日時計が示すもの

 新市街のサン・ジョヴァンニ教会(カッテドラーレ)のファサードには2つの日時計がある。左はイタリア式で、右がフランス式。
f0133814_0551964.jpg イタリア式は前日の日没からの経過時間を示し、フランス式は深夜12時からのそれを示す。後者は我々が普段使う時計と同じ数え方だが、イタリア式を理解するにはちょっとコツが要る。


f0133814_103539100.jpg まず現在のラグーザの日没が午後7時半頃ということを念頭に置く。今、13の線上の針から影が16と17の間に伸びているので、前日の日没から16時間少々経過したことになる。言い換えれば一日24時間のうち、日没まであと8時間残っているという意味にもなる。だからこの8時間という時間をどう使うかを考えればいい。
 また12の線辺りから右下に走る赤い斜線は、春分と秋分を意味している。日時計の影が赤線に触れる3月21日あるいは9月23日頃は、昼夜の長さがほぼ等しくなるので、影が赤線より上にあれば季節はまだ冬であり、太陽が空高く昇る夏は赤線を切り込む長い影が落ちるというわけである。
 時計で季節を感じるとは、なんと豊かな感覚だろうか。


 つまりこの日時計は「現在時刻」ではなく、「残された日照時間」を知り、「季節の移り変わり」を感じるためにある。
 これが設置された1751年と言えばJ.S.バッハ没年の翌年。当時はもちろん電気などなく、日没後にできることも限られていたに違いない。だがこうして、一日の時間、一年の四季を量的に捉え、その中で自分がどこにいるかを見出すという我々にはない感覚がここにはある。

f0133814_10283785.jpg ところで日没時間は緯度によって違うため、縦に長いイタリアでは北と南の都市で30分ほどの時差があった。太陽の動きとともに各地の生活リズムが作られ、ラグーザとローマが同じ時間である必要はなかったからである。
 しかしイタリア統一後、1885年に国際子午線会議で標準時間が導入され、一つの国家が一つの時計の元に動くことになり、一人一人の生活と太陽との関係など考える余地すらなくなっていった。
 我々が考える時間は、「太陽」ではなく「時計」が作る時間となり、昼夜逆転型の生活もありになった。

 
 それでもこの日時計を愛する人々がラグーザにはまだいる。あの日、「これはとても正確なんだ」と言っていた老人は、太陽と影と変わりゆく季節を感じながら、心豊かな一日を過ごしているのだろう。
 時間の感じ方は人や時代によって違う。このところ日時計を見るたびにそう思う。


 注意:日時計は午前11時と読むのに実際の時計が正午12時過ぎなのは、サマータイム施行により1時間繰り上げられているため。

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by hyblaheraia | 2007-04-07 14:21 | 生活 | Comments(6)
Commented by 時夫 at 2007-04-05 22:04 x
日時計の読み方は難しいですね。私は日時計の作り方に興味があって、それを説明するサイトを見ましたが、経度、緯度など、かなり難しい計算が必要なので、数字に弱い私はすぐあきらめました。日時計とうのは、やはり天文学とも深いつながりがありますね。古代エジプトでは、星の位置で夜の時間も数えていたそうです。つまり「星時計」というべきですかね。
Commented by TOKIKO at 2007-04-05 22:20 x
神秘的ですね。またそんな話があったらアップしてください。
Commented by yuu-kakei at 2007-04-06 22:01
初めまして!ブログを色々訪問しているうちにたどり着きました。

日時計の話…なんだか人々が自然と一緒に生活してるっていうのを
じかに感じさせるものですね。それに、太陽の国だということも感じます…
私が今住んでいる所は雪国なので、この辺りの人はきっと別の方法で
自然と向き合っていたんだろ~な~と思いました^^
また遊びに来ます!よろしくお願いします~
Commented by hyblaheraia at 2007-04-09 16:11
時夫さん、TOKIKOさん、yuu-kakeiさん、コメントありがとうございます。生活の中で太陽と星と時の流れが交錯して、日時計という時間を知るための道具が宇宙的な広がりを感じさせます。自分はそんな宇宙の一部だということも。人生観が変わります、ここにいると。
Commented by manu at 2008-05-12 22:10 x
こちらの記事も読ませていただきました。
そういえばイタリアにいたときは「あとどれぐらい明るいな」、だから「○○と××をしよう」と、海岸線を散歩していたのを思い出しました。
ああ、時計や携帯に支配されている自分の生活に気づいてしまった・・・。
Commented by hyblaheraia at 2008-05-12 22:48
>manuさん、そうそう、まだ明るいからあれをやって・・・、という感覚ありますよね。ジェノヴァの海岸線でそんなことを考えるなんて、いいな~。潮騒を聴いているうちに、まぁいっか、明日にすれば、なんて私なら思ってしまいそうですが。
時計や携帯に支配されている生活・・・、ん~~、分かる気がします。でもmanuさんの授業で生徒たちがとてもいいものを吸収しているはずだから頑張ってくださいね!!
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