フォルテピアノ?!

 実はね、修理途中のフォルテピアノFortepianoがあるんだよ。
 おじさんの言葉に半信半疑で2階に上がってみると、遠くになにやら四角くて大きなものが見えてきた。これは・・・
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 もしかしてスクエア・ピアノ?いやスクエア・フォルテピアノ?!こんなの見たことがない。
 1780年頃(1800年には至らない)のもので、全76鍵、鍵盤の深さは7ミリだそう。
 蓋は半開きだったのでで中は埃だらけ、ペダルも外れたまま、各種パーツが弦の上や隣のピアノの上に無造作に散らばっていて、なんだか全体像が良く分からない。

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 とりあえず弦の上のものを取り除き、音を出せる状態に。
 鍵盤は象牙、ハンマーアクションの部分はオリジナルのまま。良かった、まだ切り刻まれていないし、青ペンの跡もない。鍵盤下の枠の彫り込みがきれい。木目も艶もいい感じ。そして肝心の音はと言うと・・・、
 ビュルル~ン、ジョビョヨヨ~~ン。うわ、だめだこりゃ。弦が緩められていたので試奏はまったく無理。

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 メーカーはReinhard Müller。ネットで調べてみたら、ブダペストにミュラー・ピアノという歴史ある会社があった。Marburgマールブルクで営業していたかはどうかは突き止められず。同じ会社かな。

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 ピアノの脚はこんなにふくよかで曲線がきれい。ペダルはリラの形。ただ、3本の鉄芯が伸びているのに、ペダル足が1つしかないのが気になる。あと2つはどこ?
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 ところで、フォルテピアノとはピアノの初期のもので、フィレンツェのメディチ家に仕えていた楽器製作者クリストーフォリBartolomeo Cristofori(1655-1731)が1709年に発明したと言われている。鳥の爪で弦をはじくチェンバロから、弦をハンマーで叩くフォルテピアノが生まれ、強弱や微妙なニュアンスが表現できるようになった。銀の糸がこすれ合う輝かしい音から、水滴が光を受けながら石に落ちる音へ変化したような感じ、とでも言えるだろうか。

 現在のピアノは1音につき弦が3本ずつ張られているのに対し、フォルテピアノは2本。ハンマーの頭はフェルトに対し、木に薄いを巻いたもの。覗きこむと確かに、2本の弦だ。ハンマーの素材は興奮して確認するのを忘れてしまった。
 興味深く見入る私におじさんは言った。
 これなら2500ユーロでいいよ
 まけてくれたつもりなのか・・・な?

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 周りにはアンティーク家具がゴロゴロしていた。この引き出し付きの机は300ユーロ。広くて趣のある机が欲しかったので、なんだかこっちも気になった。

 フランス製1800年代のピアノも、ドイツ製のスクエア・フォルテピアノも、出会えただけでとても嬉しかった。100年以上も前の繊細な楽器を所有する人には、歴史的遺産を受け伝える責任もある。楽器を通じていろいろなことを感じた一日だった。
 そしてますます欲しくなった!チェンバロ(現在の普及型)を買うぞ!
 いつか・・・。


フォルテピアノとチェンバロの違いを知るとっておきの作品
J.S.バッハ《3つの鍵盤楽器のためのコンチェルト》BWV1063の3楽章。右の2台の楽器がフォルテピアノ、左2台はチェンバロ。有名なラベック姉妹の演奏です。

モーツァルトのピアノ・ソナタでは今のピアノとの響きの違いが良く分かります。

さらにお勧めはこちら。J.S.バッハのシンフォニアBWV797を自筆譜を見ながらどうぞ。フォルテピアノの表現の深さにうっとり。心に染み入る素晴らしい演奏。

楽器は大切に・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-05-17 11:26 | 生活 | Comments(8)
Commented by Gina at 2008-05-18 11:54 x
お稽古事でピアノを習っていたときに、どうもバッハは弾いていてしっくりこなかったことを思い出します。
きっと、ヤ○ハのピアノでひいていたからなんだな。
Commented by higo at 2008-05-19 00:03 x
私も高校2年まで続けていたのですが、不思議な事にバッハだけは楽譜さえ渡されませんでした。↑こちらの演奏を聴いている内に、先生も現代のピアノでは表現し切れない事を感じていたのかも知れない、と思い始めました。チェンバロやフォルテピアノだと、こんなに表情豊かになるものなのですね。特にトリルや飾り音符のあたりでは際立って、音が煌いています。彼らが作曲していた当時は、こういう楽器だったのでしょうから、音色が活かされるような作風になっているのでしょうね。現代のピアノで作曲したなら、違う作風になっていたかも知れませんよね。
Commented by modicana at 2008-05-19 02:31 x
時の流れを経て、なんともいえない、趣のある素敵なピアノたちですね~優雅なラインといい、細部のこだわりといい、これぞ、職人の技という感じ。
 あーそれなのに、それなのに。
 やっぱり、美はうつろいやすいのね。 ただでさえ、調律とか、お手入れが必要な、繊細な楽器だから、難しいのはわかるのですが・・・
 やっぱり、悲しすぎる・・・
 hyblaheraiaさんに、ひさしぶりにひいてもらって、ピアノたちも、
さぞ、うれしかったことでしょう。
 これから先、ドイツから買われてくるかもしれない楽器たちのためにも、hyblaheraiaさんとの出会いでおじさんの考えがかわることを願います。

