5日連続の不運 -前編-

 「悪いことはそれだけではやって来ない Le disgrazie non vengono mai da sole.」
 まさにその諺通りだった。日本語だと「一難去ってまた一難」。どちらもあの不運の日々を言い当てている。今更報告するのも何だが、やはり誰かに語らずにはいられない。

 不運1日目(6月24日) ルカの妹の結婚式のためナポリに数日いた我々は、カポディキーノ空港から7時50分の飛行機でシチリアに帰るところだった。早朝5時起きで空港へ向かい、チェックインを済ませたその瞬間にフライトが2時間遅れとなった。遅延理由は「技術的な問題」、4.8ユーロのミールクーポンが配られ、乗客は空港内でしばし待つ。その後、さらに20分遅刻、30分遅刻とちびちび表示が出て、ようやくボーディング。機内で非常口や救命胴衣の説明がなされている間に、うとうと眠ってしまった。
 するとルカが「起きて!降りなきゃ!」と深い眠りに陥る私をゆすって起こした。なんだ、もうカターニアに着いたのか、などと呑気な寝ぼけ気分の私とは裏腹に、ルカは尋常ならぬ様子。周りの乗客も怒りを顕にしながら次々に降りている。次第に事態が読めてきた。ボーディングをさせておきながら、機体の「技術的な問題」が解決されず、機長の判断で乗客全員を降機させることになったのだ。こんなことは初めてだ。
 結局4時間後にフライトはキャンセルされた。大部分の乗客は午後5時の便に変更したが我々はルカの実家で一泊し、翌日の同早朝フライトで帰ることにした。その時、ちょっと嫌な予感が走ったのだが。

f0133814_02997.jpg 搭乗予定だったこの飛行機、実は、垂直尾翼の横の左エンジンが作動せず、機長と修理工がはしごに上り、たった1本のねじ回し雑巾で修理を試みていた。
 空港のカフェから見ていて目が点になった。乗客100名の命を預かる機材をこんな方法で修理するのか。この飛行機にだけは乗りたくない、と思ったのだが・・・。

 不運2日目(6月25日) 再び早朝5時起きで空港に向かう。チェックインを済ませた直後、前日の嫌な予感通り早くも2時間遅れの表示。今日の遅延理由は「クルーがいない」とのこと。呆れた!乗客は時間を守って来ているのに、乗務員は寝坊するのか!前日と同じ4.8ユーロのミールクーポンで朝食を取り、だらだらと時間を潰し、3時間待ってようやくボーディングとなった。
 その時、我々はあることを発見してしまった。眼前にあるのは、昨日エンジンが作動しなかった、あのねじ回し修理の機体なのである。念のためにと機体名をデジカメに撮り、確認しておいた我々にはそれが分かってしまった。搭乗拒否も考えたが、そんなことをすれば乗客の間で大パニックが起きる。某航空会社勤務の友人が「危険のある飛行機を飛ばすことは絶対ない」と言っていたのを思い出し、その言葉を信じて乗った。
 離陸の瞬間が最も怖かった。一端、高度を上げれば仮にエンジンが1つになっても、何とかカターニアに到着できるだろう。片方のエンジンだけで無事着陸したというニュースを見たことがある。そう思いながらルカと手を握って緊張の時間を過ごした。順調に高度を上げ、雲の上に辿り着いたとき、それまで良好だったエンジン音がヒュルルルルーと音を下げた。はっ!一瞬言葉にならない恐怖で体が凍った。するとルカが、大丈夫だいじょうぶ、飛行機が水平になったからエンジンを弱めたんだよと。ああ、言われて見れば確かにそうだ。機体は水平飛行に入っている。
 しばらくして無事、カターニアに着陸した。冗談ながらも思わず拍手をしてしまった我々を、周囲の乗客はかなりの田舎者と思っただろう。
f0133814_0165837.jpg 深い安堵とともにタラップを降り、リニューアルされたばかりのカターニア空港到着ターミナルに赴く。荷物も早々と出てきてやれやれ、と思ったのも束の間、スーツケースの縫い目が裂けているのを発見。命懸けのフライトの次はこれか!デスクに駆け込み、損傷部分を見せて賠償手続きを行い、証拠写真もしっかり撮った。

 こうして2日続けて朝から空港で待たされ、墜落の恐怖を体験し、スーツケースを壊され、もはや精神的に限界に近い状態でラグーザ行きの長距離バス乗り場に向かった。
 しかしこの日は46度の砂漠並みの暑さ!バスのブレーキパッドが燃え、タイヤから煙が上がった。焦げ臭さが充満し、ブレーキの効かないバスで1時間山道を走り、途中のガソリン・スタンドで後続バスに乗り換え、命辛々ラグーザに帰ってきた。
 ちなみにこの日は私の誕生日だった。

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by hyblaheraia | 2007-07-14 00:31 | 生活 | Comments(0)
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シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。


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