待ち人来たる
やはり関所で止められたか。あるいは見目麗しい御姿のため、蛮族にさらわれてしまったか。ああ、私が責任を持って御連れすべきだった。
深い後悔の念とともに、ため息をつきながら待ちに待ち・・・。そしてついに、関所に響いた一声。
それでは方々、御通りそうらいえ~。
翌日、御方々がラグーザの我が家に!
そろりそろり御連れのほど、お願い申し上げ候~(ヒブラ)
かしこまりて候~!(ルカ)
中身は何かと言うと
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義経様、弁慶様、富樫様!100年以上の悠久の時を超えて、ようこそ曾孫の住むラグーザへ!
歌舞伎《勧進帳》の最大の山場を題材にしたこの絹織は、実は、私の曽祖父の黒羽織の内側の刺繍部分だったもの。94歳の祖母が箪笥の整理をしていて見つけ、それを母が額に入れて送ってくれた。正真正銘、明治時代(1800年代)の遺品。
羽織の内側、つまりちょうど背中に当たる部分にこの刺繍が入っていた。誰にも見えない場所に《勧進帳》の刺繍とは。なんと粋で、いなせな心意気なのだろう。
こんな大切なものを祖母が私にくれたのは、以前に授業で歌舞伎を教え、《勧進帳》の六方を学生と飛び、隈取りをしたことを心から喜んでいるから。ラグーザの学生たちにもぜひ見せてあげて欲しいと言われた。その機会が来るだろうか。
ところで、あの授業以来、私は弁慶との縁が続いている。
こちらは母が骨董品店で偶然見つけた《勧進帳》の羽子板。
表情も構図も迫力に満ち、色遣いには何とも言えない品がある。裏には、太陽と白梅と笹の絵柄がさらりと描かれていて、木の古さもいい味を出している。
さらに・・・
一時帰国中に、思いもよらず、歌舞伎座で《勧進帳》を観劇。
2月歌舞伎の初日に両親と出かけ、頭上から度々降って来る掛け声の気合の凄さに圧倒されながらも、授業で教えた山場の台詞を口ずさみ、大いに堪能した。生で観る弁慶の人間的な奥深さと、六方飛びのダイナミックさは忘れられない。
あまりに感激し過ぎて、さらに弁慶との縁を深いものに・・・。
よぉお~っ!弁慶の携帯ストラップ。助六もあったのだけれど、やはり弁慶がいい。
明治時代に曽祖父が袖を通した弁慶の羽織。この図柄を背に、何を見て、何を考えたのだろう。
曽祖父の背中を暖めた《勧進帳》の刺繍は、今、机に向かう私の背中を見守ってくれている。羽子板の弁慶も、携帯の弁慶も、ラグーザの生活を見守ってくれることだろう。
弁慶一行、無事到着して一見落着~!
深い後悔の念とともに、ため息をつきながら待ちに待ち・・・。そしてついに、関所に響いた一声。
それでは方々、御通りそうらいえ~。
そろりそろり御連れのほど、お願い申し上げ候~(ヒブラ)
かしこまりて候~!(ルカ)
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歌舞伎《勧進帳》の最大の山場を題材にしたこの絹織は、実は、私の曽祖父の黒羽織の内側の刺繍部分だったもの。94歳の祖母が箪笥の整理をしていて見つけ、それを母が額に入れて送ってくれた。正真正銘、明治時代(1800年代)の遺品。
羽織の内側、つまりちょうど背中に当たる部分にこの刺繍が入っていた。誰にも見えない場所に《勧進帳》の刺繍とは。なんと粋で、いなせな心意気なのだろう。
こんな大切なものを祖母が私にくれたのは、以前に授業で歌舞伎を教え、《勧進帳》の六方を学生と飛び、隈取りをしたことを心から喜んでいるから。ラグーザの学生たちにもぜひ見せてあげて欲しいと言われた。その機会が来るだろうか。
ところで、あの授業以来、私は弁慶との縁が続いている。
こちらは母が骨董品店で偶然見つけた《勧進帳》の羽子板。
表情も構図も迫力に満ち、色遣いには何とも言えない品がある。裏には、太陽と白梅と笹の絵柄がさらりと描かれていて、木の古さもいい味を出している。
さらに・・・
一時帰国中に、思いもよらず、歌舞伎座で《勧進帳》を観劇。
2月歌舞伎の初日に両親と出かけ、頭上から度々降って来る掛け声の気合の凄さに圧倒されながらも、授業で教えた山場の台詞を口ずさみ、大いに堪能した。生で観る弁慶の人間的な奥深さと、六方飛びのダイナミックさは忘れられない。
あまりに感激し過ぎて、さらに弁慶との縁を深いものに・・・。
明治時代に曽祖父が袖を通した弁慶の羽織。この図柄を背に、何を見て、何を考えたのだろう。
曽祖父の背中を暖めた《勧進帳》の刺繍は、今、机に向かう私の背中を見守ってくれている。羽子板の弁慶も、携帯の弁慶も、ラグーザの生活を見守ってくれることだろう。
弁慶一行、無事到着して一見落着~!
by hyblaheraia
| 2009-02-21 09:12
| 生活
シチリアのラグーザ(ラグーサRagusa)より、時に音楽を交えて。ナポリ人の夫ルカと娘リディアも度々登場。リンクフリー。
by hyblaheraia
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24 Mag. 2019
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2013年11月、共著出版
2009年4月、共著出版
1999年3月、共著出版
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