虫に好かれた家 -夏へのオマージュ-

 日の沈む頃、クロウタドリの陽気な歌い声を聞きながら、ドラマティックに変化していく空色と雲を見上げ、テラスで植物の手入れに没頭する一時。この家で一番好きな場所で過ごす、一番好きな時間だ。
 10月半ばに手の平を返したように寒くなったせいか、夏の植物たちは日に日に色褪せ、季節の変わり目に力なく屈していく。最後の手入れをしながら、盛夏に艶やかな緑を茂らせ、そこで虫たちの生活が営まれていたことを懐かしく思い出す。

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 ジャスミンとともに、この夏のテラスを彩ったニチニチソウ。ほとんど花粉が出ないのでハチが寄ってくることはなかったのだが、10月になってこんなに凄いのがやって来た。
 黒と黄色のはっきりとした縞模様に、ボン、キュッ、バンの素晴らしいくびれ。ピカピカに光るビニール素材の服をまとったジャン・ポール・ゴルチエのモデルを思わせる。でも意外と顔は平面的。濃いピンクと緑、黄色と黒の鮮やかさが目に焼きついている。

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 ローズマリーの花が咲いた10月初旬、毛深く丸まると太ったハチもやって来た。夏の終わりにバジリコの花を独占した小さなハチたちは、近くを歩くだけで攻撃してくる勢いだったが、こちらは蜜に夢中で全然気付いていない。ガニマタで花に張り付いている姿がどことなくおかしい。

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 これは見るのも刺されるのも怖いクマンバチ。一匹の虫の羽音とは思えないほど低く鈍い不気味な音を響かせながら、花から花へ、落ち着きなく飛び回っていた。
 翌日、突然しおれ出したこの花(名前不明)は、数日後に完全に枯れてしまった。猛毒にやられてしまったのだろうか。

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 ここはバジリコの葉の上。自分の身体の2倍はありそうなハチを一匹のクモが頭からかぶり付いていた。太くて短い、いかにも筋肉質な身体で寝技に持ち込むクモと、次第に力尽きていくハチ。尾の先から毒を出す卵管針のようなものが見えるが、ハチの最後のもがきは虚しく空を切った。

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 今年一番笑わせてくれた虫がこれ。カメムシの仲間だろうか。薄茶色の着物を着た落語家が舞台で座布団に座って頭を下げ、いやいや、こりゃどーも、と言っている感じがする。
 背中の羽のざらつき感を手で触って確かめてみたかったが、顔を上げて、え、触りたいって?いやー、勘弁してくださいよ奥さん、と言われてしまった気がする。

f0133814_5584970.jpg 薄紫色の涼しげな花を付けるプルンバーゴ。その小さな花びらの上を、米粒より小さな黒い虫が忙しそう歩いていた。
 アリクイのような長い口が何とも愛らしく、身体の小ささのわりには長い足が、その歩みをかえって難しくしているようでおかしかった。もう少し短ければ楽なのに。
f0133814_5594186.jpg プルンバーゴは手前の水色の花。48度が5日間続いた地獄の暑さの中で、根から高さ10センチ程の部分だけがかろうじて生きていた。夏の途中に初めて可憐な花を開かせた時の感動は忘れない。
 こんな満開の桜の木のように、咲き急いで欲しくなかった。数日後、敢え無くしぼんでしまった花を取り除きながら、この小さな苗が無事に冬を越し、また虫たちと戯れることを願った。

 後ろのフクロウは蚊遣器。ネットで一目惚れし弟に買って来てもらった。この地区では、夏にフクロウの声も聞こえる。
 フクロウ左目上の花びらに見える小さい黒点は、この虫。


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 この虫はよく家に来た。風呂にも入ったことがある。橙(だいだい)色と黒のツートンカラーはどこにいても目を引く。羽にはインダス文明を思わせる幾何学模様が描かれ、顔はちょっとダースベーダーのよう。名付けてダイダイ・インダスベーダー。いよ!

f0133814_615131.jpg テラスのタイルに同化しそうな虫。テントウムシの種類だろうか。
 イタリアでは幸運を呼ぶ虫なので、ずっと我が家にいて欲しかったが、背中に砂を付けてまま慌しく行ってしまった。
f0133814_63399.jpg 途中でタイルの目地にはまり、どっちに行こうか考えている様子。
 線を辿っていく虫の習性は面白い。
 

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 そしてこれが最近現れたイナゴ。アフリカから飛んできたのだろうか。すのこに張り付き疲れを癒しているようで、あまり元気がなかった。でも仲間がいなくてやれやれ。
 バネの強そうな後ろ足、長距離の飛来にも耐える長い羽、そして背中の赤い一筋としっかり開いた触角。戦いに行く鎧兜の侍のような凛々しさがある。ネットでイナゴ画像を検索したが、こんなにきれいな種類はいなかった。
f0133814_642988.jpg やっぱり家のイナゴが一番だねー!などと、満足気な我々を見てきっと喜んだのだろう。
 夜、パソコンに向かっていると、ガサガサッという聞きなれない音がした。風で蚊避けの暖簾(のれん)が動いたのだと思っていたが、キッチンにこんなものを発見。ギョギョ!我が家の虫取りセット(今回は団扇+プラスティックの植木鉢)を使ってキャッチ・アンド・リリースした。