Commented by hyblaheraia at 2008-05-20 05:45
>Ginaさん、ピアノをなさっていたんですね!私は子供の頃、カ〇イのアップライトでした。母の趣味で薄い茶色のアンティーク風の外観のもので、蓋が三つ折りでした。懐かしくなって同社のサイトで見たら、まだありました!あのピアノも先生の知人にもらわれて行ったんだなぁ・・・となんだか感傷的になったり。
そういえばグランドピアノの弦の上にボールペンを置いて弾くとジャリジャリ音がするのですが、それをチェンバロだ~!と楽しんだものでした・・・。悪い生徒でした。
Commented by hyblaheraia at 2008-05-20 05:58
>higoさん、higoさんもピアノをなさっていたんですね。フォルテピアノとピアノの音色の違いは、そのまま表現の違いにはっきりと表れます。昔、古楽がブームになった時、フォルテピアノによるベートーヴェンのピアノ・ソナタを聴いたのですが、あの頃はまだ耳が慣れていなくて、ピアノによる演奏の方が明瞭ですっきりとして、洗練されているように感じていました。でもその後、チェンバロをレンタルして古い響きに耳も身体も慣れ、心がそういうものを欲した時に、ああ、これだ!と思うようになりました。将来はチェンバロ1台、フォルテピアノ1台、グランドピアノ1台を持つのが夢です。壮大な夢!
バッハが今のピアノを見たら、どんなに感嘆したでしょうね。音楽史が変わっていたと思います。
Commented by hyblaheraia at 2008-05-20 06:13
>modicanaさん、本当にきれいなピアノで、今もわざわざ顔を見にお店の前を通ったりしています。誰の手に渡るのかなぁ・・・。どこに行ってもこれから何年も何年も愛されていって欲しいです。おじさんにも、あまり改造しないように頼みたいところですが、彼の楽器哲学か既にそうなのでなかなか・・・。
この2台の楽器との出会いで、大事なことをたくさん学びました。また、楽器として生きていくためには中身を入れ替えることも時には必要、ということも、ゆうゆうさんのコメントから学びました。将来私が手にする楽器のことは、家族のように大事にしていきたいな、と思います。
東京に置いてきたグランド・ピアノもいずれ引き取りたいのですが、どうなることか・・・。
Commented by peque-es at 2008-05-23 10:49
こんにちは。yokocan さんの所から、リンクを辿ってお邪魔しました。
画面の上からカーソルをずず~っと動かして行って、この記事とすぐ下の記事に目が留まりました。

珍しいフォルテピアノの演奏ビデオのご紹介、ありがとうございました。
下のふたつ、古い楽譜(モーツァルトの方は印刷譜?)の音符を追いかけながら、フォルテピアノの演奏を聴いていたら、心に不思議な余裕(?)が生まれてきました。うまく言えないのですが…

リンク、頂いて帰ります。
Commented by hyblaheraia at 2008-05-23 22:03
>peque-esさん、こんにちは!初めまして!ようこそおいで下さいました。
フォルテピアノの音を気に入ってくださって嬉しいです。今のピアノのような完全に洗練された響きではなくて、木の箱の中で少しかすれたような、こもった声で恥かしそうに歌う感じが私はとても好きです。カンタービレな楽章だとその声が一層豊かに聴こえてくるような気がします。
心に不思議な余裕が生まれる・・・、本当にそうですね。高級レストランよりも家庭の味の方がゆったりできるのと同じかな、な~んてすぐ食べ物に例える悪い癖があるのですが・・・。
peque-esさんのブログも拝見しました。スペインに20年もいらしたんですね。そしてロゴ写真のショパンの楽譜!ピアノをやっていらっしゃるんですね。そしてそして、プチ・ジャズ100を聴かせていただきました。とても優しい音の流れに、さざ波のように和声がついているのが素敵でした。他の作品もまた聴きにいきます。和声の教科書も久しぶりに見ました!懐かしい~!
リンク、ありがとうございます。私も入れさせていただきます。
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