敷きや置物敷き、コースターとしてだけでなく、香水を数滴垂らして引き出しに、あるいは額に入れて飾ってもいい。大切な友人への誕生日カードにそっとしのばせたり、持つ人のセンスでいろいろな使い道が広がる。


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 伝統的な作品はこのようなタイプのもの。やや細長い形のテーブルセンターの両端に房飾りを付ける。花やリボンを散らしたり、天使を描いたりするのも昔からのもの。
 犬と猫のレースは初めて見た。なるほど、技術さえしっかりしていれば応用はいくらでも効く。

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 少し大きめのものも、真四角のものも。やはりこのバランスが取れた真四角のものに魅かれる。

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 タオルやテーブルクロスも。大きなものは制作に2~3ヵ月かかる。目と肩と指を酷使する辛い手作業からは想像もできない軽やかさ。


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 こんなかわいらしいベビー服も。手芸のプロたちだからこそできる、編み物とスフィラート、刺繍のコラボ作品。
 贈られた人はどんなに喜ぶだろう。

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 こちらはフェルトのスリッパに刺繍を入れたもの。明るく若々しいセンスが光っている。伝統的な柄に固執しない自由な発想が素晴らしい。
 先の10センチ四方のスフィラートを小さな籠や、イブラを描いた陶器と組み合わせた贈り物も。人気商品だとか。

f0133814_17324819.jpg フランスを経由して1400年代からラグーザ県に伝わる伝統レース。その技術はクアットロチェント400、チンクエチェント500、セッテチェント700、と生まれた時代の名前とともに現在に伝わる。

 薄い麻布に図柄を描き、小さな鋏で穴を空け、麻糸で穴の周りを全てかがることで生まれる作品は、指先の繊細さと人の温もりと、手仕事への深い愛情が込められた、世界で唯一つのものとなる。

 手引書の類は存在せず、母から娘へ代々伝えられ、かつては嫁入り道具として作る習慣があった。しかし今は、廉価な機械レースの存在と、若い女性のスフィラート離れのため、存続の危機に面している。長い日数を要する手仕事のため、価格も少々高めになるのも原因の一つだろう。

 だからこそ、このアイディアに満ちた作品の数々に私は明るいものを見る気がした。
 伝統技法に対するスフィラトリーチェたちの愛情と努力と、自由な創意が満ちた店内。とりわけあの小さな作品が、彼女たちの想いを語っていた。


スフィラートの素晴らしさを伝えたくて・・・。
 
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by hyblaheraia | 2008-07-06 18:44 | 伝統・技術 | Comments(10)

カルタジローネの陶器

 シチリア中部の町、カルタジローネは陶器で有名。色鮮やかな絵付けは明るい雰囲気を醸し出し、見ているだけで元気な気持ちになってくる。

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 大型の掛け時計のあるキッチンは憧れ。こんな鮮やかな時計を見ながら朝を迎えたら、いい一日が始まりそう。

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 像の置物もずっと気になっている。玄関に置いたら、出掛けるときも、帰宅したときも、明るく出迎えてくれるだろう。

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 蝶々の壁飾りは既に二つ持っているけれど、将来はチェンバロの部屋の一角に、花畑から一斉に羽ばたいたように飾るのが夢。

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 アンティーク仕上げの高級な壺は、もっともっと年を重ねてから持ちたい。今は見ているだけで十分。

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 右端に見えている四角い植木鉢を買いかけたことがある。底には猫足が4本付き、どの面にも指で平に慣らした跡が見えて、手仕事の息遣いが伝わる鉢。なんだか持つのはまだ早い気がした。

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 ロココの風を感じる優美な壺。ラモーとクープランのチェンバロが聴こえてきそう。
 
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 背伸びせずとも、小さな日用品だってこんなに輝いている。オリーヴやジェラートが盛り付けられた姿を想像する。

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 幸運を運ぶ小さなフクロウもいる。皆さん、何か真剣に考え中・・・?
 