 夏の間、こうしていろいろな虫の訪問を受けた我が家。きっと虫のエコシステム調査団体から、ラグーザで住み易い家No.1に選ばれていたのだろう。来年はこの栄誉を慎んでお断りいたしマス。

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by hyblaheraia | 2007-10-31 11:12 | 野鳥・昆虫・動物 | Comments(8)
Commented by P405 at 2007-10-31 19:37 x
我が家のニチニチソウも、紫色はもう終わりです。ピンクはまだ結構元気みたいですけど。。同じ時期に植えたのに不思議です。
落語家虫、家のベランダにも良く来てましたよ。初めて見る虫でした。ホント言われてみると、もう落語家にしか見えません。
夏の虫(?)といえば、すっかりトカゲを見なくなりました。同じ屋根の下に住んですっかり愛着が沸いていたのですが(笑)、夏と共にいつのまにかさよならも言わず去ってしまったようです。
Commented by Gina at 2007-10-31 21:56 x
美しい緑がある家に、虫がやってくるのは当然のことなのですが、
ここまで色々やってくると、虫嫌いには、辛いかも?でも虫が来ると、
かわいい小鳥もやってきて、という特典があるのかもしれませんね。

昔アルベロベッロで超特大のイナゴをみたのですが、ラグーサにも
いるのでしょうか?(白い街にイナゴの黒?が水玉のようで凄まじかったのです)
Commented by 子ボリス@ローマ at 2007-11-01 02:31 x
きっと、子ボリス@ローマと子ボリス@東京の姉妹がこのような虫さんたちに激烈歓迎を受けたら、卒倒していたでしょう。ちなみに、春もたくさんいるんですかぁ?暖かくなると虫も出てくるというし…。虫さんの少ない季節にボリスともども南下したいです♪
Commented by hyblaheraia at 2007-11-01 08:08
>P405さん、ニチニチソウは本当に夏に強いですね。種も採ったので来年はたくさん植えてみたいです。本当は濃いピンクのブーゲンビリアが欲しいのですが、テラスに置けないのでニチニチソウで色だけ真似しています。でもこの花が大好きになりました。
落語家虫、来ましたかやっぱり!何の種類なんでしょうね。トカゲは家にはいませんが、ヤモリなら良く来ました。あのきれいな緑のトカゲは動きが早くて草むらでちらっと出会うだけだったので、一つ屋根の下で暮らせるなんてちょっと羨ましいです。きっと来年も来ますよ、トカゲリーノ。
Commented by hyblaheraia at 2007-11-01 08:18
>Ginaさん、本当に虫の種類が多くてびっくりしました。去年8月末にここに引っ越した時は、こんなに来るとは思いもしませんでした。子供の頃は虫もカタツムリも大好きだったのですが、いつの間にか苦手になって・・・。でもこの家に来てから、そうも言っていられなくなり、虫たちの写真を撮っているうちに、なんだか愛おしく思えるようになってきました。
イナゴの大群をご覧になったことがあるんですか!ゾクゾク!!幸いなことにここには来ませんが、私は密集恐怖症なので見るだけで気絶しそうです。
Commented by hyblaheraia at 2007-11-01 08:26
>子ボリス@ローマさん、いえいえ人間慣れが肝心!私も随分と歓迎を受け、虫ブログが書けるほど成長いたしました。春はまだ寒いのでこんなにいないけれど、ハチは来ますよー。あとミミズと、道端には巣から落ちた雛の死骸がたくさん。最後の息があるものも・・・。アマツバメの冷たい糞も落ちてきます。結局、冬しかないのかな、虫のいない時期は。
Commented by yoshikoshiro at 2007-11-02 10:22 x
酔っぱらいヴァイオリンshiroによると、茶色→カメムシ、ありくいみたいなの→ゾウムシの仲間、ダースベーダー→恐らくフォースの暗黒面からの使者、ダース・モールというやつか!?詳しくはスターウォーズエピソード1参照。
と言っております。
Commented by hyblaheraia at 2007-11-02 18:57
>yoshikoshiroさん、やっぱりあれはカメムシですか。触らなくて良かった。黄緑色のも来たけれど、茶色はこれが初めてでした。あの黒くて小さいのはゾウムシねぇ・・・、なーるほど。さすが虫博士!ありがとう。
で、ダース・モール?!もしかして、カロニーアに来た宇宙人が姿を変えてラグーザにも来ていたの?!?!おお、なんということ!(詳しくは10月28日の記事、http://ragusa.exblog.jp/6700748/ を参照してね)
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