水なし生活2日目

 昨日から水が無い。またこの問題で生活のリズムがすっかり崩れた。
 シチリアには現代生活に当然必要な水道網がない。各家庭の屋上や屋根裏、あるいは地下には貯水槽servatoio, cisternaがあり、市の水道管から毎日、一定時間放出される水がそこに貯められる。蛇口をひねれば好きなだけ水が使える日本やイタリア本土では考えられない生活スタイルだ。(写真:屋根の上の貯水槽)

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 水の供給時間は公的には朝7時~12時頃までという。しかし我が家には毎朝1時間ほどしか水が届かない。しかも一旦、貯水槽が満水になると、それ以上は水が4階屋根裏の貯水槽に上がって来ることはない。
 それは、モトーレmotoreと呼ばれる違法モーターを使って、近所の人々が市の水道管から水を強引に吸い上げるからである。皆が我先にと水を引き上げれば水道管の水圧が一気に下がり、モーターのない我が家には水が上がって来ないのである。
 これがシチリアの水問題の基本的な状況。
::::::::::::

 さて、昨日シャワーを浴びているとき、水量が急に少なくなった。考えられる理由は2つ。停電か、水が終わったか。停電ならば、貯水タンクから水を押し出すプレスコントロールが止まったことになる。水なら・・・、言わずもがな。
 石鹸の泡が付いたまま水が終わるのと、風邪なのにドライヤーが使えず髪が濡れたままでいるのと、どちらかがましか思わず冷静に考える。慣れとはこういうものか。
 シャワーを終えて電気のスイッチに触れると、煌々ととライトが付いた。ああ、問題は水か。

f0133814_1420156.jpg とりあえず水がどれくらい残っているか確認するために屋根裏の貯水槽を見に行くことにした。
 この梯子を登った所にそれはある。

 水問題が度々起きるため、梯子は常にこうして置いてある。

f0133814_14175074.jpg こんな細く急な梯子をソロリソロリと。
 普段ならルカと共同作業でどちらかが梯子を支えるのだが、この時は一人だったのでとにかく冷静に。落ちないように。

 ちらっと写っているヘンテコなズボンは・・・。

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 屋根裏ファッション。
 シャワーキャップ、懐中電灯、テラス用サンダル(本当はスニーカーがベスト、階段の途中で脱げると危険なので)の他、エプロン、ジャブジャブ洗えるフリースとズボン。ズボンはつまずかないよう裾を3重に折リ上げて。足は怪我しないよう厚手の靴下。これは唐辛子繊維入りの冬用ポカポカソックス。
 準備完了で登るとそこは・・・。
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 こんな感じ。汚すぎて全部はお見せデキマセン!砂埃、丸太、余ったタイル、ハトの糞、鳥の卵があったりする(何の鳥か不明)。
 左のライトを探すために懐中電灯が必要。右が貯水槽。その前にあるのが水を押し出すプレスコントロール。これがないと屋根裏から水が惰性で落ちるだけ。シャワーはチョロチョロ。
 そして貯水槽の蓋を開けてみると・・・。
 水は底1センチも残っていなかった
 
 緊急事態なので、大学にいるルカにメッセージを。すると数分後、今日はこれで授業が終わりなのですぐに帰ると連絡があった。屋根裏ファッションを脱ぎ棄て、二人で近所に飲料水のペットボトルを大量に買いに行き、店で聞いてみた。水はありますか?
 昨日は来なかったけれど、今朝ちょっと来たわよ、と平静に答える客のシニョーラ。こういう状況が普通だと思っている。
 店の主人も君たちはモーターを付ければいいんだよと言う。それが違法であることを誰も知らない、いや、知っていても水がなければ生きていかれない!と権利を主張して皆が設置している。

f0133814_14191972.jpg そんな自分さえ良ければいい、目先のことしか考えない、大きな問題に立ち向かわず手っ取り早い方法で自分の周りだけ解決しようとするシチリアのやり方に幻滅する。こんなに素晴らしい文化と自然に囲まれ、素朴に暮らす人々が、なぜ水問題に対してはこうも利己的になるのだろう。