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 いつも、これだけは・・・と思う夫婦の顔の置物。テラスや中庭、門柱などを飾るものだそうだけれど、かなり不気味。我々夫婦の顔だったらもっと不気味。

 ああ、やっぱり時計かな。
 ナポリのお義母さんからの誕生日祝で何を買おうか考え中・・・。

こちらは迷わずに・・・。
   
 
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by hyblaheraia | 2008-07-01 17:15 | 伝統・技術 | Comments(18)

テッラコッタの温もり

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 テッラコッタterracotta、つまり焼いたcottaterra
 優しい肌色からオレンジがかった茶色まで色のヴァリエーションがあり、どれ一つとして同じものはない。果物や植物などの装飾をほどこしたものは、さらに一層、柔和な雰囲気を醸し出している。プラスティックのプランターにはない土と手の温もりがそこに。

 ラグーザ新市街、サン・ヴィート通りVia San Vitoには、植木鉢や陶器、民芸・生活雑貨を扱う小さな店がある。野ざらしに見本が並び、その横には配達用と思しきオート三輪が。ほっとする店構え。

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 汎用型の鉢は40セントから、真ん中の葡萄の装飾付きは8ユーロ。思ったより安くてさらにほっとしてしまう。右はシチリアの古い果物、ざくろの模様。こういうものにジャスミンを植え替えたら、さぞテラスが優雅になるだろう。重いので次回検討として。

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 バルコニーを溢れるような花で飾りたくて、バルコニエーラbalconiera(フィオリエーラfiorieraとも呼ぶ)を2つ。S字型の装飾付きで小ぶりのものを。
 左手前は壁にかけるタイプの鉢。テッラコッタは重すぎたのでプラスティック製に。
 そして右は、成長して止まない多肉植物のために少々贅沢なテッラコッタを。まだ色が薄いけれど、何年も使っているうちに味が出てくるだろうな。多肉たちも喜んで、さらに肉肉!

 さて、この店に私が心をときめかすもう一つの理由は、シチリア陶器の数々。
 クリスマスのプレゼーペpresepe(キリスト誕生の物語を人形で表現する)の楽しい人形たちがこんなに!

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革をなめす革職人、マンドリンを弾き語りする小麦売り?仕立て屋トントン、シャラン~、ジョリジョリ、いろいろな音が聞こえてきそう。
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陶器接ぎ職人。面白い道具を使っている。昔は陶器が割れても捨てず、接着剤を塗って固定した後に、ひびの両脇に穴を開け特殊な針金で縫って修理したそう。もうこんな職人なんていないだろうな。
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パン売りサボテンの実売り(夏)、フィノッキオ売り(春)。品物を一種だけを大量に売るおじいさんは今もいる。イ・フィクパーリはいらんかね~!Pigliate i ficupali!(ラグーザ弁)と叫んでいるはず。手が面白い!
 この人形たちは、一体一体が全て違っていたのには驚いた。同じ革職人でも黒髪の若そうな男性から、長い白ひげのお爺さんがいたり、帽子を被っていたりと様々。手造りだからこそできる人形への個性の吹き込み。

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 こちら左の細長いものはシチリア陶器の名物、お玉置き。料理中にとても便利で私も愛用している。
 右は一輪差しや置物として飾るもの。昔は熱湯を入れて湯たんぽとして使われていた。この水筒型以外に、小さなかばんや靴の形もあり、女性が持つものだったので柄や色遣いがとても繊細。2つの輪があるのは、紐を通して提げたからかもしれない。

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 そして覗きこむカモたち。像、カメ、蝶々、テントウムシ、フクロウなどがシチリアでは幸運を呼ぶモティーフとして愛されている。来客用のカフェ・セットは中央にシュガーポットがある。パーティーの時に活躍しそう。

 テッラコッタと陶器は見ているだけで心が明るく満ち足りていく。
 作品として美しさからだけでなく、シチリアの古い習慣を形に残し、昔の人々の心豊かな生活を、手の温もりで伝えているからだろう。

テッラコッタ好き・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-06 10:06 | 伝統・技術 | Comments(18)

カルタジローネ焼 -セイチェントの魅力-

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 シチリアのカルタジローネ焼ceramica di Caltagirone
 ぽってりとした白地に透明な緑色、輝くような黄色、時折ルビー色橙色を織り成しながら、シチリアに古くから伝わるレモンやザクロ、オレンジ、想像上の花や鳥が流れるような筆致で描かれている。その横には典雅な、涼やかな水色による単色遣いの絵柄も並ぶ。色が少ないと模様の動きに感覚が集中し、レースを見るような心地になる。
 どちらも触った感触は温かい。懐かしさと親しみのようなものを感じさせるのはなぜだろう。

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 2月にフルーツボウルを割ってしまって、代わりになるものを買わねばとずっと思っていた。近所にカルタジローネ焼の店は2件、親しくしているシニョーラが半ば趣味で絵付けをしている陶器の店が1件ある。
 まずはシニョーラに電話をかけると今は仕事中だから(郵便局員)、来週の月曜午後にお店で会いましょうということに。約束を交わし、品数豊富なカッテドラーレ横のいつもの店へ行った。

