ラグーザの暖房事情

 ラグーザの長い冬が始まった。これから本格的な春の声を聴くまで、植物も人間も息を潜め、体力の温存期間に入っていく。生命力が爆発する夏に向けて、生きとし生ける物が経ねばならぬ一年のリズムである。

f0133814_732778.jpg 今年は寒さの訪れがいつになく早い。数日前に最低気温が3度にまで下がり、霰(あられ)も降った。
 その叩きつける勢いでバジリコの葉は破れ、ジャスミンは引きちぎられ、多肉植物の表面には傷が残った。
 雪になるかと心配したが、大雨と落雷、最後には晴天と目まぐるしく天気が変わった。
 そしてどんな時にも、ただ寒い。寒かった。
 
f0133814_7403042.jpgf0133814_7405251.jpg
 翌日は正午でキッチンが11.6度。吐く息が白い。冷蔵庫並みの寒さだ。フリースは既に10月から、今はタイツに厚編みの靴下を重ね、裏が起毛のズボンをはき、上は4枚重ね着している。まだ11月なのに、普段の1~2月の重装備。
 パソコンや机に向かっていると、寒さで集中できなくなる。そんな時は作業を中断して南側の窓に椅子を置き、日光浴をする。太陽の光は凄い。ただ浴びるだけで、じわじわと温まってくるのだから。でも夜はどうにもならない。そろそろ暖房が必要か、と考える。が、ちょっと面倒なのだ、これが。

f0133814_7292940.jpgf0133814_7281584.jpg 我が家の暖房の中枢はテラスの一角にある。この金の扉(銀の棒にも注目)を開けると、中に巨大なガソリン・タンクラジエーターがあり、ガソリンの燃焼熱で室内の暖房器具に湯を送り込むというシステム。
 ラグーザでは一般的なガスオーリオ式というものだが、ガソリンの購入と注入が大変なのだ。

f0133814_729570.jpgf0133814_7294551.jpg まずはガソリン会社に注入日の電話予約をする。我が家は細い一方通行の道に面しているので、ガソリン車は人の往来の少ない早朝7時にやって来る。
 長いホースを地上から4階(イタリア式の3階)までロープで引き上げ、写真左のボルトを開け、そこから注入するのだ。高所の作業なので、予約した日が雨だと延期になる。
 ガソリンの残量を測るには、銀の棒(写真上の上:金の扉に立てかけた)をボルトの奥までしっかり差し込み、取り出す。棒の先何cmがオイルで濡れているかで残量を読むのだ。こんな原始的な方法をどこの家でもやっている。
 スイッチの確認も目と耳に頼る。ガソリンを燃やすと、ゴーッという音とともに煙が出るので、この音と煙を確認してから家に入る。不完全燃焼が起きては恐ろしい。いや、キッチン横にガソリンが300リットルもあること自体が恐ろしい。

f0133814_942343.jpg さて、こうしてガソリンを燃やすと、家の中ではこのテルモシフォーネtermosifoneに湯が通って来る。触れられないほど熱いのならいいが、触れられてしまう程度の熱さ。これが各部屋にあり、2時間付けて16~17度が精一杯だ。
 しかし人間の身体は幸せなことに、2、3度上がるだけで暖かくなったと感じるものなのだ。真冬の室内10度を体験すると、今日は12度もある!などと言うようにさえなる。我々にとっては15度息が白くならない暖かい家。十分幸せなのである。
 ナポリの親戚の家で、18度しかないから暖房をつけよう、という声を聞いたときに、我々がいかにストイックな暮らしをしているかを笑った。真冬はここに二人で張り付いて、我慢大会を実施している。
 

f0133814_7411329.jpg 今年はまだガソリンを買っていないので、暖房も点けていない。
 寒い夜は、ルカがこんなものを作ってくれる。りんごを細く切り、シナモン、クローブ、生姜、蜂蜜で煮込んだもの。身体が芯から暖まる。

f0133814_7413527.jpg それでも寝る時は足が寒い。とうとう湯たんぽも先週から登場した。電気あんかを日本から持ってきているが、変圧器を通すと電気を大いに消費すると聞いたのでやめてしまった。我が家の湯沸かし器は電気式なので、電気代を押さえる努力は惜しまないのだ。
 最近は、昼の勉強にも湯たんぽを抱えている。