 嘆いていても仕方がない。近所の事務所で働く友人に、いつもの通り、水汲みに車を出してもらった。私は風邪で自宅待機。情けないな。
 25リットルのタンク4つで100リットル。これでとりあえず、今日の生活をしのぐ。こんな時、一人暮らしの老人や病人のいる家庭ではどうしているのだろう。

 さっき、わずかながら水が届く音がした。それと同時に、隣の家のモーターが普段にはない鈍い音で大量に水を吸い上げているのが壁伝えに聞こえた。虚しい響きだ。
 そして道端からも聞こえてきた。
 今日は水が届かないわね~!そうそう、だから新しい家に行くところなのよ!あ、そうなの。チャオー!チャオー!

 ラグーザ人は町に1件、海にも1件家をもっている。水がなくても逃げる場所があるから、水問題を深刻に受け止めないのかもしれない。
 この町ばかりでなく、この島全体の意識が変わるにはまだ1世紀くらいかかるだろうか。

水よ届け・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-04-19 18:04 | 生活 | Comments(4)
Commented by poronliha at 2008-04-20 04:01
うわっ、すごい事情ですね・・・知りませんでした。水ってないとすごく困るものだから本当に深刻な問題。確かにすばらしい自然や文化、おいしいものがあるのにこういう問題が解決されていないなんてびっくりです。もう少しましな状況になるといいですね。
逃げ道があるから大丈夫というよりは国民性のような気もします。みんなの意識改革がないとなかなか進展しない気が・・・
Commented by hyblaheraia at 2008-04-20 06:11
>poronlihaさん、シチリア全体がこの問題を抱えているのに、北イタリアではほとんど知られていないようです。トリーノの友人一家ではこの話を聞いてみな驚いていました。同じイタリア人で同じように税金を納めているのに、水が自由に使えないというのは変な話です。鉄道もユーロスター(特急)は本土だけ。シチリアには古いレールしかないので、新しい車両が走れないそうです。そもそも電車が市民の移動手段として使えるほど走っていないんですが。
水は人間の基本的人権の一つだと思います。今回の水無しは、近所で大きな工事があるため、市が水道を止めたという話が上がっていますが、そんなこと事前連絡もなく、2日もするなんて信じられません。
Commented by P405 at 2008-04-20 21:51 x
hyblaheraiaさん、

大変でしたね。ご苦労様です。本当に何というインフラなんでしょう!
こういう自分達の努力ではどうにもならない問題が起こると、つくづくシチリアの生活が嫌になりませんか?問題の発生はどこでもある事ですが、ここはその原因の大抵が人災で、さらに対処の仕方がもう呆れてしまうような事ばかりで・・・。我が家は幸い今のところ水の問題はありませんが、浴室が雨漏りし、また大雨が降ると地下の物置は沼と化します。もう1年以上、大家さんや管理会社に修理をお願いしているのに、具体的な改善無しです。抗議すると管理会社がいそいそと様子を見にやって来ますが、本当に「見る」だけなので、もう諦めました。
Commented by hyblaheraia at 2008-04-21 01:55
>P405さん、ありがとうございます。実はまだ大変です・・・。今朝9時頃水が来たのですが、貯水槽を見に行ったら半分以下しか溜まっていませんでした。これが満タンになるには、まだ数日かかりそうです。
P405さんのお宅も大変そうですね。雨漏りは工事が大変な上、家の中も汚れてやっかいですよね。沼になる物置というのも凄まじいですね。
自分たちの努力ではどうにもならない問題・・・、本当にその通りですね。問題が起きるたびにまたか、と落胆します。先日の話題の滞在許可証もそうですが、この国には多くを求めていません。これ以上悪くならないことだけを願って、雄大な自然に囲まれていることを幸せに思うようにしましょう!前向きに、前向きに・・・。
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