両眼をえぐられた聖女に捧ぐ ―サンタ・ルチーア教会―

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 イブラ全景を見下ろす崖に立つサンタ・ルチーア教会。この右側にあの景色が広がる。
 ガイドブックにはほとんど掲載されない小さな宝石のような教会。ラグーザの中には世界遺産の教会10軒貴族邸宅8軒、合計18軒もあるのだから、省かれても当然かもしれない。

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 サンタ・ルチーア(Santa Lucia、聖ルチア)はシチリアのシラクーザに生まれ、婚約者にキリスト信者であることを密告され、304年頃、拷問の末殉教した。火炙りにされ、喉を剣で突かれ、両眼をえぐられたという伝説に基づき、彼女をテーマとした絵画には杯に乗せられた両眼が描かれることが多い。
 この教会の祭壇画も拷問の場面を描いたもの。ローマ人の手には鋭い刀が光り、ルチーアの足元には目を伏せる女性が。

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 教会内部の中心にはサンタ・ルチーアの像が。凛とした空気を湛え、左手には聖杯、右手には棕櫚の葉を持ち・・・

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 その両脇には、彼女のえぐられた両眼をモティーフにした銀細工が飾られていた。残酷な場面を昇華させ、象徴的に捉える精神が凝縮されている気がした。
 サンタ・ルチーアは目の病気の保護者でもあり、北欧では光の祭りの守護神でもあるそうだ。

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 パイプオルガンの上にも、シャンデリアの上にも両眼のモティーフが描かれていた。なんかちょっとカエルに見えてしまうのだけれど・・・(スミマセン!!)。

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 息を引き取ったルチーアを描いた作品。良く見ると両眼入れた聖杯を天使が持っていた。

 キリスト教の聖人の物語は、こうして重要な場面を伝える絵画とともに、子供にも理解できるようなインパクトを持って語られてきたのだろう。だからサン・ジョルジョは悪龍を殺して・・・、サンターガタは両乳首を切り取られ・・・、と聖人の伝説と聖書の教えがすぐに浮かぶのではないかと。
 字の読めなかった当時の民衆に聖書の物語を分かりやすく伝えるために、教会の祈祷所でオラトーリオOratorioが演奏されたのと同じことだ。
 本を読んでその理屈は十分知っていたつもりだけれど、今日はなんだか具体的にビッシビシ感じたな。
 
f0133814_746379.jpg 教会を見学した後は、必ず署名を。

 日付、名前、どこから来たか、を書くのだが、その日の気分でTokyoだったりRagusaだったり。この日はイブラの絶景を見ながら空を飛んだような気持ちになったので、ついRagusaと書いてしまった。
 こういう小さな教会だからこそ、外国からの訪問者として記帳すべきだったかな。

 まぁよい、また署名しに行こう!

両目をえぐるなんて・・・!。
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by hyblaheraia | 2008-03-28 08:59 | 歴史 | Comments(6)
Commented by yokocan21 at 2008-03-28 20:16
現在、聖人として崇められている人たちって、実は悲劇のヒロインだったってことが多いのでしょうか。サンターガタもこのサンタルチーアも。それにしても、むごいことが行われていたのですね。
教会の絵画は、伝説や言い伝えのお話を表しているのですね。芸術品というだけでなく、人々の生活の中で生きているんですね。
目をモチーフにした銀細工のなんて綺麗なこと~!
ところで、ナポリ民謡の『サンタ・ルチア』って、この方へ捧げる歌なんでしょうか?
Commented by hyblaheraia at 2008-03-29 01:32
>yokocan21さん、聖人に認定されるには長い間のヴァチカンでの審査があるようです。中でも重要なのがその人がどのような奇跡を起こし、それによってキリスト教の教えがどのように広まったか、ということだとテレビで観た覚えがあります。
ローマ時代のキリスト教迫害の中で、何も恐れずいかに信仰を守り抜いてきたか、という点が大事なのでしょうが、やはり残酷なシーンが印象に残ってしまいますね。とはいえ、厳しくも静かな生涯を終えた聖人もたくさんいます。古い時代の聖人がとくに様々な伝説で伝えられているのだと思います、多分!
サンタ・ルチーアはナポリの船乗りの守護聖人でもあったそうです。ルチーアはラテン語のLux、光、から来ている名前なので、暗い海に光を照らす存在として崇拝されたようです。
なので、おっしゃる通り、この歌は聖ルチーアへの賛歌です。私も今回、それを疑問に思って調べてみました。勉強になります!
Commented by itatravel at 2008-03-29 11:11
美術館を訪れると聖人や、宗教的な寓意画を前に、
誰が誰という基本ルールを知っておくと、分かりやすいですよね。

ギリシア・ローマ神話は、画題が明るいものが多く、神々も人間的なので分かりやすいのですが、キリスト教の宗教画は、暗いのと、なじみがないので、なかなか覚えられません。
Commented at 2008-03-30 00:00 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by hyblaheraia at 2008-03-31 00:52
>itatravelさん、聖人の表象や、特定の職業の守護聖人など、知っていると絵を読み解くのに役立つことはたくさんありますね。ことある度に調べてほぉ~と納得するのですが、すぐ忘れてしまいます。
ギリシア、ローマ神話はより人間的な物語で興味が尽きませんね、本当に。ただ誰と誰の子が誰で・・・、誰々は誰との間にも子供がいて・・・、と話が複雑で、名前もギリシアとローマでは呼び方が変わるし大混乱です!大抵、1つのことを調べようとすると、関連項目に3つも4つも付箋が付くので、私のギリシア・ローマ神話文化事典はビラビラしています。
Commented by hyblaheraia at 2008-03-31 01:36
>カギコメmさん、やっぱり載ってませんでしたか。教会の説明はなくとも、せめてあそこから見える絶景について一言でも触れてくれればいいのになぁ、とちょっと残念です。
313年に皇帝コスタンティーノ1世がキリスト教を容認するまで、キリスト信者の弾圧はひどかったようです。カターニアの聖アガタもシラクーザの聖ルチーアもその時代の女性だったので、その犠牲になったのですね。
歴史を通して絵画を見ると、その一枚の絵が全く違って見え、深く記憶に留められる気がします。ネットでいろいろ調べるといろいろなことが分かるので、今は便利な世の中ですね。
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