 こんな暮らしをしていると、リモコン一つでヒーターを点けていた日本の生活が今では罪深いものに感じてしまう。電気もガスも、湯も水も、エネルギーと人との関係がここでは全く違う。
 電気は二人がいる部屋だけ、湯沸かし器は就寝前に点け、翌朝シャワーを浴びたら消す。水は一日一定量、タンクへの給水式なので無駄使いは絶対にしない。都市ガスは通っていないのでボンベを買って大事に使う。だから日本から来客があると、とにかく電気を消しまくり、水を無駄にしないよう力説している。
 それでも家族が来た時は、電気代が普段の約1.5倍になり、水が底を突いた日もあった。そんな「シチリアの山奥で、最小限の水と最小限のエネルギーで暮らしている」娘夫婦を、両親は驚きつつも感心していた。

 家に籠もりがちの冬、いかにエネルギーを無駄にせず生活するかが、我々デスクワーク夫婦の課題である。寒さ解消方法としてはりんご煮、湯たんぽ以外に、CDを聴きながら歌う、それでもダメなら音楽に合わせて激しく踊る、という自己発電を行う。
 ただ、クリーンなエネルギーであるはずなのに、踊ると埃がたってクリーンではなくなるのが難点ではある・・・か・・・。

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by hyblaheraia | 2007-11-20 12:11 | 生活 | Comments(10)
Commented by fumieve at 2007-11-20 12:31
いいな~まだ暖房いらないんだ~さすがシチリア!・・・と思ってましたが、そうではなくて、ひょっとしてこの家、うちより寒いのでは???(笑)
それにしても、termosifoneの点灯がそんなに大変だと、ものぐさな私は明日明日、と思っているうちに凍死してしまいそうです。
こちらは、湯沸かし、termoともにガスなので冬季はガス代爆発です。

お水もタンク式とは。びっくりです。ここではみんな、水はタダだと思ってじゃんじゃん使い放題ですよ。もちろんタダじゃないのですが・・・。
Commented by P405 at 2007-11-21 04:23 x
hyblaheraiaさん、こんにちは。本当にこの頃急に寒くなりましたね。
ガスオーリオ式のヒーター、大変そうですね。ガソリンは一冬に何度か注入するのですか?それともシーズン初めに1度だけ?
我が家は幸いな事に電気ヒーターです。でもキッチンはガスボンベだし、お湯のタンクも小さいですよ~。しかも、冬一番悲しいのはシャワーの圧力が小さい事。熱いシャワー、いえ、熱~いお風呂にざぶ~んとゆっくり浸かりたいです。今思えば贅沢な事ですよねぇ。
Commented by hyblaheraia at 2007-11-21 07:28
>fumieveさん、ノルウェーから遊びに来た従姉妹も寒さに震えるほどシチリアの家は寒いんですよ。暖房設備も家の造りも古く、冷たい石に囲まれた寒い寒い空間で厚着をして暮らすのが普通のようです。でも一番の問題は水です!実は一昨日、我が家に水が届かず、友人の車で少し離れた公園の水飲み場まで25リットルのタンクを4つ持って、水汲みしたんです。今年はこれで4回目。水がないと滅入ります。過去の水問題は:
水無し生活2日目 http://ragusa.exblog.jp/5539134/
水復旧! http://ragusa.exblog.jp/5543999/
水が無ければ・・・ http://ragusa.exblog.jp/5656671/
5日連続の不運-後編- http://ragusa.exblog.jp/5880004/
などをご覧いただければ。ヴェネツィアではお水はじゃんじゃん使える・・・なんと羨ましい!同じイタリアとは思えません。シチリアの水道網、何とかして欲しいです。
Commented by hyblaheraia at 2007-11-21 07:44
>P405さん、エトナ山付近は雪が降ったとニュースで観ましたが、P405さんのお近くも雪化粧でしょうか。
電気ヒーターなんて近代的!さすがカターニアですね。こちらのガソリンは1回300リットル以上でないと売ってくれないので、去年は初めてのことでよく分からず、とりあえず300買いました。多分まだ少しだけ残っていると思います。パラッツォ1軒に4人家族で住んでいる友人宅では、昨年まず600、その後400リットル買ったそうです。ガソリン代は高騰しているのでかなりの出費になりそうです。
我が家も初めは水圧が低く、シャワーは指1本ほどの細さでした(ブルブル・・・)。プレス・コントロールという水を押し出す機械を付けたら普通に出るようになったので、お勧めですよ。熱い湯船・・・いいですねー!
Commented by nakoli at 2007-11-21 20:02
ごぶさたしています。
旧式の暖房設備というのは、ちょっと手間が掛かるけど、そのかわりパワフルに家中をホカホカにしてくれるのだと思っていましたが、そういうわけではないんですね。意外でした。湯たんぽ、私にも手放せないものとなりましたよー。

