カタツムリの歩みに見る

 雨が続いているので、最近はテラスの至る所にカタツムリが這いつくばっている。遅々とした歩みではあるけれど、じっと目的地を見据え、粘り強くそこへ向かおうとする動きはなかなか感慨深い。
 イタリアは今、公共サービスの不徹底による人災、ジャーナリズムに対する統制と検閲行為、人種偏見、教育の質の低下、慢性的な給料未払い等、あまりにいろいろなことが起きている。カタツムリの歩みを眺めていると、彼らはこの状況を黙って耐え、嘆かず、それどころか希望を持って将来を見据えているように感じられる。

 新美南吉の美しい童話、『デンデンムシノカナシミ』が思い出された。

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 イツピキノ デンデンムシガ アリマシタ。
 アル ヒ ソノ デンデンムシハ タイヘンナ コトニ キガ ツキマシタ。
 「ワタシハ イママデ ウツカリシテ ヰタケレド、ワタシノ セナカノ カラノ ナカニハ カナシミガ イツパイ ツマツテ ヰルデハ ナイカ」
 コノ カナシミハ ドウ シタラ ヨイデセウ。


f0133814_72176.jpg
 デンデンムシハ オトモダチノ デンデンムシノ トコロニ ヤツテ イキマシタ。
 「ワタシハ モウ イキテ ヰラレマセン」
 ト ソノ デンデンムシハ オトモダチニ イヒマシタ。
 「ナンデスカ」
 ト オトモダチノ デンデンムシハ キキマシタ。
 「ワタシハ ナント イフ フシアハセナ モノデセウ。ワタシノ セナカノ カラノ ナカニハ カナシミガ イツパイ ツマツテ ヰルノデス」
 ト ハジメノ デンデンムシガ ハナシマシタ。
 スルト オトモダチノ デンデンムシハ イヒマシタ。
 「アナタバカリデハ アリマセン。ワタシノ セナカニモ カナシミハ イツパイデス。」


f0133814_722179.jpg
 ソレヂヤ シカタナイト オモツテ、ハジメノ デンデンムシハ、ベツノ オトモダチノ トコロヘ イキマシタ。
 スルト ソノ オトモダチモ イヒマシタ。
 「アナタバカリヂヤ アリマセン。ワタシノ セナカニモ カナシミハ イツパイデス」
 ソコデ、ハジメノ デンデンムシハ マタ ベツノ オトモダチノ トコロヘ イキマシタ。

 カウシテ、オトモダチヲ ジユンジユンニ タヅネテ イキマシタガ、ドノ トモダチモ オナジ コトヲ イフノデ アリマシタ。
 トウトウ ハジメノ デンデンムシハ キガ ツキマシタ。
 「カナシミハ ダレデモ モツテ ヰルノダ。ワタシバカリデハ ナイノダ。ワタシハ ワタシノ カナシミヲ コラヘテ イカナキヤ ナラナイ」
 ソシテ、コノ デンデンムシハ モウ、ナゲクノヲ ヤメタノデ アリマス。


