チェスティ・コンサート報告

 「チェスティ生誕390年記念演奏会 ~甘美なる嘆き、優美なる情熱~」
 このタイトルを決めるのにも半年くらいかかっただろうか。最初にコンサート企画のお話を頂いたのが2年前。当初はカンタータのみコンサートにする案だったけれど、いろいろな方のご意見を聞き、少しずつ修正し、最終的には私が想像していた以上の内容豊かなコンサートになった。

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(ゲネプロより)
 途中、私の妊娠が分かり、関係者を驚かせたとともに、コンサートの準備全体に大変な迷惑をかけたことと思う。降板も考えたけれど、全チェスティ・プログラムの機会など二度とないだろうし、なによりもチェスティの音楽が自分の目の前で立ち上がり、人々の耳と心に届く瞬間に私は立ち会いたかった。

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(ゲネプロより)
 膨大かつ長大な作品からの選曲、楽譜の準備、毎月の例会での指導、資料の作成、大量の対訳作成。妊娠中から出産、産後と、体力の限界と戦いながら、気持ちだけは決して弛まなかった。

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(舞台上へご挨拶に)
 17世紀の手稿譜を現代譜に起こす作業では、かつて何度もぶち当たった問題とまた向き合った。これは記譜ミスなのか、はてはチェスティの斬新さの表れか?チェンバロの先生のご辛抱強く温かいご指導の下、演奏に耐え得る楽譜を整え、ようやくオケ合わせへ。
 弦楽器の柔らかで澄み切った音が、即興的な装飾を伴いながら、すじ雲のようにさらり、さらりと重なり合う時の悦び。楽譜上で静止した音符が息を吹き込まれ、流転し、チェスティの声を聴くようだった。

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 バロック・ダンスとのコラボレーションによって、宮廷で演奏される音楽というものに対して、どれほどのイマジネーションを得たことか。ダンスをする身体のほんの少しの動き、止め、視点、目線がいかに多くを語るのか。非常に学ぶところが多かった。
 当初の案ではグレーだったであろうこのコンサートが色を帯び、華かさを表現し得たのは、バロック・ダンスの世界とダンスの先生のステージングの賜物。このような貴重な出会いができたことを心から嬉しく思っている。

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 今回のコンサートのため、私たち家族は家族となったその日から5ヶ月間、日本とイタリアで離れて生活をした。ルカには随分寂しい思いをさせてしまったけれど、常に惜しみない理解と協力を示してくれた。実家の両親の協力もまた然り。
 さらにコンサートの係の皆さんの、チーム・チェスティと名付けた強力な連携も素晴らしかった。そして全チェスティ・プログラムという、ややもすれば失敗に終わりかねない企画を任せてくださった監修の先生に、改めて感謝の気持ちを伝えたい。

 学生時代、チェスティはその音楽を通して、苦しみや葛藤、その向き合い方を教えてくれると感じていた。あれから10数年経ち、今はチェスティの音楽が多くの人との出会いを可能にし、新たな知見を与えてくれると感じている。以前には見えなかったものへと、私を向かわせてくれている。

::: ::: :::

 コンサートはチケットほぼ完売、盛会に終わりました。駆け付けてくれた方々、教え子の皆さん、ありがとうございました。お会いできて本当に嬉しかったです!
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by hyblaheraia | 2013-06-04 09:56 | 大学・研究 | Comments(12)
Commented by ぐらっぱ亭 at 2013-06-04 12:44 x
どこかで見たことのある舞台だと思ったら、アニェッリホールでしたか。いや、日本でチェスティ・コンサートをやってらしたなんて。チェスティって、恥ずかしながら聞いたことないし、良い機会だったのに、惜しいことをしました。ま、念願が叶ってよかったですね。それにしても、忙しいこと。身体、気をつけてください。
Commented by Mchappykun at 2013-06-04 13:53
コンサートのご成功おめでとうございます。心よりお喜び申し上げます。
ここまでに至る様々な困難を乗り越えて、たくさんの方々とのコラボ、本当に言葉では言い尽くせないものがおありと思います。