それよりも!!水問題はなんとかして欲しいですね。過去の「不運続き」を読ませて頂きましたが、大変でしたね~。よくぞ乗り越えた!
実は我が家も先日断水やら水浸しやらでひどい目にあい、本当に気が滅入りました。ガスや電気も無かったら相当困りますが、やっぱり水がないとこうも落ち込むものか、と思いました。思い出すだけでキレそうになります。(笑)
家の中で襟巻きと手袋をして、冬を乗り越えましょう!(襟巻きはすごく効果がありますよW)
Commented by hyblaheraia at 2007-11-22 00:21
>nakoliさん、こちらこそご無沙汰しちゃっています。ガスオーリオ式は聞こえはパワフルでも、実際は・・・です。これでも機能するだけずっとマシなんです。前の家のは壊れていて使えなかったので。湯たんぽは欠かせないですねー。抱えているだけで幸せな気分になるし、名前をつけちゃいそう!
水問題、考えるとブルーになりますね。あの鳩事件の時はこれ以上凄いことは起きないだろうと確信しました。ところで、そちらも大変でしたね。洗濯機と食洗機が壊れなくて良かった~。断水するなら予告すべきでしょう、市も。気持ちの準備と時間があれば、水を確保してその後安心して過ごせますものね。飲み水は買えるからいいけれど、トイレ用がね・・・。いいんです、キレて当然!
襟巻きかぁ。食事でトマトソース、昼寝でヨダレ、歯磨きでペーストが付いて汚れて、自己ギレしそう。まぁいいか、ドロドロで。
Commented by grappa-tei at 2007-11-22 12:04
大変な思いをされているんですね。知らなかった!シチリアが大体そんなに寒いというのは想像外。こういう話、もっと日本人に広く知って欲しいと思いましたよ、何より。
Commented by hyblaheraia at 2007-11-23 02:00
>grappa-teiさん、私もここに来る前は、シチリアと言えば灼熱の太陽と碧い海、椰子の木というイメージを抱いていたので、この寒さには驚きました。冬に家の中が寒いのは、暖房設備の悪さに尽きると思います。かと言って日本のような電気のファン・ヒーターを付けると、天上が高い石造りの家ではホクホクになるまで暖めたらとんでもない電気代を払うことに!
家が寒いのは、イタリア中部~南部全般に言えるような気がします。私の知る範囲でフィレンツェ、アレッツォ、ヴォルテッラ、ローマ、ナポリの家も寒かったです。この寒さに慣れると日本の暖房が暑く感じ、半袖でムンムン!家族に怖がられます。
Commented by grappa-tei at 2007-11-23 10:11
hyblaさん、えっ、そんなにアチコチ住んだことがあるのですか?これまた驚きだ。
Commented by hyblaheraia at 2007-11-23 22:02
>grappa-teiさん、史料調査のためイタリア中の図書館を放浪していた数年がありまして・・・。フィレンツェとアレッツォでは間借り生活、ローマはヴァチカン図書館裏のアパートを借り、ヴォルテッラはフィールドワークのため、ホテル住まい。ヴェネツィアもレジデンスを借りたことがあります。ナポリは夫の実家です。
若かったから怖いもの知らずというか、ガッツがあったというか・・・。もうできませんねー。
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