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 シチリア陶器では緑色が最も古いと聞いたことがある。店のおじさんに質問すると、緑は銅を、黄は鉛を原料にした色なので、安価で手に入り易く、昔から一般的に使われた色なのだと教えてくれた。青はコバルトから採取するので、より高価なものなのだそう。
 ブルーの皿は冷たい感じがしてどうかと思ったのだが、この柄と描き方がセイチェントseicento(1600年代)のものと聞いて心が激しく反応した。私の研究対象は同時代の世俗カンタータなので、セイチェントと聞いたら居ても立ってもいられなくなってしまう。

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 そうしてセイチェントという言葉に判断力を失い、予定外のブルーの皿を手にしている。やっぱりオリジナルな緑と黄色のものにしておけば良かったか。
 後悔しつつ恐る恐るオレンジを盛り付けてみると、あら!意外と意外なんじゃないの?

 コバルトブルーのセイチェント柄、その高貴な雰囲気にすっかり酔っている。
 35ユーロ(約5600円)もしたし、もう絶対割らないぞ。一生大事に使おう。そして心の中でこだます決意の言葉。
 欲しがりません、割るまでは!

 また割るかもしれないという潜在意識的予測が既に・・・。 
(最近、戦時中のスローガンが我が家で頻出。ルカのセリフは贅沢は敵!

割るまでは・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-01 08:52 | 伝統・技術 | Comments(16)

スフィラート・シチリアーノ

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 Sfilato sicilianoスフィラート・シチリアーノ (シチリア・レース)
 細かな作業と途方もない時間をかけ、無地の布から精緻なレースを生み出す伝統技術。その歴史は古く、1300年代後半には既にシチリア東部に存在していた。それがラグーザとコーミソ(ラグーザ県内)で長い年月をかけて洗練されてきた。スフィラート・シチリアーノと言えば、まさにラグーザの女性たちが紡ぐこの伝統工芸であることを意味する。
 制作の工程は実に長い。しかも一つの作品は4人の女性の手を経て完成される。1.麻の布にデザインを描く人、2.そのデザインに沿って小さな鋏の先で無数の穴を開ける人、3.それらの穴に別糸でレースと刺繍をほどこす人、4.全体を布から切り取りアイロンや房飾りで仕上げる人。こうして作業を分担し、小物であれば大きな布から4~5点の作品が生まれる。

 スフィラートには400クアットロチェント、500チンクエチェント、700セッテチェントと呼ばれる3つの技法があり、それらの数字は個々の技法が誕生した年代を意味する。隣町コーミソでは、フランスから入ってきたフィレfiletの技法も磨かれてきた。
 いつものスフィラートの店で、4つの技術の違いの説明を聞きながら、溜息が出るような美しい作品を眺めていた。触ることさえ憚られるような清らかさを感じつつ、至福の時間が過ぎていく。なぜレースは人の心をこうも打つのだろう。

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写真左:上からフィレ500チンクエチェント(花柄)、700セッテチェント(横向き)。写真中央・左:ともに500
フィレは糸で網を編んでから刺繍で模様をほどこすもの。500は布地に模様を残し、その周りに穴を開けてレースかがりにしたもの。700はレースかがりの中に模様の刺繍をほどこすもの。雰囲気はこんなにも違う。
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700セッテチェントのテーブルクロスとテーブルセンター2つ。レースの中に刺繍模様が浮かぶ。
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フィレとプント・アンティーコpunto anticoの組み合わせによるハンドタオルとテーブルセンター。
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フィレのテーブルセンターとアンティークのフィレを活用したテーブルクロス。
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糸から紡がれるフィレ。水色とのコンビネーションにはまた違った雰囲気が漂う。アンティークのフィレがここにも。
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左:uncinettoウンチネットと呼ばれる鈎針レース。スフィラートよりも容易なのでこれができる女性は多い。私も友人にレッスンを頼んでいる。中央:プント・アンティーコ、スフィラートができる女性はこれは新しくて易しい技法だと言う。右:刺繍入りトゥッレtulle ricamato。