音楽とダンス、私もとても見たかったです。
Commented by 駄菓子 at 2013-06-04 16:44 x
想像していた以上に素敵なコンサートでした。
家に帰って、わが家の古楽のCDをひっくり返してみると、なかにチェスティの歌曲が1曲収録されていたものがあることを発見しました! Lamento della Madre Ebrea--ヘブライ人の母の嘆き……かな。オペラのアリアでしょうか。
Commented by OrpheusBR at 2013-06-07 00:17 x
素晴らしい!!想像していた以上に素敵なコンサート、本当におめでとうございます。行けなくて本当に本当に残念です・・・またの機会がありますよう。
Commented by YuccaR at 2013-06-09 07:55
コンサートの完成、おめでとうございます。
出逢ってからコンサートを成し遂げられるまでの、努力、ドラマ、本当に大変な力でしたね。
残念ながら東京までは行けませんでしたが、ブログを拝見するだけで、感服しました。今度はいつかコンサートに行けますように!
Commented by gabbyna at 2013-06-09 09:02
豊かな実りのあるコンサートを企画、実行出来てよかったですね。
妊婦の体で企画を実行するのって結構大変だったろうなと想像しますが、それがしっかりと実を結んだのを体感出来て、感激もひとしおだったと思います。
Commented by hyblaheraia at 2013-06-09 19:37
●ぐらっぱ亭様●
アニェッリホールが満席になり、本当に嬉しかったです。当初は旧奏楽堂を予定していたのですが、修復で閉館だそうでこちらになりました。結果として良かったと思います。
チェスティはオペラ《オロンテーア》、《金の林檎》の作曲家として音楽史の本には出て来ますが、レパートリーとしてはあまり一般的ではないです。こういうコンサートを続けて、少しずつ知名度を上げていきたいところです。
これまでの人生で最も忙しい1年だったような気がします。高齢なので育児も大変です。でも幸せなので頑張れます!
Commented by hyblaheraia at 2013-06-09 19:43
●Mchappykun様●
ありがとうございます。準備は本当に、本当に大変でした。身重で大学の授業も抱えていたので、身体が辛かったですが、今となっては良い思い出です。
私はつくづく、いつも人々に助けられているなと思います。今回も然り。たくさんの人との出会いがあり、助けられ、励まされ、夢のような一夜となりました。ダンスの世界も奥深く、良い勉強になりました。お見せできるツールがあるか、探してみます!
こうやって頑張った後は、Mchappykunさんの食卓で美味しいご飯をたくさん頂きたいです~。
Commented by hyblaheraia at 2013-06-09 19:47
●駄菓子様●
お忙しい中、お越し下さりありがとうございました。日伊協会ブログで宣伝して頂いたお陰で、たくさんの方に来て頂けたと思います。またかわいいお土産もありがとうございます。ラグーザに持って来ました!
チェスティのあの曲は、歌っている人が・・・なので、作品の良さがいまいち伝わって来ないのですが。録音があるというだけ幸せです。カンタータの大曲で解釈も難しい一曲です。

先程、ブログを拝見し、ラグーザの記事を見付けました!2007年は私もいました。白い帽子で歩いている人を見ませんでしたか?
Commented by hyblaheraia at 2013-06-09 19:50
●OrpheusBR様●
いろいろと案が変わり、衣装も付けることになったんです。私もあの貴族風のたっぷりドレスを着たかったです~。
準備は2年近くかかったのに、本番はあっという間でした。ラグーザにいる今となっては、もはや数年前のことのような気がしています。生誕400年も何かできるといいな・・・と思いつつ。
Commented by hyblaheraia at 2013-06-09 19:53
●YuccaR様●
ありがとうございます!かなりハードな1年だったので、母がいつも呆れていました。夜な夜な仕事をしていて、もう寝なさい!と何度言われたことか。
実家の両親の支えがあり、チームの協力があり、たくさんの人に励まされ、とても良い舞台となりました。生誕400年でも何かできるよう、またいろいろ考えてみたいと思います。その時はお会いできると嬉しいです。
Commented by hyblaheraia at 2013-06-09 23:20
●gabbyna様●
これまでの人生で体力的に最もハードな1年でした。でも素晴らしいチームワークと貴重な出会いに恵まれ、忘れられない舞台になりました。
一人で勉強していた頃には、こんなコンサートが実現することになるとは考えもしなかったので、人生頑張っていれば必ず良いことに繋がるんだろうな、と思っています。
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