青空文庫より転載
 
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by hyblaheraia | 2009-10-05 07:33 | 生活 | Comments(16)
Commented by アイシェ at 2009-10-05 21:52 x
素敵なお話をありがとうございます。胸の奥底にまでじわーっとしみ込んでくるいいお話ですね。
それでも現実は、人為的にもたらされた悲しみが多すぎる・・・怒りと悔しさがこみ上げてくるのに、そこからどうこうする体力気力ももうなくて、またしぼんでしまう・・・そんな情けない年頃の私は、なかなかカタツムリのように超然としていられません。。。。。
Commented by jose at 2009-10-06 01:00 x
こんなこと言うのははばかられますが、カタツムリは寄生虫の宝庫ですので御気を付け下さい。
Commented by みゆ at 2009-10-06 01:11 x
新見南吉・・・と聞いて思いだしたのが…、確か「ごんぎつね」も彼の作品ではなかったでしょうか?
胸をちくっと突き刺すような悲しみの痛み、同じように感じられます。カタカナの文章ってこんな印象を与えられるんですね。
Commented by galleriaarsapua at 2009-10-06 04:34 x
hyblaheraiaさん、こんばんは。
いいお話ですね。悲しみは乗り越えると喜びになると幸せになる教科書のような事は言いたくないのですが、やはり人生は幸も不幸もあって深みが出ると思います。
その渦中に居ると難しいですけれど。。。
思い方で随分と心が楽になったりもしますよね。
Commented by YuccaR at 2009-10-06 15:19
首相の発言のたびに、まるで国民であるかのように、ヒヤッとするようになりました。hyblaさんの報告を聞いて。でんでん虫のあゆみに確かな方向性を見ておられるのはさすがです。新見南吉お話しは読んで聞かせていただいたかのようなしみじみとした読後感です。世界は良くなるはずです。
Commented by omuro at 2009-10-07 05:45 x
お久しぶりです。
小さな子のいる私なのに、このお話、知りませんでした。
かたつむりは本当に世界中の人々のファンタジーをかきたてるようですね。
こうしたお話を頭の隅におきつつ、老いて行きたい、と思う今日この頃です。
Commented by miciru at 2009-10-10 23:13 x
はじめまして。いつもこのブログを楽しみに拝見させていただいています。
今日は新美南吉さんの「デンデンムシノカナシミ」。原文はカタカナだったんですね。私も文章がしみ入りました。
はがきに書きうつして、友人ふたりに送りました。はがき一枚半になりました。
ところで私は町の郊外に住んでいますが、もう久しくかたつむりを見ません。この20年で樹木につく虫たちも、草も少しずつ変わってきました。田んぼには巨大なタニシが生息しています。散布する農薬の結果らしいですが。
ラグーザにはよい自然環境が保たれているのだと思います。
かわいいかたつむり君の写真を見ながら、友人へのはがきに描きそえました。
Commented by gabbyna at 2009-10-11 00:02
久しぶりに書き込みます。
こちらも雨続き、既に2ヶ月ぐらい雨雨・・・、異常気象ですよね。
その原因を作っているのは、人間ですから仕方がないです。
例え少なくても確実な歩みを持ってなんとか、将来を打開していきたいものですね。
Commented by hyblaheraia at 2009-10-13 04:53
~アイシェさん~
お返事が遅くなってすみませんでした。
このお話は何度読んでも温かいものがじんわりと心に残ります。人間はデンデンムシの世界にはない悲しみや罪を負っているから、自分で乗り越えられることばかりではないですよね。アイシェさんのお気持ち、良く分かります。掲示板に「答えもなく考えることがあって…」と書いたのはそういう意味でした。
でも人間は想像力と知恵で問題を乗り越えられると思うのです。しぼんでしまう時があるからこそ、人間は物事を深く考え、感性豊かになれるんじゃないかな、と。元気出してくださいね。
Commented by hyblaheraia at 2009-10-13 04:57
~joseさん~
キョ~~ッ!
コメントを拝見した瞬間に(いえ、拝見する度に)、叫んでしまいます。そうですよね、あの人たちは危険ですよね。触っていませんので大丈夫だと思いますが、先日、長さ8センチ太さ1センチくらいの巨大ナメクジがキッチンの壁に張り付いていて気分が悪くなりました。我が人生において見た最大サイズでした。
Commented by hyblaheraia at 2009-10-13 05:00
~みゆさん~
そうです!『ごんぎつね』の作者です。私も小学校の国語の教科書で読んで、キュンとなりました。新見南吉の作品の素晴らしさはまさに「胸をちくっと突き刺すような悲しみ」にあると思います。一言でずばり言い当ててくださって、ありがとうございます!
カタカナは本当に不思議な力がありますね。デンデンムシ語だからでしょうか。
Commented by hyblaheraia at 2009-10-13 05:11
~galleriaarsapuaさん~
こんばんは。お返事がおそくなってしまいました。
悲しみは、悲しんでいる時が最も大事な時であるような気がするので、galleriaarsapuaさんのコメントに深くうなずいていました。どんな悲しみも、それと直面して隅々まで悲しむ時間を持たなければ結局はその悲しみを真に乗り越えられないような気がするのです。
17世紀イタリアのカンタータの歌詞に私が深く共感するのは、そういう所にあるのだな、と今ふと思いました。ヒントを下さってありがとうございます。
Commented by hyblaheraia at 2009-10-13 05:21
~YuccaRさん~
このブログでイタリア(特にシチリア)の負の部分をお伝えすることは、とても大事だと思っているので、そうおっしゃっていただけて嬉しいです。
最近もまたB首相の失言が世界を廻りましたが、私はもはやこういうことをネタにするのは、あの方の思う壺なのではないかと思うようになったので、真剣に取り扱わないことにしてしまいましたが、耐えられなくなったらまた書きたいと思います。
新見南吉のお話はどれも素晴らしいですね。若くして亡くなったことが惜しまれます。
Commented by hyblaheraia at 2009-10-13 05:26
~omuroさん~
こんにちは!最初、お名前を拝見して、あら?どなただったかしら?とそちらのリンクに飛んで行きました。ご無沙汰しております。
そうですね世界中の子供たちを魅了する何かがあるのですね。私の姪もかたつむりが大好きみたいです。そう言えば私も、小学校1年の時にのりの缶に大きなかたつむりをニョロニョロ入れて、友達の匂いのする鉛筆と取り替えてもらったりしていました。
ぜひこのお話をお嬢ちゃまに読んでさし上げてくださいね。悲しみ、という言葉を子供たちはどう捉えるのでしょうね。
Commented by hyblaheraia at 2009-10-13 05:43
~miciruさん~
はじめまして。コメントを残してくださりありがとうございます。いつもご覧下さっているとうかがい、とても嬉しく思いました。どんな方々が読んで下さり、どんなふうにお感じになっていらっしゃるのか、私としてはとても気になっているので、こんな小さなコメント欄ではありますが、対話ができることを楽しみにしています。

このお話がひらがなと漢字で書かれていたら、こういう味わいはなかったような気がします。カタカナのもつ優しさと、異星人語的な雰囲気を感じます。
はがきに書き写してご友人にお送りになったのですね。私にとって、こちらもまたとても素敵なお話です。コメントを拝見してすぐに夫ルカに話しました。
そうですか、農薬散布のせいで…。巨大なタニシというのは想像するだけでちょっと気味が悪いですね。ラグーザは現代生活と自然が程良いバランスで保たれていると思います。今の環境が保たれることを心から願っているのですが、原子力発電所の建設計画が出たりして、地元の政治家の頭の中を覗きたくなってしまいます。
またいろいろなお話をぜひお聞かせください。
Commented by hyblaheraia at 2009-10-13 05:55
~gabbynaさん~
こんにちは。お久しぶりです。最近は、皆さんのブログにすっかりご無沙汰してしまっています。
そちらも雨ですか。しかも2カ月の雨続きとは…。ご近所は大丈夫ですか?地盤が弛んだり、下水処理が追いつかなかったり…とか。シチリアにそんな長雨が襲ったら、と考えただけでも恐ろしいです。
問題の原因を本気で突き詰めないと、将来は大変なことになると思います。そういうことを何となく考えていると、我々の周りは問題だらけで、今後一体どうなってしまうんだろうと漠然とした不安に押し潰されそうになります。漠然としているのに、なんです。
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