 ラグーザ伝統のレース技術について、特別な手引書も学校も存在しない。それらはもっぱら家庭の中で母から娘へ代々伝えられてきた。女性たちは誰もが自分の技術に対して誇りを持ち、ジェローサgelosaで、他人には決して教えたがらなかったそうだ。言わば門外不出の技法が各家庭で大事に守られてきたのである。
 女性が職業を持つことも一人で町を歩くこともできなかった保守的なシチリア社会では、その閉鎖的な環境こそがレース技術を洗練させたという人もいる。膨大な時間をかけてレースをほどこしたシーツ一式、ベッドカバー、カーテン、テーブルクロス、手拭きなどの生活必需品は、嫁入りの持参金にもなった。腕のいいスフィラトリーチェ(スフィラートを作る女性)であることは、花嫁の条件でさえあった。こうして見事なレースが700年以上もこの地に伝わってきたのである。

 しかし今、スフィラートに関心を持つ地元の若い女性はほとんどいない。技術を持つ女性たちは高齢化し、目と指を酷使する作業から次第に離れている。さらに緻密な作業を経た手作りレースは高価すぎて売れないという問題も加わる。
 スフィラートの店はラグーザに数店あるが、どこに行ってもそんな話を聞く。スフィラートで生計を立てているシニョーラは、この仕事には忍耐と愛情と情熱が必要だと言っていた。
 ラグーザ伝統のスフィラートとフィレの美しさが未来永劫紡がれていくには何ができるだろうか。

シチリア・レースよ永遠に・・・!
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by hyblaheraia | 2008-03-07 03:54 | 伝統・技術 | Comments(4)

ホコリ頭を叩いてみれば

 散切り頭を叩いてみれば、文明開化の音がする。
 ホコリ頭を叩いてみれば、テラス工事の音がする。
 ああ、文明開化とはほど遠い生活。もうゲホゲホでゴザイマス。床も、テーブルも、棚も、本も、ソファーも、自分も、粉だらけ。
f0133814_23363980.jpg 只今、テラス工事の真っ最中。
 長年の使用でタイルの目地にヒビや割れ目が入り、知らない間に、そこから雨水が浸透していた。さらに悪いことに、その水はテラス真下の寝室の屋根にまで浸み込み、天井にカビが発生してしまったのである。

 タイルの下地が乾くまでテラスには出られないので、この扉の中にある暖房のスイッチを入れられない状態。スイッチだけONにしておけばいいのに~、という声が聞こえてきそうだが、オイル漏れの問題が未解決のため、暖房をON,OFFするたびに、オイルタンクの元栓も開け閉めしなければならないのだ。
 ああ、厄介なことだらけ。そして一段と寒い今日この頃。

 工事にはいつものドンドリーナおじさん(勝手に命名)が来てくれた。ラグーザ弁が強くて、ルカとの会話は同じことを2~3回言わないと分かり合えないほど。でも、なぜか私とは意志の疎通が以外とスムーズ。不思議な現象発生中。

f0133814_2343625.jpgf0133814_23432684.jpg工事1日目
 テラスは4階、しかもキッチンの隣なので、作業場は自ずとキッチンとなる。
 セメントの粉やら塊が散乱し、タイルの山も。これを運び込んだドンドリーナおじさんは、無口な人なのにきついねー、ここの階段は、ともらした。あ、やっぱり。

f0133814_2345331.jpgf0133814_23511947.jpg工事2日目
 タイルの下地となるセメントと、タイルを切るアンティークな道具。紙の裁断機と同じ原理だった。
 笑顔を湛えるKerakoll氏だが、あたなを笑顔で迎えたくはないのデス。
f0133814_23533385.jpgf0133814_235494.jpgタイルを並べ始めたところ。
 ゾゾ~~、なんだか墓地みたい・・・。
 この十字型の小道具はその名もクロチェットcrocetto、小十字架。これでタイルを垂直に保つ。ちょっと不気味だけど。
f0133814_23553694.jpgf0133814_022039.jpgそしてタイルを切るチェンソー!これが極めつけだった。
 大騒音と大粉塵を撒き散らし、もはや我が家は石切り場のよう。
 一応、キッチンですが・・・。

f0133814_025797.jpg そして工事中、我が家はこうなる。工事が早く終わるかどうかは、天気次第。
 マストレッラmastrella訂正 マエストラーレmaestraleが吹けば、早く乾くんだけどね。とおじさん。
 え、何ですかマストレッラって?とルカ。
 北から来る強風だよ。冷たくて乾いているやつさ。
 あ~、いわゆる冬将軍か!と、一人納得していた私。

 やっぱりルカよりドンドリーナおじさんの言うことが分かるみたい。
 ホコリ頭を叩いてみれば、ラグーザ弁が聞こえてくるかな。

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by hyblaheraia | 2008-01-26 01:28 | 伝統・技術 | Comments(8)


シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


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2013年11月、共著出版



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